【ライトニング・メアリ】世界初の魚竜の化石を発見した少女メアリ・アニングの物語【竜を発掘した少女】【小学校高学年以上】

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ライトニング・メアリ 竜を発掘した少女  アンシア・シモンズ/作 布施由紀子/訳 カシワイ/絵

赤ん坊の頃、落雷の直撃を受け生き残った彼女は父親から「ライトニング・メアリ」と呼ばれ、愛されて育った。父と一緒に「ライム・リージス」で「珍しい石」を集めながら、いつしか彼女は地質学の世界に惹かれてゆく……

この本のイメージ メアリ・アニング☆☆☆☆☆ 強い女の子☆☆☆☆☆ 歴史ロマン☆☆☆☆☆

ライトニング・メアリ 竜を発掘した少女  アンシア・シモンズ/作 布施由紀子/訳 カシワイ/絵

<アンシア・シモンズ>
イギリス、コーンウォール州で教区司祭の子として生まれる。オックスフォード大学を卒業した後ロンドンの金融界で活躍した後、教師に転身、詩や童話の創作を始めた。2010年に、初の絵本Share! を出版、現在は童話執筆の傍ら、社会活動にも取り組んでいる。「ライトニング・メアリ」は、2020年STEAM児童文学賞最優秀ミドルグレード作品賞受賞。

<布施由紀子>
日本の翻訳家。
大阪府生まれ。大阪外国語大学英語学科卒業。フェロー・アカデミー講師。主な訳書にロデリック・タウンリー『記憶の国の王女』(徳間書店)、ケイティ・バトラー『天国の扉をたたくとき──穏やかな最期のためにわたしたちができること』(亜紀書房)、ジョン・ウィリアムズ『アウグストゥス』(作品社)、A.R.ホックシールド『壁の向こうの住人たち――アメリカの右派を覆う怒りと嘆き』(岩波書店)、チャールズ・C. マン『1493――世界を変えた大陸間の「交換」』(紀伊國屋書店)

<カシワイ>
漫画家。イラストレーター。イラストレーター、漫画家。漫画や書籍の装画を中心に活動。主な仕事に、トーチwebでの連載をまとめた漫画『107号通信』(リイド社)、『洗礼ダイアリー』文月悠光(ポプラ社)装画など。

ライトニング・メアリ 竜を発掘した少女  アンシア・シモンズ/作 布施由紀子/訳 カシワイ/絵

 実在した人物、メアリ・アニングの少女時代の物語。原題はLightning Mary.イギリスでの初版は2019年。日本での初版は2022年です。

 作者のアンシア・シモンズはライム・リージスの書店から地元の小学生のためにメアリ・アリングの物語を書いてくれと頼まれたのがきっかけでこの作品を書いたそうです。

 メアリ・アニング(1799年5月21日~1847年3月9日)は19世紀の女性で、世界ではじめてイクチオサウルスの化石を発見、発掘しました。
 「ライトニング・メアリ」は、歴史上の事実とアンシア・シモンズの創作が融合した物語で、メアリ・アニングが12歳でイクチオサウルスの化石を発掘したエピソードを中心に書かれています。

 メアリ・アニングは1799年、イギリス南部沿岸ドーセット州のライム・リージス村で生まれました。彼女が生後15ヶ月になった1800年、サーカスで賑わう村に落雷が襲い、4人に直撃し、たった一人、赤ん坊のメアリが生き残ったのでした。

 このことから、父親は彼女を「ライトニング・メアリ」と呼んでかわいがります。(このニックネームは作者の創作かもしれません)

 家具職人のお父さんは、家具を作る傍らライム・リージスの崖で古代の化石を掘り、観光客を売る副業をしていました。お父さんが大好きなメアリは、手伝っているうちに化石の発掘のノウハウを習得します。

 メアリの家は貧しく、お父さんの仕事に収入を頼っていましたが、やがてメアリたち自身がなんとかして収入を得なければならなくなります。
 彼女は、化石を発掘する自分の能力とカンに賭けることにしました。

