【シェーラ姫の冒険】元気でキュートなお姫様の大冒険!20年以上愛される、和製アラビアンナイトファンタジー【小学校高学年以上】
シェーラは、砂漠のなかにある美しい国シェーラザード王国のお姫さま。あるとき、悪い魔法使いサウードに国中が石に変えられてしまいました。大好きなお父様と国民を救うため、シェーラは幼馴染の魔法使いファリードと魔法の杖を求めて旅に出ます……
この本のイメージ 冒険☆☆☆☆☆ 友情☆☆☆☆☆ 親子☆☆☆☆☆
シェーラ姫の冒険 (愛蔵版) 上下 村山早紀/作 佐竹美保/絵 童心社
<村山早紀>
1963年長崎県生まれ。日本の児童小説作家。「ちいさいえりちゃん」で毎日童話新人賞最優秀賞、椋鳩十児童文学賞を受賞。主な作品は『シェーラひめのぼうけん』『新シェーラひめのぼうけん』シリーズ、『風の丘のルルー』シリーズ、『はるかな空の東』などであり、近年は風早の街を舞台にした『コンビニたそがれ堂』シリーズ、『カフェかもめ亭』シリーズ等が人気を博している。
児童書って不思議です。
人生のなかで限られた期間しか読むことがなく、成長するとなんとなく気恥ずかしかったり、幼稚に感じられたりして遠ざかってしまうものですが、大人になって読むと、さまざまな発見があります。
わたしは最近になって「児童書や絵本を自分のために読む」と言う楽しみを発見し、このブログを書くようになりました。
この趣味は、大人のみなさまに、全力でひろくおすすめしたい。
とくに、なんだか心身ともにへとへとになったときや、仕事や生活のめんどくさいあれこれに疲れたときなどに、児童文学や絵本を読むと心が洗われます。なんだかんだと現実はしんどいけれど、まあ、やれやれだ、もう一息がんばるか、と言う気持ちになるんです。
もちろん、児童書は本来は子どものためのもの。主役は子どもです。でも、大人が読んで癒されたっていいんですよ。
だから、親子での読み聞かせや、親子で同じ本を読んで、一緒に「推し」キャラを探したりするのも楽しいと思います。
そんな読書にぴったりのファンタジーが、これ。
「シェーラ姫の冒険」。
20年以上前、「フォア文庫」から10巻シリーズで刊行された「シェーラ姫の冒険」の愛蔵版です。
わたしは、このフォア文庫版を恥ずかしながら読んでおらず、今回初めて読みました。
今でも図書館で大人気のこのシリーズ……やはり、面白かった!
お話は……
シェーラザード王国のお姫様シェーラは、幼馴染の魔法使いファリードと旅をしていました。
悪の魔法使いサウードに石にされた王国を救うため、なんでも願いをかなえてくれる「魔法の杖」を手に入れるため、「7つの鍵」となる宝石を捜す旅でした。
言うまでもなく「7つの鍵」はサウードも探しています。
旅の途中で知り合った孤児ハイルを仲間にし三人組になり、またもと盗賊の錬金術師ハッサンや、父を探す美少女錬金術師ミリアムなど、たくさんの人たちと出会い、シェーラは成長してゆきます。
はたして、シェーラは王国を救うことができるでしょうか?
……と、いうのがあらすじ。
作者の村山早紀先生が、「30分アニメーションシリーズのようなお話を書こう」と思って書かれたそうで、まさにテレビシリーズアニメの雰囲気。
どのキャラもかわいらしく魅力的で、ともすれば殺伐とした展開になりそうなところが、随所に救いがあり、やさしい世界観です。そう、古き良き昭和のアニメって感じ。
主人公のシェーラ姫は、シェーラザード王国のお姫様。明るくて、かわいくて、人なつっこくて、正義感が強くて面倒見がいい
そのうえ、怪力なんです。
相棒は、ちょっと気弱で、真面目で、引っ込み思案な魔法使い、ファリード。
なんでも願いを叶えてくれる「魔法の杖」をもとめて、二人は旅をしています。そこへ、不良少年団のボスだったハイルや、美少女錬金術師ミリアムなど、どんどん仲間が増えてゆくお話です。
「7つの鍵」のありかを示す「魔法の地図」をたよりに、様々な王国を訪ね、苦しんでいる人や困っている人を助け、事件を解決しながら旅をします。そのなかで、それぞれの過去があきらかになったり、抱えている問題を解決したり。
とくに親子の問題には、正面から切り込んでおり、決して都合の良い親子関係ではないものの、それぞれどれも救いのある展開になっているのが見事です。
クライマックスのオールスターキャストの総力戦は、胸が熱くなる展開。
10巻の文庫本を2冊の愛蔵版にまとめたので、それぞれが人も殺せる分厚さ。読みごたえは充分です。
行間はほどよく開いていて読みやすいのですが、振り仮名が難しい漢字にしかふられていないので、小学校高学年から。かしこい子なら、文章が平易なので中学年以上でも読めると思います。
どんなに辛い状況になっても、あきらめず、明るさを失わず、自分に出来ることをせいいっぱい頑張って道を切り開いてゆくシェーラ姫には、励まされます。そして、内向的で落ち込みやすい子には、ファリードが寄り添ってくれます。
友達に素直になれない子にはハイルが、何かに夢中になりすぎて細かいことを忘れちゃう子にはミリアムが、様々な子どもたちに寄り添うキャラクターたちが登場します。
もちろん、大人の癒しタイムにも。明日の活力をくれる、正統派の冒険物語です。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
戦闘シーンなどもある活劇ファンタジーですが、ネガティブな要素がほとんどありません。また、登場人物の掘り下げも深く、それぞれに救いがあり、HSPやHSCのほうが多くのメッセージを受け取れるでしょう。
子どもたちが、それぞれの問題に体当たりで立ち向かってゆく展開には、励まされます。
主人公は女の子ですが、女の子にも男の子にも、大人にもおすすめの良質のファンタジーです。
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