【ミス・ビアンカ】美しき白ねずみの大冒険。悪人も助ける?第3巻【ひみつの塔の冒険】【小学校中学年以上】

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ミス・ビアンカ ひみつの塔の冒険   マージョリー・シャープ/作 渡辺茂男/訳 岩波少年文庫

池のほとりの古い塔に、ダイヤの塔の元執事が囚われていると知ったミス・ビアンカ。悪人だからといって見捨てることが出来ないミス・ビアンカに、協力者はいません。たったひとりでも彼を助け出そうと決意しますが……

この本のイメージ 自分を貫く☆☆☆☆☆ 信頼とは☆☆☆☆☆ 人は変われるのか☆☆☆☆☆ 

ミス・ビアンカ ひみつの塔の冒険   マージョリー・シャープ/作 渡辺茂男/訳 岩波少年文庫

<マージョリー・シャープ>
マージョリー・シャープ(1905~1991)は、イギリス・ソールズベリー生まれ。ロンドン大学卒業、21才のとき「パンチ」に作品が掲載される。1930年「しゃくなげのパイ」で作家デビュー。代表作は「ミス・ビアンカ」シリーズ

<渡部茂男>
渡辺 茂男(わたなべ しげお、1928年3月20日 ~2006年11月18日)は、日本の児童文学者、翻訳家。昭和時代戦後から平成時代にかけて、児童文学を多数創作したほか、英米の絵本や童話を中心とした児童文学や海外の児童文学理論の翻訳を手がけた。代表作は「しょうぼうじどうしゃ じぷた」など。

 ミス・ビアンカシリーズ第3巻。原題はThe turret.(塔) 原書初版は1964年。日本語版初版は1972年。岩波少年文庫での新装版が2016年です。

 1970年代に一度、シリーズ全7巻が翻訳され、大人気を博した児童小説シリーズの名作、ミス・ビアンカ。2016年に新装版が3巻まで出版されましたが、つづきが刊行されず、いまのところ入手可能なのは3巻までです。

 ものすごく面白いので、ぜひ、最後まで出版していただきたいです。もちろん、電子書籍も。

 お話が完全に続いているので、第1巻から順番にお読みになることをおすすめします。第1巻のレビューはこちら

 ミス・ビアンカシリーズは、大使館の息子のお気に入りのペットの美しき白ねずみが、その知性と魅力で数々の冒険をくぐりぬけ、理不尽な理由で閉じ込められている人を救出するという、プリズンブレイク動物ファンタジーです。

 数々の教養はあれど、世間知らずだったミス・ビアンカが、持ち前の知恵とそして向こう見ずな勇気、熱いハートで、不可能を可能にするこのお話、

 今回のテーマは「悪人はどこまで助けられるべきなのか?」。

 救出対象の囚人は、なんと「ダイヤの館の冒険」で、哀れな少女ペイシェンスをいじめぬいた、大公妃の執事マンドレーク。

 ミス・ビアンカは、偶然、池のほとりの古びた塔に、この執事が閉じ込められていると知りました。彼は、ペイシェンスが脱走してしまったことから、罰として幽閉されたのです。
 マンドレークは過去を後悔し、悔い改めて新しい人生を望んでいました。
 ミス・ビアンカは、彼の救出を決意します。

 しかし、ミス・ビアンカは先日、囚人友の会の議長を辞任したばかり。一会員として提案したマンドレークの救出作戦には、全員から否決されてしまいます。

 ミス・ビアンカのたったひとりの救出作戦がはじまりました……

 ……と、いうのがあらすじ。

 はじめはたった一人だったミス・ビアンカは、少しずつ仲間を集め始めます。持ち前の知恵と計画力、行動力で、綿密な計画を立て、一歩一歩、すすんでゆくミス・ビアンカ。

 面白そうだからと参加するものもあり、度胸試しに参加するものもあり……。そして、「どんなにしおらしそうにしていたって、悪人は悪人、絶対に改心したりしない」とミス・ビアンカに忠告するものもいました。

 そう、ミス・ビアンカの今回の最大の悩みは、「どう救出するか」ではなく、「マンドレークは本当に改心するのか」。様々な仲間たちの手を借り、自分自身も危険を犯して救出するマンドレークが、ちゃんと改心していい人になるかどうか、それはミス・ビアンカの力ではどうにならないことでした。

