【たんぽぽの目】時を超えて愛される、村岡花子の創作童話集。【小学校中学年以上】

2024年3月17日

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たんぽぽの目 村岡花子童話集  村岡花子/文 高畠那生/絵 河出書房新社

「赤毛のアン」の翻訳で知られる村岡花子さんは、自分でも童話を創作、発表していました。この本は、当時の10冊の童話集から、あらたに編集、構成された小さな童話集です。

この本のイメージ 短編童話集☆☆☆☆☆ ファンタジー☆☆☆☆☆ 昭和初期☆☆☆☆☆

たんぽぽの目 村岡花子童話集  村岡花子/文 高畠那生/絵 河出書房新社

<村岡花子>
村岡 花子(むらおか はなこ、1893年〈明治26年〉6月21日~1968年〈昭和43年〉10月25日)は、日本の翻訳家・児童文学者。児童文学の翻訳で知られ、モンゴメリの著作の多くと、エレナ・ポーター、オルコットなどの翻訳を手がけた。基督教文筆家協会(現日本クリスチャン・ペンクラブ)初代会長(在任、1952年〈昭和27年〉6月~1958年〈昭和33年〉10月)。

 「赤毛のアン」の翻訳で知られる、村岡花子の創作童話集です。初版は2014年。同名の本が、1941年に出版されていますが、内容は若干違うようです。

 1941年と言えば、昭和16年。最初の「たんぽぽの目」は、12月10日に発行されています。なんと、真珠湾攻撃の二日後です。
 国会図書館で内容を見ることが出来ますが、サンタクロースや、メリィなど外国の女の子も登場しますので、この時点ではカタカナ言葉は禁止されていなかったのですね。まさにぎりぎりのタイミング。

 今回ご紹介する「たんぽぽの目」は、タイトルと一部の童話は同じですが、村岡花子作の10冊の童話集からこの本のために選んで編集、構成された童話集です。

 「ぐりとぐら」「いやいやえん」でおなじみの中川李枝子先生が、さいしょの「たんぽぽの目」をお持ちだったらしく、当時の思い出とともに解説を書いていらっしゃいます。

 戦争中は、外国のものが禁止されていたので「アンデルセン童話集」が没収されてしまったことや、子ども同士で「おしゃれしたお母さん」のすがたを想像しあったこと(当時の女性は皆もんぺ姿です)など、当時の事情が詳しく書かれています。

 そんな時代に、瑞々しい感性にあふれた子どもの童話を執筆しつづけていた村岡花子さんは、どれだけ子どもたちの心を励ましたことでしょうか。中川先生は、「たんぽぽの目」を抱えて札幌に疎開したと書いています。

 現実の世界の荒波に、いつも真っ先にさらされるのは子どもです。
 その子どもたちの心を支えてくれるのが、今も昔も、物語の力。

 その「物語」は、時代の流れとともに、漫画やアニメーション、コンピューターゲームなど、媒体を増やしながら発展してきました。けれども、どんな物語も、原点になる気持ちは同じだと思います。

 この本には26編の童話が収録されており、小さな子どもや、妖精や、動物たちが登場し、生き生きと飛び跳ねます。
 ユーモラスだったり、美しかったり、ほのぼのしたり……

 また、古風な文章が、なんとも上品で美しい。
 また、亡き我が子を想って書いた「さびしいクリスマス」には、胸を打たれます。自分に対しても、他人に対しても「物語の力」を信じ、与え続けた人なのだと思います。

 字はほどよい大きさで、すべての漢字に振り仮名がふってあります。言葉遣いが少し古風で、今のお子様には難しいかもしれませんので、小学校中学年から。読み聞かせなら、もっと小さいお子さまでもだいじょうぶ。短い話ばかりなので、読み聞かせにもおすすめです。

 また、本好きのご高齢の方へのプレゼントにも。80年前に出版された本ですが、高齢の方の中には、子どもの頃読んだ思い出の本かもしれません。

 大人が読んでも、美しい文章にタイムトリップ感を味わい、不思議なストーリーに子供心がよみがえります。現代のお子さまには、豊富な語彙と読解力を与えてくれるでしょう。
 やはり、この時代の物語にはこの文体が似合います。子どもに語りかけるお母さんたちの口調が、どれもあたたかく上品で、やさしげなのですよねえ。こういう雰囲気の「お母さん」は、最近のコンテンツには登場しないので、新鮮です。

 表紙もかわいらしくて、レトロ。大人のなごみ本としてもおすすめです。
 「赤毛のアン」のファンで、まだの方は、ぜひ読んでみてくださいね。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はほとんどありません。猫が悪役で登場する話があるので、猫好きさんはちょっと納得がいかないかも。村岡花子さんは鳥がお好きのようです。

 「赤毛のアン」ファンのコレクションアイテムとしても、おすすめです。

 

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