【ミス・ビアンカ】美しき白ねずみの大冒険ふたたび。イギリスの冒険ファンタジーの古典【ダイヤの館の冒険】【小学校中学年以上】

2024年3月16日

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ミス・ビアンカ ダイヤの館の冒険  マージョリー・シャープ/作 渡辺茂男/訳 岩波少年文庫

囚人友の会の議長となってしまった、ミス・ビアンカ。次の救出対象は、ダイヤの館に囚われているペイシェンスという女の子。ところが、雄ねずみたちは、小さな女の子の救出に乗り気ではありません。それで、ミス・ビアンカは…

この本のイメージ 動物ファンタジー☆☆☆☆☆ プリズンブレイク☆☆☆☆☆ かわいい☆☆☆☆☆

ミス・ビアンカ ダイヤの館の冒険  マージョリー・シャープ/作 渡辺茂男/訳 岩波少年文庫

<マージョリー・シャープ>
マージョリー・シャープ(1905~1991)は、イギリス・ソールズベリー生まれ。ロンドン大学卒業、21才のとき「パンチ」に作品が掲載される。1930年「しゃくなげのパイ」で作家デビュー。代表作は「ミス・ビアンカ」シリーズ

<渡部茂男>
渡辺 茂男(わたなべ しげお、1928年3月20日 ~2006年11月18日)は、日本の児童文学者、翻訳家。昭和時代戦後から平成時代にかけて、児童文学を多数創作したほか、英米の絵本や童話を中心とした児童文学や海外の児童文学理論の翻訳を手がけた。代表作は「しょうぼうじどうしゃ じぷた」など。

 ミス・ビアンカシリーズ第2巻。原題はずばり、Miss Bianca.本国初版は1962年です。

 大使館のぼうやのペットだったミス・ビアンカは、第1巻の「くらやみ城の冒険」で、偶然、ねずみたちの「囚人友の会」から誘われ、冒険の旅に出ることになります。

 みごと囚われの詩人を救出したミス・ビアンカは、囚人友の会の議長に選出されてしまいました。

 この物語は、人間と会話できるねずみたちが、とらわれの無実の囚人を救出すると言う、プリズンブレイク動物ファンタジーです。

 さて、今回のお話は……

 今回の救出対象は、通称「ダイヤの館」に住む大公妃の侍女、ペイシェンス。「ダイヤの館」とは、大公妃が暮らす、何もかもがダイヤモンドと水晶で飾り立てられた、豪華な館です。
 でも、女の城で働く少女ひとりの救出なんて、と雄ねずみたちはやる気になりません。

 そこで、ミス・ビアンカは、主婦ねずみたちを奮い立たせ、雌たちだけで救出作戦に出かけます。
 ところが、想定外のことがおきてしまい、雌ねずみたちは全員、逃げ帰ってしまうのでした。ミス・ビアンカだけを残して。

 さて、ミス・ビアンカはペイシェンスを救出できるのでしょうか。
 はたして、バーナードはミス・ビアンカを助け出せるのでしょうか。

 ……と、言うのが今回のあらすじ。

 大使の息子さんの大切なペットのミス・ビアンカは、豪華なかごの中のせとものの塔で暮らしていました。首には銀の首飾り。大使のぼうやと一緒に本を読んだり、詩を聞いたりして育ったミス・ビアンカは、教養も豊かです。

 それでも、外の世界にほとんど出たことがない彼女は、箱入りの世間知らずでもありました。

 しかし、そんなミス・ビアンカは、固定観念がないぶん、ふつうのねずみが怖がることを怖がりません。もちろん、ミス・ビアンカにも怖いものはあるのですが、それはふつうのねずみとは同じではなく、むしろ「自分の中」にあるのです。

 この物語の中で、ミス・ビアンカは自分自身のなかに美学がある女性として描かれています。それは、ともすれば、傲慢、高慢ともとられかねない頑固さなのですが、ミス・ビアンカのたおやかな雰囲気と、丁寧な言葉遣い、時折見せるかわいげなどによって、とてもチャーミングに見えるのです。

 今回のお話では、ミス・ビアンカは周到に準備したにもかかわらず、想定外のできごとにより、おそろしい敵地にたった一匹で取り残されてしまいます。

 けれども、ミス・ビアンカは諦めず、逃げ出さず、たったひとりでつとめを果たそうとします。前回の冒険では、付き添いが二匹もいたのに、いきなりの孤軍奮闘。でも、ミス・ビアンカはがんばります。

 今回の救出対象は、ペイシェンス(忍耐とか辛抱とか言う意味)という小さな女の子。劣悪な状態で暮らしているのに、本当にいい子なんです。この子がいい子すぎて、ミス・ビアンカは見捨てられなくなっちゃうのだけども。

 一方バーナードですが、最初の作戦が雌ねずみだけで行う計画だったため、一緒にゆくことが出来ず、気をもみます。
 女装してついて行こうとしてばれちゃうのが、あまりにもかわいい。
 バーナードは、もっさりした、地味で無骨な雄ねずみと言う設定ですから、一目でばれてしまう女装だったのだと思います。表紙は、ミス・ビアンカにしかられちゃうバーナード。

 さて、先に逃げ帰った雌ねずみたちは、自分たちがおそろしさのあまり、ミス・ビアンカを見捨ててしまったとは言い出せず、彼女がみずから望んで現地に残ったのだと主張します。

 それで、だれもミス・ビアンカの救出の必要性を感じることなく、助けがこないままミス・ビアンカは苦しむことになるわけですが、ここでバーナードの直感が働き、彼は一匹で旅に出るのです。

 ミス・ビアンカは、おそろしい「ダイヤの館」で何度も思い通りにならない苦難に出会います。彼女は、ことを成すにあたり、入念に調査し、準備して、きちんと手際よくやりこなすのですが、いつも思ってもみない出来事により、事態がより悪化してしまうのでした。

 最後は偶然のなりゆきで助けられるのかしらと思いきや、ちゃんと、ミス・ビアンカのしっかりとした下調べや準備が彼女を助けたと言う展開でした。

 つまり、丁寧に計画して準備することが間違っているという話ではないんですね。どんなに準備しても、計画通りにはゆかないことが多いけれど、それでも入念な準備は、最終的に自分を救ってくれる、と言うお話なんです。

 ミス・ビアンカは、良くも悪くも温室育ちなので、彼女の長所も短所も同じところにあります。ことを成す為に水も漏らさぬ計画を立てることは出来るけれど、現実には予想外の出来事の連続。どんなことも、予想通りにはゆきません。
 そして、ミス・ビアンカには「臨機応変」とか「機を見るに敏」「利に聡く」などと言うのは苦手です。

 そこであきらめてしまえばそこまでなのですが、ミス・ビアンカは、あきらめないのです。
 そして、結局は、あきらめないで続けていれば、最初の「入念な準備」や「コツコツとした努力」が生きてくる。
 現実でも同じことかもしれません。

 でも、逃げ帰った体操ねずみをまったく責めず、最終的に勲章すら与えたミス・ビアンカの器は無限大に大きいですよ。
 「ほんとうはこうだったのよ」なんて一言も言わないんです。こう言う人が、リーダーの器なんでしょうね。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はほとんどありません。大公妃が怖い人ですが、流血シーンや残虐シーンはありません。かわいくてわくわくする冒険物語です。ミス・ビアンカもバーナードもかわいい。

 読後は、チーズが食べたくなるかもしれません。おいしい紅茶とチーズケーキでティータイムを。

 

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