【こすずめのぼうけん】小さな鳥の生まれてはじめての大冒険。愛されるロングセラー絵本【3歳 4歳 5歳】

2024年4月11日

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こすずめのぼうけん  ルース・エインズワース/作 石井桃子/訳 堀内誠一/画

あるところに、一羽の小すずめがいました。さて、この小すずめにやわらかい茶色の羽が生え、翼をぱたぱたさせることができるようになると、ある日、おかあさんすずめが飛び方を教え始めました……

この本のイメージ はじめての大冒険☆☆☆☆☆ 母の愛☆☆☆☆☆ めでたしめでたし☆☆☆☆☆

こすずめのぼうけん  ルース・エインズワース/作 石井桃子/訳 堀内誠一/画  福音館書店

<ルース・エインズワース>
イギリス、マンチェスターに生まれた。子どものために二冊の詩集を出版。後に、BBCラジオ番組“Listen With Mother”のために、いくつかの物語を書いた。主な作品に[こすずめのぼうけん」「ちいさな ろば」「黒ねこのおきゃくさま」(以上、福音館書店)、作品集に「ねこのお客―かめのシェルオーバーのお話1」(河本祥子訳・絵/ともに岩波書店)などがある。

<石井桃子>
石井 桃子(いしい ももこ、1907年3月10日 ~2008年4月2日)は、日本の児童文学作家・翻訳家。位階は従四位。「くまのプーさん」「ピーターラビットのおはなし」といった数々の欧米の児童文学の翻訳を手がける一方、絵本や児童文学作品の創作も行い、日本の児童文学普及に貢献した。日本芸術院会員。

<堀内誠一>
堀内 誠一(ほりうち せいいち、1932年12月20日 ~1987年8月17日)は、日本のグラフィックデザイナー、エディトリアルデザイナー、絵本作家。

 原題はTHE SPARROW WHO FLEW TOO FAR.Listen With Mother Tales.から。イギリスでの初版は1951年。日本では1976年「月刊こどものとも」に、そして1977年に「こどものとも傑作集」として出版されています。

 お話は……

 とあるところで暮らしているすずめの母と子。
 小すずめの羽が整ってきたころあいを見て、母は小すずめに飛ぶ練習をさせます。

 最初はすぐそばの石垣の上まで行けばいいはずだったのが、自信をつけてしまった小すずめは「もっと遠くへいける」と思ってしまいます。

 お母さんに言われた場所を越えて、ずっとずっと遠くへ。

 やがて、疲れた小すずめはどこかで休みたいと思い、鳥の巣らしきものを見つけては「やすませていただいていいでしょうか」と頼むのですが……

 ……と、いうのがあらすじ。

 初めて飛んだばかりの小すずめちゃん。
 いきなり遠くへ飛んで行こうとするなんて、なかなかの心臓です。
 でも、すぐに無謀だったと後悔するのですが……

 小さな子どもがあるとき「冒険の旅」に出ようとご近所から離れたところへ歩いてゆこうとするのに似ています。無茶なんだけど、やってみたいのです。

 さて、小すずめは旅の途中でカラス、やまばと、ふくろう、カモに出会います。
 どの鳥も小すずめが自分たちの仲間の鳥ではないので巣に入れてくれません。

 と、いうか、ふくろうは猛禽なのであぶないですよね。小すずめちゃん、食べられなくてよかった!

 やがて心配して探しに来てくれたお母さんすずめにおぶわれて小すずめちゃんはおうちへ帰るのです。

 石井桃子先生作の「ちいさなねこ」にも通じるものがある、母の愛にあふれた絵本です。
 小さな子どもの「自分にもできる」と言う無謀な冒険心と、わが子の身を案ずる母心。

 精一杯の大冒険をしたあと、お母さんの背中に帰った小すずめの気持ちを思うと読んでいるほうの心にも柔らかな気持ちが降りてきます。

 すずめの言葉遣いがとても上品で「すみませんが、なかへ はいって、やすませて いただいて いいでしょうか?」など、どんな鳥にも礼儀正しくたずねます。
 お母さんのしつけがいい、育ちのいい小すずめちゃんなのがよくわかります。他人(鳥)を疑うこともないし、世界には怖いものや悪いものなどがあるなんて想像もつかないような清らかさと幼さ。

 途中で出会う鳥たちが「仲間じゃないから」と巣で休ませてくれないのには、どうにももどかしい気持ちになりますが、世の中の厳しさを描いているのかもしれません。

 読んでいると、思わず小すずめちゃんの気持ちになってドキドキハラハラ、さいごはほっと胸をなでおろす、そんな一体感のある絵本です。ふくろうに食べられなくて本当によかった!

 すべての字はひらがなで書かれていますので、五十音が読めれば一人でもコツコツ読みきれますが、これはぜひ読み聞かせで。小さな子どもが無謀なことをしたときの親の気持ち、そして、子どもが親のもとで安心して翼をやすめる気持ちが伝わってきます。

 お母さんすずめ、小すずめちゃんを見つけても、怒ったりしないのも素敵です。もしかしたら、自分も小鳥のころ、無茶な冒険をしたのかも。

 子ども心と母の愛が伝わる、名作絵本です。
 すべての言葉遣いが上品で美しく、それも魅力のひとつ。

 お子さまがちょっぴり遠くへ行きたくなるようになったら、ぜひどうぞ!

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はまったくありません。
 小さな子どもの冒険心、外の世界の厳しさ、母の愛を愛情あふれる視線で描いた物語です。
 堀内先生の絵がリアルな中にも可愛らしさがあり、イギリスの田園風景を思わせる背景も美しい。

 山あり谷ありの構成なので読み応えがあり、読んでいてわくわくします。

 

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