【少女ポリアンナ】下手な自己啓発本より児童文学がおすすめ!一度はちゃんと読んでみたい、ポジティブシンキングの元祖【小学校中学年以上】
日曜日の名作劇場でアニメーションにもなった少女向け小説。どんなときでも、幸せを創り出せる不思議な女の子の物語です。
この本のイメージ 幸せ☆☆☆☆☆ ほのぼの☆☆☆☆☆ ほろりと☆☆☆☆
少女ポリアンナ エリナー・ポーター/作 谷口 由美子/訳 岩波少年文庫
<エリナー・ポーター> 1868〜1920年。アメリカの作家。ニューハンプシャー州生まれ。ボストンで音楽を学び、結婚後文筆活動に入る。
父親をなくして孤児になったポリアンナは、丘の上の広いお屋敷にひとりで暮らしていたポリ-おばさんに引き取られました。ポリーさんは、気難しく子供が嫌いで、「義務」でポリアンナを引き取ったのです。
けれども、ポリアンナはどんな逆境でもうれしいこと、幸せなことを探し出す天才でした。
日曜日の夜、名作劇場でアニメーション化されたこともある、「よかったさがし」でおなじみのポリアンナです。ポリアンナという変わった名前は、彼女の母ジェニーが、自分の妹たち、ポリーとアンナの名前を足してつけた名前だったのでした。現代のアメリカでは、ポジティブシンキング、「底なしの楽天家」の代名詞のように使われるそうです。
母ジェニーはポリアンナが幼いときに死に、牧師だった父親に育てられました。その牧師のお父さんが、彼女に、「どんなときでもうれしいことを探すゲーム」を教えたのです。
この、彼女の不思議な能力のおかげで、彼女のおば、ポリーをはじめ、村の人たちも次々と幸せになっていきます。幸せになる、と言うより、幸せに気づく。という感じ。
心に様々な痛みを抱えている人たちが、ポリアンナに救われていくのが前半のストーリー。後半は、ポリアンナが周囲の人たちに救われていく話です。
詳しいことは、ぜひ、読んでいただきたいのですが、この手の話にありがちな、「そんなポジティブシンキングなんて、本当に辛いときにはできないものよ」と言うアンチテーゼに対して、後半のストーリーが見事に答えを出しています。この後半があるから、前半が生きており、前半があるから後半が盛り上がる、と言う構成なんです。
この小説があれば、もう下手な自己啓発本はいらないんじゃないかな、と思うくらい必要充分なことが入っています。完成されています。この時代に、ここまで考えて、こういう答えを導き出した作者はすごい人だな、と素直に感動します。
つらいときにも何かいい側面を探し出して「よかったさがし」をしましょう、が前半のテーマなのですが、それだけでなく、自分で自分を幸せにするのは難しいけれど、誰かが誰を幸せにして、それを順繰りに持ちまわればみんな幸せになるよね、と言う「幸せの交換」が後半のテーマになっていきます。
結局のところ、ポリアンナの「よかったさがし」ゲームにしてみても、彼女自身の「よかったところを探す」能力ももちろん大切なのですが、「誰かが一緒に自分のよかったを探してくれる」と言うのが、弱っている人にとって、たいへんなセラピー効果があったということなのです。
これは、「楽しいムーミン一家」の飛行おにのエピソードにも通じるのですが、たとえ自分自身を救えなくても誰か困っている他人を救えば、そのことにより自分も救われる、と言う「情けは他人(ひと)のためならず」のような話は海外の児童文学に色濃く見られます。日本のことわざにもあるので万国共通とは思いますが、おそらく、キリスト教の思想では大切とされていることなのでしょう。
そして、実際、人生とはそういうものなのかもしれないな、と思わせられます。
毎日「うれしいことをさがすゲーム」をしながら、なにがおきてもニコニコして楽しそうに毎日を暮らすポリアンナにも、つらいことや哀しいことがゼロなわけではないんです。無敵のポジティブ少女に見えるポリアンナも、後半で自分ではどうすることもできない困難に見舞われます。
それを、ポリアンナが「なんとか努力して乗り越える話」ではなく、彼女が一度くじけてしまうことで、再度物語が大きく動き出すのが素敵です。周囲の人がポリアンナに救われて終わり、ではないところも含めて。
ポリアンナと言えば「よかった探しをする娘」と言う認識だけで、後半の展開を知らない、未読の方は、ぜひ、全編お読みになってみてください。後半は、ついネガティブになってしまう人の心にも寄り添う展開になっています。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ハッピーエンドです。安心してお読みいただけます。途中は山あり谷ありですが、読んでいる間の哀しみは作品中でほとんど報われます。大丈夫です。
続編はこちら
エリナー・ポーターのもうひとつの名作「ぼく、ディヴィッド」
最近のコメント