 ミス・ビアンカはマンドレークが真人間になるほうに賭けます。

 毎回、この物語には、大人になってから読むと、多くの気づきがあります。ミス・ビアンカには仲間を募ったり、交渉したりする、不思議な魅力があります。
 けれども、それは洗脳的なものや、色仕掛けではなくて、「面白そうだから力になってやろう」と言うような、意欲をかきたてる魅力なのです。

 なぜなら、彼女に協力したボーイスカウトのシャーンは、ミス・ビアンカが好きだから協力したのではなく、わくわくするような冒険を感じたから。競走馬のサー・へクターも、赤の他人、しかも大悪人のマンドレークの救出に懸命になるミス・ビアンカを見て、心意気を感じたからなのです。

 もしその結果救出できなくても、また救出したマンドレークの性格があまりよくないままでも、おそらくは彼らは納得しているのでしょう。そして、そんなミス・ビアンカの魅力には、ねじくれていたマンドレークの性格すら、改心させてしまうほどのパワーがありました。

 50年以上前の、イギリスの古典名作ですが、ミス・ビアンカには現代にも通づる新世代ヒロインの魅力があります。人を助け出すという目的、暴力によらないリーダーシップ、ハートに訴える説得などなど……

 ミス・ビアンカとバーナードの関係も素敵です。

 バーナードは今回、ほとんど活躍しません。彼は、ミス・ビアンカがやめた後の囚人友の会の事務局長としての仕事でてんてこまいだったのです。
 新しく議長になった体育教師雌ねずみは、友の会会員に毎日体操を強要するので会員たちから不満噴出、友の会は崩壊寸前でした。

 この体育教師雌ねずみをみずから引退させるべく、バーナードに彼女との結婚を強要してくるオバサンねずみが、ものすごーくリアル。いるいる、って言うか、昔はいました、こういう仲人おばさん。

 「はあ」とか「そうですか」とか、曖昧な返答をしていると、本人の意思とは関係なく、どんどん縁談をすすめられてしまって、断りきれないところまで押し切ってきてしまうのです。だから、こう言う人と愛想笑いをして長話をすると、とっても危険。

 バーナードのこの危機は、結局、ミス・ビアンカの活躍で阻止されるのですが、この物語は、こういう、女流作家ならではのおかしみがあって、ハラハラドキドキの展開のなかで、時々クスっとさせてくれるのです。

 ミス・ビアンカは女性としてはできすぎなくらい魅力的なヒロインです。
 しかし、この物語は決して「女は優れてるけど男はダメ」と言うようなお話ではありません。
 今回、バーナードは派手に動きませんでしたが、ボーイスカウトのシャーンやサー・へクターなど、かっこいい男性キャラの活躍もちゃんとある。

 お気に入りのシーンは、絶体絶命のさい、「あなただけでもお母さんのもとにお逃げなさい」と言うミス・ビアンカに、シャーンがぼくは孤児だとあきらかな嘘で返すところ。いやいや、お母さんの作ってくれたバッジぎょうさんつけてたやん。シャーン、まだ少年なのにかっこいい。でも、ここ、さらっと書いてあるんです。
 こういうさりげなさが好き。

 それに、渡辺先生の翻訳がすごくいいんです。たとえば、ミス・ビアンカが謝るところの言葉、ふつうなら「ごめんなさいね」とか「申し訳なかったわ」とか訳すところを「お許しになって」となっているのです。

 この「お許しになって」と言うのが、いかにも上品で、たおやかな感じなんですよ!

 古い小説ですが、読みどころがたくさんあって、最初から最後までわくわくした気持ちで読めます。古いのに新しい感性もあって、色あせません。

 文章は上品で読みやすく、難しい漢字には振り仮名がふってあります。小学校中学年から。

 まだまだミス・ビアンカの冒険は続きます。ぜひ、新装版を最後まで刊行していただきたいです。出版社さま、おねがいします!(と、テレパシー)

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。かわいいのに、ハラハラドキドキが止まらない、プリズンブレイクアドベンチャーです。
 どんな存在でも絶望から救ってくれる、美しき白ねずみの冒険は読んでいると元気をもらいます。

 読後は、レバーペーストをつけたトーストと、濃い目のミルクティーでティータイムを。

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