【はりねずみのおいしゃさんとおばけのこ】はりねずみのお医者さんが仲良くなったのは、はずかしがりやの……【絵本】【4歳 5歳 6歳】

2024年4月14日

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はりねずみのおいしゃさんとおばけのこ  ふくざわゆみこ/作 世界文化社

はりねずみのおいしゃさんが森を歩いていると、おばけに会いました。ところがそれは、白い布をかぶった誰かさんだったのです……(はりねずみのおいしゃさんとおばけのこ ふくざわゆみこ/作 世界文化社)

この本のイメージ 動物ファンタジー☆☆☆☆☆ はりねずみ☆☆☆☆☆ 恥ずかしがりや☆☆☆☆

はりねずみのおいしゃさんとおばけのこ  ふくざわゆみこ/作 世界文化社

<ふくざわゆみこ>
東京生まれ。絵本作家。主な絵本に「ぎょうれつのできるパンやさん」「ぎょうれつのできるチョコレートやさん」他、ぎょうれつのできるおいしいえほんシリーズ(教育画劇)、「おおきなクマさんとちいさなヤマネくん」「ブルくんとかなちゃん」シリーズ(福音館書店)など多数。

 本日ご紹介するのは、ふくざわゆみこ先生の夢のある動物ファンタジー絵本、「はりねずみのおいしゃさんとおばけのこ」です。初版は2021年。

 動物ファンタジーは、肉食動物も草食動物もなかよく暮らす平和な世界を描いていることが多く、可愛らしい動物たちの仕草や心あたたまるエピソードが大好きな方と、「科学的ではない」と言う理由であまり好きではない方に好みが分かれるジャンルです。

 ここらへんの残酷でリアルな部分も無視しないで描いているのはビアトリクス・ポターの「ピーター・ラビット」シリーズの系譜であり、そこは無視して動物たちを人間社会の比喩表現として楽しむのが「ジャングル大帝」や「やまねずみロッキーチャック」などの動物ファンタジーです。(例が古いよ)

 ふくざわゆみこ先生の絵本シリーズは後者のパターン。本来は仲良くできないはずの肉食動物と草食動物が仲良く暮らすファンタジックな世界です。
 リアルな世界ではハムスターときつねが仲良くなるのはありえないのですが(食べられちゃう)、この優しい世界ならば、それは「あり」。
 彼らは表現としてのはりねずみであり、ハムスターであり、きつねなので、様々な個性を持った人間たちの多様性を描いた比喩なのです。

 今回は、森の動物たちを助けるはりねずみのお医者さんのお話。
 はりねずみのお医者さんは、ある日、森の中でおばけのこに出会います。
 はじめはびっくりしたはりねずみ先生でしたが、よくよく見ると、そのこはおばけではなくて、白い布をかぶったふさふさしっぽの誰かでした。

 おばけのこは極度のはずかしがりやで、白い布をかぶっていないと外へ出られないのです。
 はりねずみ先生に出会った驚きで転んで怪我をしてしまったおばけのこを家まで送ると、おばけのこのおうちは木で作ったおもちゃでいっぱいでした。
 おばけのこは木でかわいいおもちゃを作るのが趣味なのです。

 けれど、あまりにもはずかしがりやなため、誰にも遊んでらうこともなく、家で飾られているだけのおもちゃたち……はりねずみ先生さんは、おばけのこからおもちゃを預かり、病気の子どもたちに配ることにしました。

 子どもたちはかわいいおもちゃに大喜び。
 おもちゃをもらった子どもたちの笑顔を、はりねずみ先生はおばけのこに見せてあげたくなりました。

 あるとき、ハムスターの子どもにあげたきつねのおもちゃの足が壊れてしまいます。
 はりねずみ先生は、おばけのこのところへきつねのおもちゃを持ってゆくと……

 ……というのがあらすじ。

 人前に出るのがはずかしくて、布をかぶって生活している「おばけのこ」。
 でも、心はあったかい気持ちでいっぱいです。

 森でひろった木で、かわいいおもちゃをたくさん作っていつか誰かに遊んでもらいたいと思っていました。

 他人とかかわるのは苦手だけど、心の中には豊かな世界が広がっている子と言うのは一定数います。
 静かで言葉少なで、あまりはしゃいだりはしないけれど、自分の「好き」なことがしっかりとあって、自分だけの大切な世界があるのです。
 けれど、その素敵な世界も、他人といっさいの接点がなければその素晴らしさを誰にも知ってらうことはできないわけで……

 はりねずみ先生は、そこでおばけのこのために一肌脱ぎます。

 おばけのこに対して、無理やりに森のみんなが集まっている場所に行くようにすすめたり、誰かを紹介しようとしたりしないところに穏やかな優しさを感じます。無理強いではいけないとわかっているんですね。

 はりねずみ先生はおばけのこが作ったおもちゃを預かって、病院に来た子どもたちにあげて元気を出してもらうことにしました。

 恥ずかしがりやのおばけのこは子どもたちを直接励ますことはできないけれど、はりねずみ先生とおもちゃというクッションを二段階あいだに挟むことで、病気の子たちを元気付けることができたのです。

 笑顔の子どもたちを少し離れたところから嬉しそうに見守るはりねずみ先生たち。

 もしかしたら、白い布を取ったおばけのこが子どもたちの輪の中に入って一緒に遊ぶラストを求めてた方もいるかもしれませんが、わたしはこのラストはとても好きです。
 みんながみんな、大勢でにぎやかに遊ぶ必要はないと思うのです。
 その子のペースで、その子なりの形で。ただ、完全に孤立してしまうことさえ避けることができるのなら。

 おばけのこのように、何かに熱中することがあって一心不乱に創作をしてしまうような子は、どうしても普通のお子さまとはテンポもペースも違います。
 何かに集中してしまうと時を忘れてしまうので、大切な約束を忘れてしまうこともしばしばでしょう。

 みんなと一緒にみんなと同じ遊びをするのは向いていないのです。
 けれど、「自分の好きなもの」を間において、それをクッションにして人と触れ合うことはできます。
 内向的でなかなか他人と同じように遊べないお子さまに希望を与えてくれるストーリーです。

 文章はすべてひらがなとカタカナ。見開きに十行前後で読みやすく、五十音が読めればひとり読みでコツコツ読みきることができます。もちろん、読み聞かせでも。

 隅々まで描き込まれた、愛らしい絵本です。
 内向的で絵やハンドメイドなど「創ること」がお好きなお子さまに。
 芸術の秋にぴったりのかわいい絵本です。この季節のおうち時間にぜひどうぞ!

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はまったくありません。引っ込み思案で恥ずかしがりやなおばけのこが心を開いてゆくのをはりねずみ先生が無理強いしないで笑顔で見守ります。

 内向的で、創作が好きなお子さまに。
 はずかしがりやさんの心に寄り添う絵本です。

 

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