【プリデイン物語】タランの冒険第2巻。不死身の戦士を作り出す黒い釜を追え【小学校中学年以上】

2020年9月17日

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プリデイン物語2 タランと黒い魔法の釜 ロイド・アリグザンダー/作 神宮輝夫/訳 評論社

角の王を打ち倒したタランたちでしたが、新たな戦いが始まりました。アヌーブンの王アローンの持つ、呪われた黒い釜を奪い、破壊しなければなりません。なぜなら、その釜は、死体から不死身の戦士を生み出してしまうからです……。

この本のイメージ 冒険☆☆☆☆☆ 覚悟☆☆☆☆☆ 気高さ☆☆☆☆☆

プリデイン物語2 タランと黒い魔法の釜 ロイド・アリグザンダー/作 神宮輝夫/訳 評論社

<ロイド・アリグザンダー>
アメリカ合衆国の児童文学作家、ファンタジー作家。
ペンシルベニア州フィラデルフィア出身。フィラデルフィアの教員養成大学を中退し、19歳で第二次世界大戦に従軍。ヨーロッパで戦役を終え除隊した後、パリ大学で学ぶ。1946年に帰国し、翻訳や編集の仕事をしながら小説を執筆。長編ファンタジー『プリデイン物語』シリーズの最初の2冊「タランと角の王」「タランと黒い魔法の釜」は、ディズニーアニメ「コルドロン」(Black Cauldron, 1985年)の原作。(Wikipediaより)

プリデイン物語2 タランと黒い魔法の釜 ロイド・アリグザンダー/作 神宮輝夫/訳 評論社

 「プリデイン物語」の第2巻、「タランと角の王」の続きです。2巻までのストーリーは、ディズニー映画「コルドロン」の原作で、かつてディズニーランドで行われていた人気アトラクション、「シンデレラ城ミステリーツアー」のモチーフでもあります。(わたしは、もともと「プリデイン物語」のファンだったので、ミステリーツアーで大興奮したのを憶えています)

 お話は各巻それぞれで一応完結しています。「プリデイン物語」は、後半になると入手困難になってゆきますが、1~2巻はわりと入手しやすいので、ぜひ、おもとめになってみてください。(そして、出版社さま、再版してください!)

 さて、今回のお話は……


 アクレンの渦巻城から助け出されたエイヌロイ王女は、カー・ダルペンの村で、タランたちと元気に暮らしていました。

 タランは相変わらず、魔法のブタ、ヘン・ウェンの豚飼い、勇者コルの弟子として働いていましたが、今回、あらたな冒険の旅に抜擢されます。

 なつかしい仲間たち、不思議な生き物ガーギや小人のドーリ、ゆかいな吟遊詩人フルダーなども集まってきます。新しい旅の仲間、詩人にして剣士である美しいアダオン、高慢な王子エリディルと一緒に、タランは、「魔法の黒い釜」探索の旅に出ることになります。

 この「魔法の黒い釜」とは、そこに死体を投げいれると不死身の戦士として出てくるという、恐ろしい釜で、なんとしてでも破壊しないといけないのです。
 さて、タランたちは、無事、この釜を奪い取り、破壊することが出来るのでしょうか。

 というのが、今回のあらすじ。

 「プリデイン物語」は、ド直球の正統派ファンタジーなので、毎回、最初から最後までぶっといテーマがまっすぐ貫いています。

 今回のテーマは、「勇気」
 物語の中で、タランは、何度も試されます。

 何度も何度も、手に入れたかと思った素晴らしいものを奪われたり、手放すように促されたりします。
 そのたびに、タランは悩み、そして最終的に、仲間たちのために、多くの人々のために手放します。
 けれども、それが彼を成長させるのです。

 逆に手放せなかった人たちは、まっさかさまに転落していきます。

 今回の金言はこちら。

 「おまえは、危険なことが、それほどすきなのか?」と、ギディオンはたずねたが、やさしくいいたした。「危険なことが大きらいになってこそ、大人といえる。そうとも。きらって、そして恐れるのだ。ちょうど、このわたしのように。」ギディオンは、手をのばして、タランの肩をたたいた。「その大胆さをなくすなよ。おまえの勇気は、これからたっぷりとためされるのだ。」(p57)

 このギディオンの言葉通り、彼の「勇気」は剣を振り回したり崖を飛び降りたりではなく、もっとつらい局面で試されます。
 けれど、タランは耐えて、そして乗り越えるのです。

 子どもらしい憧れで「勇者になりたい」と願っていたタランですが、旅から戻ってきたときは、誰もが認める勇者になっていました。でも、それは、タランが最初に想像していた「勇者の旅」ではなかったのですけれども。

 今回、タランははじめて「大人の世界」に一歩足を踏み入れました。
 子どもの世界で生活しているうちは、子どもから見た大人の世界は立派な人ばかりで、はやくその仲間入りをしたいと憧れでわくわくしているものです。

 けれど、一歩その「憧れの世界」に踏み入ると、そこはいいことばかりではなくて、悪いこと、卑怯なこと、理不尽なこと、筋の通らないことだらけ。最初の憧れは簡単に打ち砕かれてしまいます。

 その理不尽さをどう乗り越えてゆくのか……。これは、運命が差し出した課題を、タランが真正面から突破してゆくすがたを描いた、すがすがしい正統派の勇者物語です。

 エンタメ要素の強い大人向けの小説は、それはそれでジェットコースターのように面白いのですが、「プリデイン物語」のような正統派児童文学は人生で出会う壁に向き合うお話なので、真っ向から突き刺さってくるガツンとした力があります。
 そして、その純粋さが心の奥底に響くのです。

 「あとから手に入れたものは、もともと持っていたものではないのだから、それを捨てても何も失ったことにはならない。だから、失っても何も損はしてないのだ」という、少年らしい潔さ。
 大人でもなかなかできない、いえ、大人になるからこそできないのかもしれません。

 タランは冒険の途中でさくさんのものを捨てます。貴重な宝も、名誉も、賞賛も。でも、引き換えに、大切な仲間たちを守り、信じてくれた人の想いを受け継ぎます。

 「勇気」ってこういうことだよ。と、真正面から語ってくれる物語です。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

  たいへん哀しい展開があります。人も死にますし、暴力シーンもあります。ですから、とても精神的に敏感になっているときは、おすすめしません。けれども、励ましをくれる展開もありますし、背中を押す言葉もたくさんあります。
 「そういうシーンがあるのだな」と身構えていれば大丈夫な方にはおすすめです。感受性の鋭い方のほうが多くのことを受け取れると思います。
 単純な勧善懲悪のお話ではなく、人生を考えさせてくれる物語です。子どもから大人まで、幅広くおすすめです。読み聞かせにも。
 はちみつ入りのお茶などをご用意して、ゆったりお楽しみください。

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