【魔女学校、海へ行く】人気魔女ドラマシリーズの原作第4巻。ミルは海でも大活躍【ミルドレッドの魔女学校】【小学校低学年以上】
魔法使いのローワンウェッブさんをカエルの魔法から助けたミルドレッドのお礼として、魔女学校全員がローワンウェッブさんの持つクラヤミ入江のユーウツ城に招待されました。バカンスが楽しみな魔女たちですが、ミルには喜べない事情があって……
魔女学校、海へ行く ミルドレッドの魔女学校 4 ジル・マーフィ/作・絵 松川真弓/訳 評論社
<ジル・マーフィ>
イギリスの児童文学作家。代表作は「ワーストウィッチ」(1974年)シリーズで、日本では「ミルドレッドの魔法学校」として翻訳されている。「ミルドレッドの魔女学校」では挿絵も手がける。
駆け出し魔女物語、「ミルドレッドの魔女学校」第4巻です。原題はThe Worst Witch all At Sea.初版は1993年。日本での初版は2002年です。
このシリーズ、現在日本では4巻までしか翻訳されていないのですが、本国では「The Worst Witch」シリーズとしてまだ続いていて、2018年に第8巻が出版されています。
小学校低学年向けのお話として、かなり面白い物語なので、ぜひ、続きも読みたいものです。日本ではずっと続きが出ないままですが、Netflixでの映像化で人気が出ていますし、続刊を待ち望んでいます。
さて、今回のお話は……
魔法使いのローワンウェッブさんをカエルの呪いから助けたミルドレッド。お礼にと、カックル魔女学校の2年生全員が、ローワンウェッブさんの持つ海辺の城、ユーウツ城に招待されました。
楽しい海のバカンスです。ところが、ミルドレッドは、カックル先生から使い猫のトラチャンがあまりにも不出来なので、別の黒猫に取り替えるよう、指示されてしまいます。
新しい黒猫イーボニイは優等生猫。ミルの成績が上がることはまちがいなしです。でも、大好きなトラチャンと別れると思うだけで、涙が出てしまうミルドレッド……
トラチャンと別れて休暇を楽しむなんてできない。ミルドレッドはこっそりトラチャンを連れてユーウツ城へ来てしまいます。
さて、入り江の「猫の頭岩」と言う岩には、隠された宝の伝説がありました。
でも、そんなことよりトラチャンを隠すのに必死なミルドレッド。ボートにトラチャンを隠し、こっそり餌を運んでいましたが、不審に思ったエセルに問い詰められます。ミルは思わず「宝探しに行こうと思って」と口走りますが、それがとんでもないトラブルをまねいてしまい……
と、いうのがあらすじ。
イギリスの児童文学あるあるなんですけど、大きなお城を持っている貴族が、城の維持費が捻出できなくて、城や庭が荒れ放題になっていたり、何十と部屋があるのに、数部屋しか使っていなくて掃除が行き届かずほこりまみれだったりします。
「アーデン城の宝物」や、「グリーン・ノウ」でもそうでしたが、それを解決するのが「宝探し」なのです。これは、イギリス児童文学のお約束。
魔法使いのローワンウェッブさんは、何十年もカエルになっていたので、かつては立派だったはずのお城はボロボロでした。
こういうの、魔法で修繕できないものなんでしょうかね。映画のハリー・ポッターでは、ダンブルドア校長が食堂の飾り付けを一瞬で変更させたりしたので、あんなすごいことができたらなんでもできそうに思えるのですが。
じつはカックル魔女学校も経営が苦しく、雨漏りをする屋根の修繕費などにカックル先生は頭を悩ませていたのです。でも、そんな経営状態でも、海休暇のための生徒の水着は作ってくれます。いい先生です。
今回、ミルドレッドはがんばります。
いままでは、偶然の連続で事件を解決することが多かった彼女ですが、今回の事件では、かなり根性を出します。やっぱり、大切なトラチャンのためですからね、気合が違います。
そして、頑張った結果、すばらしい成果を上げるのですが、でも、彼女が気にかけるのは、あくまでトラチャンのこと。そういうところが、ミルドレッドのいいところ。
ミルドレッドがしっかりと成長をみせたところで、物語は終わります。これはこれで、いい感じの終わり方なんですけど、やっぱり、続きは読みたい。もっともっと、ミルドレッドの成長を見守りたいのです。
ドラマでは、少し改変があって、ミルドレッドがふつうの人間の子だったり、白人のイーニッドが黒人のセレブとなっています。けれど、ほかはなかなかの再現度で、作者のジル・マーフィが描いた挿絵にかなり似ています。
モード、カックル先生、ハードブルーム先生はそっくり。エセルもいい感じです。
字は大きく読みやすく、漢字には全部振り仮名がふってあるので、ひらがなが読めれば、コツコツ読みすすめられます。
ドラマで興味をもった方は、ぜひ原作も読んでみてください。読み聞かせにもぴったり。楽しくてポジティブで、元気の出る魔女スクールライフストーリーです。
続きがほんとうに気になるので、出版社さま、お願いします!(と、テレパシー)
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はひとつもありません。男の子も女の子もたのしめる、明るくてゆかいな魔女っ子学園ストーリーです。ミルドレッドの猫愛が炸裂している巻なので、猫好きさんにもおすすめ。
読後は、イギリス風のミルクティーとビスケットでティータイムを。
最近のコメント