【都会のトム&ソーヤ】「究極のゲーム」を目指すコンビ、栗井英太の作品に挑む、シリーズ11作目【DOUBLE】【小学校高学年以上】
栗井英太の新作「DOUBLE」が完成。創也と内人に招待状が届く。はたして、ふたりはこの難解なゲームを突破できるのか?真田女史も参戦の11作目上下巻!
この本のイメージ サバイバルゲーム☆☆☆☆☆ ミステリー☆☆☆☆☆ 学園ドラマ☆☆☆☆☆
都会のトム&ソーヤ 11 DOUBLE 上下 はやみねかおる/作 にしけいこ/絵 講談社
<はやみね かおる>
日本の男性小説家(1964年4月16日~ )。三重県伊勢市出身。代表作は「都会のトム&ソーヤ」「怪盗クイーンシリーズ」「名探偵夢水清志朗シリーズ」など
はやみねかおる先生のヤングアダルト(ライトノベル)小説、「都会(まち)のトム&ソーヤ」シリーズ11作上下巻です。初版は2013年。
お話は、一応、どこから読んでも面白く読めるようには書かれているのですが、創也と内人の出会いや、栗井英太チームなどの詳しい設定を知ったほうが読みやすいので、第1巻から順番にお読みになったほうがわかりやすいでしょう。
第1巻のレビューはこちら↓
さて、今回のおはなしは……天才ゲームクリエイターチーム「栗井英太」の新作「DOUBLE」が完成。創也と内人はプレイヤーとして招待されます。
舞台は、廃れたまま放置された街、アルゴシティ。今回は、「こんなことあろうかと」の真田女史も参加することとなりました。
はたして、創也たちは栗井英太チームの自信作の謎を解き、脱出することができるのか?
……と、いうのがあらすじ。
栗井英太は資金力があるので、いつも大掛かりで楽しいゲームになります。今回も、仕掛けが盛りだくさん。「時見」と言うすぐれた未来予測能力がある真田女史も、とある事情から参戦しますが、ゲーム中彼女の能力はなぜか失われてしまいます。
アルゴシティからの脱出作戦と同時に、彼女の能力の謎にも少し触れることができる第11作目です。
はやみね先生は、おそらく江戸川乱歩の「少年探偵団」や「パノラマ島奇譚」などがお好きなんでしょうね。軽妙な推理、駆け回る少年たち、不気味な怪人たち、そしてダイナミックなからくり……
だけど、最新のテクノロジーはあり、現代風の味付けは忘れない。
とくに、現実と虚構が入り混じった「DOUBLE」の世界は、今後VRやメタバースなどで実現可能になってきており、いまが旬の題材でもあります。10年前に未来を予言したような作品になっているのもすごい。
しかし、このお話、第1巻が2003年に開始されてから、どうやらずっと創也と内人は中学生のままなのですが、時代設定として何年くらいという設定なのでしょう? それとも、「サザエさん時空」へ入り込んでしまったのでしょうか?
そこらへんが謎です。
(「サザエさん時空」と言うのは、アニメ「サザエさん」のように、季節はめぐるけれど歳をとることはない不思議な時空のこと。日常系のロングセラー作品はこの時空に入ることが多い。最近、「くまのパディントン」はこの時空に入ったことが確認されています。)
なので、この作品に登場する携帯電話やコンピューターなどのテクノロジーが、だいたい何年くらいのものなのかは知りたいところ。
「前夜祭」あたりまでは少しレトロな雰囲気がしていたのですが、「DOUBLE」からはむしろ現代に通ずるところが出てきたのは時代の妙。今はレトロブームなので、サイケデリック・ファッションもリバイバルで着る人が増えるかも。今回は予言の書めいていて、「おお」と思ってしまいました。
そして、今回も、頭脳の創也と行動の内人のコンビネーションは抜群。毎回毎回、内人の「生きる力」の強さには感動します。
この二人、なんだかんだと追い詰められてからが強く、何が起きても面白がってしまうところがいいコンビ。はやみね先生のキャラクターは全員メンタルがとことん強いので、たとえ意気消沈してしょんぼりするようなことがあっても、悩んだり苦しんだり、病んだりすることがありません。すがすがしいのです。
また、今回は、創也と真田女史、それぞれが苦手なこと、やったことがないことに挑戦して乗り越えるお話でもあります。
どこまでもさわやかで瑞々しく、「ザ・少年時代」と言う感じのお話です。
真ん中に太いテーマはありますが、大上段に構えたり、深刻になりすぎたりしない。
軽妙な会話とトリッキーな展開、謎また謎、ラスト近くのどんでん返しなど、心が躍ります。女の子も強くて大活躍するので、男の子でも女の子でも楽しめるでしょう。全部の漢字に振り仮名がふってあるわけではないので、小学校高学年から。もちろん、大人も楽しく読めます。
異能の人たちがたくさん登場するタイプのお話です。「カウボーイビバップ」「有閑倶楽部」「ジョジョシリーズ」「CLAMP学園探偵団」「やじきた学園道中記」などが好きなら、大人でもおすすめです。(例が古すぎる)
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はありません。軽快で、テンポのいい、冒険小説です。登場するキャラクター全員、生命力があふれ、明るく、さわやかです。
テーマは前向きで、病んだ要素がありません。まっすぐなお話を読みたい時に。
ラストシーンは、シリーズ中屈指の名シーンです。
読後は丁寧に淹れたダージリンティーでティータイムを。
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