【オンチのはっぱららららら】きれいなお姉さんにもらった金色の葉っぱ。それを持っているとね……【小学校低学年以上】

2024年4月7日

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オンチの葉っぱららららら  おおやなぎちか/作 つじむらあゆこ/絵

しおりは運動が苦手だけど歌はとくいです。でも、今日は声がうらがえったり音が外れたりしてうまく歌えません。そういえば、昨日、不思議なお姉さんにきれいな葉っぱをもらったんだっけ……

この本のイメージ オカルトファンタジー☆☆☆☆☆ 得意・不得意☆☆☆☆☆ 友情☆☆☆☆☆

オンチの葉っぱららららら  おおやなぎちか/作 つじむらあゆこ/絵 文研出版

<おおやなぎちか>
秋田県生まれ。日本児童文学者協会、日本児童文芸家協会、全国児童文学同人誌連絡会「季節風」会員。「しゅるしゅるぱん」(福音館書店)で第45回児童文芸新人賞、「オオカミのお札(一)~(三)」で第42回児童文芸家協会賞受賞。「ぼくらは森で生まれかわった」(あかね書房)、「家守神1妖しいやつらがひそむ家」(フレーベル館)、「俳句ステップ!」(佼成出版)、「わくわく子ども俳句スクール」シリーズ(国土社)他著書多数。

<つじむらあゆこ>
香川県生まれ。武蔵野美術大学卒業。こどもの本の仕事を中心に活躍。挿し絵に「おねえちゃん」シリーズ(いとうみく・作、岩崎書店)、「おばけのポーちゃん」シリーズ(吉田純子・作、あかね書房)、『なにがあってもずっといっしょ』(くさのたき・作、金の星社)など多数。

 「家守神」のおおぎやなぎちか先生による、小さな子どもたちの心の成長と友情を描いたかわいい本です。初版は2022年1月。

 お話は……

 しおりは、運動は苦手だけど歌を歌うのは得意です。
 でも、今日はどうしても上手に歌えません。声が裏返ってしまったり、音が外れてしまったり……

 そういえば、昨日、不思議なお姉さんに出会ったのでした。

 小さな女の子がひとりで歌を練習しているのを見つけたしおり。
 とても上手に歌っていたのに、しおりが近づくと音が外れて歌えなくなってしまいます。

 「ひどい歌。けんたくんよりオンチかも」
 つい、声を出してつぶやいてしまい、女の子に聞こえてしまいます。

 女の子は泣き出して駆け去ってしまいますが、その後、きれいなお姉さんから金色の葉っぱをもらったのでした。
 その葉っぱをもらってから、しおりはオンチになったのです。

 「その葉っぱはすてることはできないよ。いらなくなったらほかの子にあげることだね」

 そして、葉っぱを手に入れた子たちが次々と色んな「オンチ」になってしまうのでした……。

 ……と、いうのがあらすじ。

 誰にでも得意なことと苦手なことがあります。
 得意なことをしていると気持ちが良いし、苦手なことをしているときははずかしい。

 でも、誰にだって得意なことと苦手なことがあるのだから、苦手なことがあっても気にしなくていいんだよ……と言う優しいお話です。

 好きなことが得意だと人はかなり幸せです。好きなことをしていると時間を忘れるし、続けていればどんどん上手くなるからです。

 ところが、世の中には好きなことと得意なことが違う人もいます。俗に言う「下手の横好き」と言うヤツです。でも、本人は楽しいのだから、それはそれでいいのです。こう言う人も周囲はともかく本人は幸せです。

 本人にとって大問題なのは得意だけどあんまり好きじゃないことです。「好きじゃないのに得意なんてあるのか?」って思う方もいるかもしれませんが、実はあります。幼い頃からそういう環境にあって、無意識にやらされていたとか、周囲がそれをやるのがあたりまえの状態の場所にいたとか。

 でもどんな人にも得意なことや苦手なことがあるのですから、その人が好きでやりたいと思うことをすればいいと思うのです。

 往々にして周囲の大人たちは子どもに成功してほしいと思うから、上手にできることをやってほしいし上手にできないことは練習して上手くなってほしいと思いがち。これはこれで、愛情あってのことなのですけども。

 ほんとうは上手なのに他人が一緒にいると上手にできない人というのもいます。こう言う人は、自分を見ている人の心に同調しやすい人です。繊細なのです。
 うまく出来なかったとき、「あなたが失敗しちゃって見ているこっちが恥ずかしかった」と言われるのが嫌なのです。
 しおりが出会った小さな女の子も、「お姉ちゃんの結婚式で上手に歌えなかったらきっとお姉ちゃんが恥ずかしい思いをする」と思いすぎて歌えなくなっていました。どんな歌でもお姉ちゃんは嬉しいのにね。

 金色の葉っぱのおかげで、子どもたちは自分たちの得意なこと、不得意なことを知り、誰にでも得手不得手はあるものだから気にすることはないと知ります。

 そして、そんなことよりずっと大切な友だち同士の友情を知るのでした。

 なんでもかんでも勝負や競争になりがちな子どもたちの日常に、あたたかな風をくれる物語です。
 もちろん、スポーツや競技会で競い合うことも大切です。でもそれは「ここぞ」という分野でだけすればいいことで、何もかも全部を上手にやってすべての分野で勝つ必要もありません。そんなことしようとしたら、パンクしてしまいます。

 そんな固い気持ちを楽にしてくれる物語です。
 得意不得意だけでなく種族も飛び越えて友情がひろがるラストが気持ちいい。

 文章は読みやすく、字は大きめで漢字まじりですがすべての漢字にふりがながふってあります。小学校低学年から。すべての見開きにつじむら先生の愛らしい挿絵が入っていて、絵本と小説の中間くらいのボリュームです。
 読み聞かせにもおおすめ。

 現代社会で忙しくがんばるお子さまに。
 肩の力をふっとゆるめてくれる、やさしいファンタジーをどうぞ。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。主人公のしおりちゃんをはじめとして、みんなみんないい子ばかりで、気持ちのいいお話です。

 緊張しがちで繊細なHSCのお子さまにおすすめです。

 

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