【ラビントットと空の魚】空で鰹を釣る!摩訶不思議な世界の漁師の少年の物語。【鰹のたんぽぽ釣り】【小学校中学年以上】

2024年3月28日

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鰹のたんぽぽ釣り  ラビントットと空の魚 第一話  越智典子/作 にしざかひろみ/画  福音館創作童話シリーズ

ラビントットは「長耳」の男の子。空を泳ぐ魚を釣る漁師です。でも、まだ大きな魚は釣れないから、毎日鰯の漁をして生活しているのでした。そんな彼のもとに一通のの手紙が届きます…… 

この本のイメージ 異世界ファンタジー☆☆☆☆☆ 不思議な世界観☆☆☆☆☆ 少年の成長☆☆☆☆☆

鰹のたんぽぽ釣り  ラビントットと空の魚 第一話  越智典子/作 にしざかひろみ/画  福音館創作童話シリーズ

<越智典子>
1959年、東京生まれ。東京大学理学部生物学科卒。在学中に英国エジンバラ大学動物学科留学。著書に「ここにも、こけが…」「ピリカ、おかあさんへの旅」(いずれも小社刊)、「パンになる夢」(パロル舎)、「てりふり山の染めものや」(偕成社)など。絵本に「おえどのおなら」(教育画劇)「ウポポ ウポポポ ポタージュスープ」(鈴木出版)など。

<にしざかひろみ>
1979年、神奈川県生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。第10回世界ポスタートリエンナーレトヤマ2012入選ほか、ポスター・装画のコンペティションで入賞・入選多数。

 初読です。初版は2012年。

 ひさびさに出会った、本格的な異世界ファンタジー。
 独特の雰囲気の、奇妙な世界のお話です。

 ストーリーは……

 トンカーナの「耳長」の男の子、ラビントットは、鰯を獲る漁師です。この世界では、魚が空を泳ぎ、鳥が地面の中を飛び回るのでした。

 高いところが苦手なラビントットは漁師の修行ができず、親方のもとを逃げ出して、カリンポリンの丘の上の小さな家で暮らしながら、低いところを泳ぐ鰯を獲って暮らしていたのでした。

 そんなある日、タバスコ村から手紙が届きます。結婚式のお祝いに鰯を獲ってほしいという手紙でした。
 うれしくて、すぐに承諾したラビントットでしたが、その手紙には二枚目があって「できれば大きな魚もほしい」と書いてあったのです。

 大きな魚は高いところを泳いでいるので、ラビントットは釣ったことがありません。鰯だけでもいいのでしょうが、タバスコ村の人たちに喜んでもらいたいと思ったラビントットは、なんとかして大きな魚を釣ろうと決意します。

 さて、大きな魚は釣れるでしょうか?

 ……と、言うのがあらすじ。

 魚が空を悠然と泳ぎ鳥が地中を飛ぶ、摩訶不思議な世界、トンカーナ。

 郵便配達夫は、食いしん坊のイカさんです。
 空飛ぶタクシーは巨大な亀。

 そんな奇妙な世界で暮らすラビントットは、兎のような耳を持つ「耳長」の男の子。

 不思議な不思議な世界で、気弱な少年が少しずつ勇気を出して、いままで出来なかったことが出来るようになる様子が描かれています。

 かなり淡々と、ゆっくりとお話がすすむので、読んでいて滑り出しは少しもたつくかもしれません。けれども、後半に行くに連れ、お話が盛り上がってゆきます。

 ラビントットは内気で内向的な男の子で、高いところが苦手と言う弱点がありますが、決して後ろ向きではなく、落ち込んでもすぐに次の行動に移したり、苦手なことでも他人の笑顔のためならがんばる覚悟を見せたりと、たくさんの美徳があります。

 また、大好きな漁師のお父さんの多くの助言がラビントットの心に残っており、それが、ピンチのときにいつも助けてくれるのでした。

 自分に自信がなく気弱なラビントットですが、物語のなかでちゃんと成長します。

 また、世界観が独特で面白く、青い空をクジラや鰹が悠然と泳ぐさまや、土中から鳥たちが飛び出してくる様子など、映像的な描写も多いので、読んでいるとわくわくしてきます。

 この奇妙で優しい世界に浸っているだけで気持ちがいいのです。

 日本のファンタジーは主人公の日常に非日常の存在が迷い込んでくる「ドラえもん」や「メアリー・ポピンズ」のような日常ファンタジー(エブリディマジックとも言います)や、今流行の異世界転生もののような異世界に主人公が飛び込んでゆく飛び込み型ファンタジーが多数派です。それは、主人公がふつうの人間のほうが感情移入しやすいからです。

 このお話のように、「最初から最後まで異世界、主人公も異世界の住人」と言うのは珍しく、それが逆に心惹かれました。

 また、このトンカーナの世界は、ほかのどんなファンタジーの世界にも似ていなく、奇妙だけど独特の魅力があり、ラビントットの行動とともに詳しい説明がなされるたびに、胸がわくわくしてくるのです。なんて面白い世界なんでしょう。

 そして、なんとも奇妙な世界なのに、世界の土台や生態系はしっかりとしていて、骨太の世界観が野方理を支えているのです。

 異世界に浸る気持ちを楽しむのが好きな方にはおすすめの物語です。描写が映像的で、アニメーションにしたら面白そう。
 鰯(イワシ)、イカ、鰹(カツオ)、梶木鮪(カジキマグロ)など、様々な魚が登場するのも楽しい。

 文章は優しく温かみがあり、読みやすく、難しい漢字には振り仮名が振ってあります。だいたい、小学校中学年から。
 最初は、よくわからない世界なので、読むのにもたつくかもしれませんが、中盤からぐいぐいと引っ張られます。

 ラビントットが穏やかで優しい性格なのに、誰かの笑顔のためには頑張る子なので、彼の純粋さに心が洗われます。大人が読んでも楽しめます。

 異世界に旅した気持ちになりたいなら、おすすめのファンタジーです。
 シリーズらしいので、これからもコツコツ読んでゆくつもりです。続きが楽しみですね。

 ※ちなみに、男の子が成長する異世界ものファンタジーがお好きなら、「プリデイン物語」「リンの谷のローワン」がおすすめです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。
 内向的な少年が、苦手を克服して成長する物語です。独自の世界観が魅力的で、不思議な異世界に浸って、遠くへ旅した気持ちになれるファンタジー。

 読後はお魚が食べたくなるかもしれません。イワシのサンドイッチでティータイムを。

 

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