 そして、激しい嵐の翌日のある日……ついに……

 ……と、いうのがあらすじ。

 巻末の訳者あとがきによると、メアリ・アニングの記録を読んだとき、作者のアンシア・シモンズは自身の教え子の中にいる「才能があるのにシステムが認める形では能力を発揮できない」生徒のことが思い浮かんだそうです。

 この物語のなかのメアリは、怒りっぽくて頑固で気難しいけれど、こうと決めたらやり通す、粘り強さのある女の子として描かれています。まっすぐで嘘がつけず、しかし、自分の好きなことには一直線の子です。

 現代でもこう言う子はいます。たとえ優秀であったとしても、なんらかの生きづらさを感じているのではないでしょうか。

 ちょっぴりエヴァンゲリオンのアスカにも似ていますが、気性の激しさはそれ以上です。日本の物語だとここまで気性の荒い女の子が主人公になるのは難しいかもしれません。
 しかし、わたしには魅力的に感じました。

 彼女のきかん坊なところ、負けず嫌いなところは、ただの自分勝手やわがままではなく、「何が何でもやりとげる」と言う強い意志の表れなのです。

 この物語で描かれているように、史実でも、メアリ・アニングは数々の化石を発見、発掘しながらもそれらすべての功績は兄や、彼女から化石を買った男性研究者の手柄となったようです。もちろん、彼女は考古学や地質学の学会に参加することはできませんでした。

 メアリより100年ほど後の時代の、上流階級の女性ビアトリクス・ポターですら、学会に参加できなかったのですから、メアリが学者として認められなかったのは無理もないことです。

 しかも、それだけではなく、彼女の地元の人々の彼女への評価は「地元に観光客をもたらしてくれる人」(つまり、珍しい化石を売っているみやげ物屋)と言うものであり、地質学者としての評価ではなかったのでした。

 もちろん、メアリに理解者がまったくいなかったわけではなく、この本に登場したヘンリー・ドゥ・ラ・ビーチやエリザベス・フィルポットは実在の人物で彼女の心からの親友だったようです。
 特に、ヘンリーとの友情は大人になってからも続き、彼はメアリの発掘した化石の絵を描いて版画にし、それを売ったお金をメアリに還元して彼女の活動を支援し続けました。

 しかし、彼女の発掘した化石を買った人々が多くの冨や名声を手に入れたのに比べると、メアリの人生は苦労の連続でした。

 この物語は、メアリ・アニングが最初のイクチオサウルスを発掘した時(メアリはこの後もあと二体発掘しています)のエピソードが中心なので、その後のメアリが大人になってから、どのような悔しい想いをし続けたかについては書かれていません。

 しかしながら、ある程度生きた女性ならば、メアリの気持ちに共感し、切ない気持ちになるのではないでしょうか。

ここからネタバレ 平気な方だけクリック

 わたしたちのような人間に幸せは来ない。でも、いっしょうけんめい働いて、この地上で目的を果たせば、満足を見つけだすことはできるかもしれない。(引用 p282)

 子どもはこの文章を読んで泣くことはないかもしれません。けれども、おそらく、ここで泣く大人はいると思います。

 この物語は児童書として出版されていますが、メアリと同じ歳くらいの女の子が読んだ時と大人の女性が読んだ時とでは、受け取り方、感じ方が大きく異なると思います。

 子どもたちが読むなら、メアリの熱い生き方から情熱を持って生きることのすばらしさを感じるでしょうし、大人なら、ままならない世界を熱いハートひとつで生き抜いた少女から「何か」をうけとれるでしょう。

 そして、現代でも、そんな「ライトニング・メアリ」のような女の子たちは、人知れず熱いハートで生きているのだと思います。誰に気づかれなくても。理解されなくても。

 この本は、そんな「がんばる女の子」すべてにむけたエールなのです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。実在の女性の、少女時代を描いた、情熱あふれる物語です。

 勝気で頑固で、どんなに困難なことがあっても、やると決めたことをやりとげる12歳の少女の熱い生き様が描かれています。

 読後は、熱いお茶と砂糖をまぶした菓子パンで、ティータイムを。

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