【メアリー・ポピンズ】辛口スーパーナニーとの不思議な日常。浅田真央ちゃんの人気EXプログラムでもある、イギリスからやってきた児童文学の古典。【小学校中学年以上】
メアリー・ポピンズのいないバンクス家は、またしても家庭崩壊寸前。そんなある日、花火と共にメアリー・ポピンズが帰ってきます。そして、いつもの不思議な日常のはじまりはじまり。
この本のイメージ 不思議☆☆☆☆☆ 楽しい☆☆☆☆ カラフル☆☆☆☆
とびらをあけるメアリー・ポピンズ P.L.トラヴァース/作 林容吉/訳 岩波少年文庫
ガイ・フォークスの日の夜、公園に花火をしに行ったバンクスきょうだいは、最後に打ち上げた花火から降りてきたメアリー・ポピンズと再会します。(本人は頑として認めないのですが)
メアリーがいない間、家庭崩壊寸前だったバンクス家ですが、彼女が戻ってきて一瞬で秩序が戻りました。(それでいいのか)
ふたたび、メアリーとバンクスきょうだいの不思議で楽しい日々がはじまります。
メアリー・ポピンズのファンタジーは、映像的にとてもカラフルで楽しいのが特徴です。「なんでそうなるの」と言う疑問にはメアリーは答えてくれません。怖い顔で睨まれたりします。でも、そんなメアリーも、子どもたちがピンチになれば絶対助けてくれるし、頼りになるスーパーナニー(乳母)なのです。
映画でのジュリー・アンドリュースのやさしげな雰囲気の印象が強かったメアリー・ポピンズですが、原作のメアリーはとっても辛口。(エミリー・ブラントのメアリーのほうが原作寄りです)最初はびっくりしましたが、他のイギリス児童文学を読んで、だんだんわかってきました。
イギリスの上流階級のナニー(乳母)さんは、みんな、基本的に厳しいんです。どの小説でも、ナニーさんはどんなに子ども想いで有能でも、厳しく辛口で容赦がない人なのです。
これは、クライアントである実の両親の希望があったのじゃないかと思うようになりました。忙しい上流家庭の夫婦にとっては、子どもと一日中一緒にいるナニーさんは、有能であってほしい反面、自分たちよりも子どもに懐かれては困る存在です。
だから、しつけに必要な「厳しいお小言」は、できるだけナニーが行い、親たちはかわいがるほうを担当して、子どもの情が移らないようにする、ひそかな配慮があった気がするのです。
そうは言っても、子供たちは、スーパーナニーのメアリーが大好き。
メアリーは、ツンツンしてるし、手厳しいし、お小言も多いけれど、本当はとっても愛情深く、そして困ったときは誰よりも頼りになることを子どもたちが知っているから。
女のわたしから見ても、メアリーは働く女性としてとってもかっこいいです。
今回も、小さなエピソードのオムニバスですので、読み聞かせにも最適。
ミントのキャンディステッキで空を飛ぶ話がかわいい。大晦日と新年の間に、絵本からキャラクターたちが飛び出して、にぎやかにパーティをする話も、色彩豊かで楽しいエピソードです。
王様と猫の話も印象的です。「かえってきたメアリー・ポピンズ」でも、王様とのらくらもののお話がありましたが、著者は「王様」と「知識」の組み合わせのお話が好きなようです。
「のらくらもの」の王様は、周囲から賢い王になることを望まれ、詰め込み教育をされて、王国を去ってしまいました。「王様をみたネコ」の王様は、知識を追い求めすぎるがゆえに王国をないがしろにし、危うくすべてを失うところでした。この二つのお話は対になっているような気がします。
おそらく、著者はむやみに知識だけを追い求めすぎるのは危うい、と言いたいのでしょうね。世の中には知識だけじゃなく大切なことがあるのだと。そのために書かれたファンタジー小説なのかもしれません。
やってきたときと同じように、突然去っていくメアリー。
いったい、何者なのか、結局正体はわからずじまいですが、彼女の厳しさと荒唐無稽さの同居が、著者の言いたいことだったのかも。人生は、きちんとした秩序と、そして、突拍子もない夢のどちらも必要なのよ。ってことです。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はいっさいありません。独特の不思議テイストにあふれた、カラフルなファンタジーです。想像力豊かなお子様や、空想が好きな大人におすすめです。
イギリス児童文学の独特の雰囲気が好きなら楽しめるでしょう。
アツアツのミルクティーと、スコーンやクランペット、ジンジャーブレッドなどをお供にぜひどうぞ。
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