【キュリオと月の女王】「ルドルフとイッパイアッテナ」の作者がおくる、小学校低学年向けのほのぼのファンタジー開幕!【小学校低学年以上】

2024年4月10日

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キュリオと月の女王  斉藤洋/作 ももろ/絵  講談社

わたしが寝たふりをしていると、キュリオがやってきてこう言った。「月の女王さまに会いに行かないか?」キュリオは突然、こんな変なことを言い出す少年だった……

この本のイメージ ファンタジー☆☆☆☆☆ ほのぼの☆☆☆☆☆ ちょっぴり不条理☆☆☆☆☆

キュリオと月の女王  斉藤洋/作 ももろ/絵  講談社

<斉藤洋>
1952年、東京都生まれ。中央大学大学院文学研究科修了。1986年、「ルドルフとイッパイアッテナ」で講談社児童文学新人賞受賞、同作でデビュー。1988年、「ルドルフともだちひとりだち」で野間児童文芸新人賞受賞。1991年、路傍の石幼少年文学賞受賞。2013年、「ルドルフとスノーホワイト」で野間児童文芸賞受賞。

<ももろ>
絵本作家。主な作品に、「ポポときせつのおかしづくり」「こねこのルップ りんごだいすき」「おうちジャングル」などがある。絵本制作のほか、児童書では「ドリトル先生」シリーズの挿絵や、雑貨、ぬいぐるみデザインや広告など、幅広い分野で活動中。オリジナル雑貨ブランドBitte Mitte!を展開。描くのがいちばん好きな動物は、くま。

 「ルドルフとイッパイアッテナ」「白狐魔記」の斉藤洋先生がおくる、小学校低学年向けのファンタジーです。
 初版は2023年2月。

 お話は……

 しろくまのベベは近くの村に住むキュリオと仲良し。
 けれど、キュリオは一風変わった子どもでした。

 ある日、キュリオに「月の女王さまに会いに行こう」と誘われます。
 いつも、夢か現実かわからないようなことばかり言うキュリオ。

 ベベはキュリオに調子をあわせつつ、一緒に月の女王さまに会いに行くために西の海岸へと旅に出ます。

 はてさて、キュリオは月の女王さまに会えるのかな……?

 ……と、いうのがあらすじ。

 お話は、しろくまベベの一人称で語られます。

 キュリオは想像力が豊かで好奇心旺盛な男の子。
 素直で、しろくまのベべの言うことは何でも信用します。

 対して、べべはかなりのリアリスト。けれど、夢見がちなキュリオのことが大好き。
 キュリオが言う突拍子もないことは半分も信じていないのに、キュリオが夢のようなことを言い出すと付き合いよくそのお話に乗ってしまいます。

 キュリオの語る夢に、ベベが思いつきで追加した根も葉もないホラ話。キュリオの中ではそのふたつがひとつになってどんどん想像が大きくなってゆきます。

 やがて、ふたりはその嘘だか本当だかわからない夢を探しに旅に出るのです。

 小さな子どもと話をしていると、こういうことが「あるある」かもしれません。
 子どもが想像の力で、突拍子もないことを言う。

 宇宙人に会いに行こうとか、地底の国に行こうとか。
 「そんなことあるわけないよ」と大人は思っても、瞳を輝かせて語る子どもがかわいくてついつい話をあわせてしまう。二人で話はどんどん大きくなり「行ってみようよ!」と子どもが言い出したらどうするのか……

 大人の困惑と、小さな子どものわくわくした顔。ベベとキュリオはそんなコンビです。

 かなり古いお話で恐縮ですが、昔「とんねるずの生でダラダラいかせて!!」というテレビ番組がありまして、その中の企画に「あっくん十番勝負」と言うのがありました。

 当初は「子どもはお母さんとの約束を守れるのか」というようなモニタリング企画で、男の子の「あっくん」にお母さんが出かけている間におやつのいちごを食べないように、という約束をさせて部屋を出て行くというものでした。
 ところが、あっくんは結局食べてしまいます。当時あっくんは三歳だったので無理もありません。

 その時のあっくんの「宇宙人が来ていちごを外に捨てちゃった」というでたらめな言い訳を受けて、テレビ局はタレントの見栄晴さんに特殊メイクをして宇宙人に仕立て上げ、お母さんが出かけていて部屋にあっくんしかいない時に「あっくん、いちごを食べたのをぼくのせいにしただろう」と窓から侵入させます。

 驚いたあっくんでしたが、やがてこの二人のあいだに奇妙な友情が芽生え、あっくんの想像から飛び出した「宇宙人の話」はどんどん大きくなってしまうのでした。

 「ここまで話を大きくしてどう収集をつけるのか」と視聴者の誰もが心配するなか、涙涙の大団円だったことは思い出されます。
 最終的に子ども一人騙すのにここまで予算をかけるとは、と言う一大企画に成長してしまいましたが、純真な子どもを担いで全国のお茶の間のエンタメにしてしまったけじめを、子ども心を傷つけずに決着をつけたのには感動した記憶があります。

 安易に「ドッキリでしたー」と言ってネタバラシをせず、とことん子どもに向き合った企画でした。

 このお話のキュリオは当時のあっくんよりさらに純真で、嘘や思いつきなどではなく本気で「月の女王」の存在を信じています。
 そのキュリオの想像力に寄り添うベベは、適当に話を合わせているふうに見せながら、ベベなりにキュリオの心を傷つけずに夢をかなえてやりたいと思ってできるかぎりのことをしようとします。

 この親子のような不思議な関係の一人と一匹(一頭?)の小さな小さな冒険の旅がどんなふうに決着が着くのか、それは読んでみてのお楽しみ。

 字はほどよい大きさですべての漢字に振り仮名が振ってある総ルビです。
 それほど難しい漢字も使われていないので、小学校低学年のお子さまなら、一人で読みきることができます。もちろん、読み聞かせでも。

 すべての見開きにももろ先生の挿絵が入っており、読みながらあったかい気持ちになれるほのぼのファンタジーです。ちょっぴりナンセンスで不条理なのに、どこかなつかしくてあたたかい。

 新たな斉藤ワールドの開幕です。

 ※この本には電子書籍もあります。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。
 夢か現実か、嘘か本当かわからない、ちょっぴり不条理ででもあたたかい、ほのぼのファンタジーです。

 子どもの想像がほんとうになったら、というわくわく感とショートショートSFのような楽しさもあり、子どもにも大人にもおすすめです。

 

商品紹介ページはこちら

 

 

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