【魔女の隠れ里】夢水清志郎事件ノート4。魔女と推理勝負【小学校高学年以上】

2024年3月18日

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魔女の隠れ里 名探偵夢水清志郎事件ノート 4 はやみねかおる/作 村田四郎/絵 講談社青い鳥文庫

雑誌「セ・シーマ」の編集、伊藤真里からの依頼で、清志郎は「名探偵夢水清志郎の謎解き紀行」の仕事を引き受けることになる。ぶっとんだ真里の案内で、亜衣たちと旅に出た清志郎。さて、どんな事件が待っているのだろう……

この本のイメージ ロードムービー的な☆☆☆☆☆ 短編ふたつ☆☆☆☆☆ 幕間もおもしろい☆☆☆☆☆ 

魔女の隠れ里 名探偵夢水清志郎事件ノート 4 はやみねかおる/作 村田四郎/絵 講談社青い鳥文庫

<はやみね かおる>
日本の男性小説家(1964年4月16日~ )。三重県伊勢市出身。代表作は「都会のトム&ソーヤ」「怪盗クイーンシリーズ」「名探偵夢水清志朗シリーズ」など

 はやみねかおる先生の夢水清志郎事件ノートシリーズ第4巻。このシリーズは、各巻完全に独立しているので、どの本から読んでも楽しめますが、基本設定を理解するためには、最初のお話「そして五人がいなくなる」から読んだほうがわかりやすいでしょう。「そして五人がいなくなる」のレビューはこちら。↓

 この本「魔女の隠れ里」の初版は1996年。 わたしは初読です。
 1996年と言えば、日本は小室哲哉の大ブーム。景気のいい時代でした。この国は豊かだったのです。

 作中には誰でも知っている歌手としてユーミンこと松任谷由実が登場し、夢水清志郎がユーミンを知らずムーミンと間違える、と言うシーンが書かれています。

 昔は「誰でも名前くらいは知っている芸能人」と言うのがいました。今は、年寄り世代と若者世代が断絶しているので、HIKAKINさんを知らない年配の方はいると思いますが、1990年代は、「ユーミン」や「小室哲哉」を名前すら知らないで生きるのは難しい時代でした。

 彼らの曲は、テレビで流れ、ラジオで流れ、コンビニで流れ、スーパーマーケットで流れ、と言った具合でした。なので、ユーミンを知らない、と言うのは、夢水清志郎の「興味のあることしか頭に入らない」「テレビやラジオに興味がない」「本が好き」等のキャラクターを端的にあらわしているのです。

 また、収録されている短編「消える足あとと幽霊のシュプール」は雪山の話なためユーミンの名前が登場するのは自然です。映画「わたしをスキーに連れてって」の挿入歌を担当した関係で「雪山、スキー」と言えば「ユーミン」と言う時代でもあったのです。

 当時、日本人はスキーが大好きでした。なんであんなにスキーが好きだったのだろうと、いまとなっては不思議なくらいの狂気じみたブームでした。千葉に人工スキー場があったんですよ。そこまでしてスキーやりたいか! って感じですよね。(ちなみにわたしは、例に漏れずスキーブームに乗り切れませんでした……。だって、高いでしょ、スキーセット……)

 と、いうわけで、僭越ながらこれから読む方のために、ちょっと時代背景を書いてみました。

 わたしは、最近はやみね作品を読み始めた新参者です。初期の作品を読むさい、わたしはその時代を知っているので懐かしく読めるのですが、いまの若い方には理解できないこともあるかと思います。いやもう、「違う国に来たかな」、と思うくらいに世界が変化していますから。

 ちなみに、ウィンドウズ95が発売された1995年がインターネット元年。この時代は、まだまだコンピューターは一般的ではなく、携帯電話もそれほど普及していませんでした。一部の人のぜいたく品と言う扱いでした。

 コンピューターやインターネットはほとんど普及しておらず、スマートフォンはおろか携帯電話もない時代のミステリーは隔絶された環境での事件と相性がよく、この時代は「嵐の山荘もの」、クローズド・サークルと呼ばれるジャンルのミステリーによく使われます。

 ハイテクの発達と未発達が、ミステリーにとってちょうどいい塩梅だったのです。

 今回のお話は、雑誌「セ・シーマ」の編集、伊藤真里さんが夢水清志郎に「名探偵夢水清志郎の謎解き紀行」の執筆を依頼、亜衣たちと取材旅行に出かけた先で事件を解決する短編ふたつ。幕間に羽衣おかあさんのエピソードが入ります。

 コラム連載の作家のために取材旅行! しかも、三つ子の付き添いも経費で!!

 出版社、儲かってたんですね。そして景気が良かった。さすがに当時でも、実際には三つ子の旅費まで出してくれる出版社はなかったと思いますが、こういうことに説得力があるくらい、豊かな時代でした。

 「セ・シーマ」の伊藤さん、ここで登場したんですねえ。
 はやみね先生は、手塚治虫先生や松本零士先生のようなキャラクターシステムを採用しているんですね! わたしは、こういう、キャラクターが作品を横断するお話は大好きなので、わくわくします。

 そして4巻目にして、ようやく理解しました。

 夢水清志郎教授は、「昼行灯を装っているキレ者探偵」ではなく、「異常な天才」だという事に。

 1巻から、夢水探偵は、どこかつかみどころがなく、よく言えばミステリアス、悪く言えば正体不明で不気味なところがありました。

 彼のいいかげんさ、だらしなさ、忘れっぽさは、本当の彼自身を守る煙幕なのか、または、本当にいい加減なダメ人間なのか……。「ルパン三世」のような煙幕型か、「バックトゥザフューチャー」のドクのような欠落型天才か、どちらなんだろうとずうっと思っていました。

 しかし、今回のラストシーンで、「ああ、これは、異常な天才なのだな!」と、ようやくはっきりと理解したしだいです。(遅いよ)。

 自分の興味のあること以外、どのようなことでも脳から零れ落ちるタイプの、パラメーター偏り型人間なのですね。

  ※わかった以上は、以前のレビュー、少し修正するかもしれません。

 夢水清志郎のシリーズは、どことなく、哀愁があります。
 でも、子どもたちに対する優しさは、いつもあって、後味が良いのが魅力です。

 事件解決のあと、教授と三つ子たちのコメディシーンで終えてくれるところも好き。

 頭を使う複雑なストーリーですが、総ルビ(全部の漢字に振り仮名)なのがうれしい。小学校高学年以上となっていますが、ひらがなさえ読めれば、頑張れば読破できます。
 大人も楽しめる本格派推理小説です。

 まだまだつづきがたくさんあるので楽しみです。これからも、コツコツ読みますよ。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ミステリーですが、残酷シーンなどはありません。少し哀愁のあるお話もありますが、ネガティブな要素はなく、読後感はさわやかです。
 時代背景を語ったりしながら、親子で読むのも楽しそうです。

 

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