【ターシャ・テューダーのファミリーレシピ】読んで楽しく、作っても楽しい。スローライフのカリスマ、ターシャが日常的に作って食べていた食事のレシピ集。
アメリカの絵本作家、ターシャ・テューダーは2008年にこの世を去りましたが、彼女のライフスタイルは多くの人々に影響を与え、いまなお愛されています。これは、ターシャがバーモントの家で日常的に作っていた素朴なレシピ集です。
この本のイメージ 自給自足☆☆☆☆☆ シンプル☆☆☆☆☆ 伝統的☆☆☆☆☆
ターシャ・テューダーのファミリーレシピ ウィンズロー・テューダー/著 ターシャ・テューダー/レシピ考案・絵 食野雅子/訳 主婦と生活社
<ターシャ・テューダー>
ターシャ・テューダー(Tasha Tudor、1915年8月28日 – 2008年6月18日)はアメリカの絵本画家・挿絵画家・園芸家(ガーデナー)・人形作家。彼女の絵は「アメリカ人の心を表現する」絵と言われ愛されている。50歳代半ばよりバーモント州の小さな町のはずれで1800年代の農村の生活そのままの自給自足の一人暮らしを始める。彼女の住む広大な庭でのライフスタイルはいまなお多くの人々のあこがれである。
わたしが敬愛するターシャ・テューダーは、アメリカの絵本作家ですが、絵本だけでなく、彼女の庭の写真集や、名言集など多くの本が出版されています。
今回ご紹介するのは、ターシャが日常的に作っていた料理やお菓子のレシピをまとめたレシピ集です。まとめたのはお孫さんのウィンズローさん。
最初に書いておきますと、凝ったお料理のレシピはほとんどありません。ですから、人によるとがっかりしてしまうかも。
ほとんどが、食材本来の味や風味を生かした素朴なお料理で、ターシャのシンプルなライフスタイルを思わせます。
けれども、お菓子や、クリスマスなどのおもてなし料理には、時間をかけて作られたものもあり、読んでいるだけで、ふわっとしたやさしい気持ちになれるのです。
ターシャは、1915年8月28日、マサチューセッツ州ボストンで生まれました。父ウィリアム・スターリング・バージェスはヨットや飛行機の設計技師、実業家として有名で、母ロザモンド・テューダーは肖像画家でした。
また両親共にボストン名家の出身で、特に母方のテューダー家は18~19世紀にボストン・バラモン(ボストン・ブラーミン)と呼ばれるボストンの政財界を支配する約40家にも含まれる、相当な名家だったようです。
そのような家庭だったため電話を発明した発明家ベルなど、そうそうたる人々が家に出入りして、幼いころから華やかな環境で育ちました。
けれど、そんなターシャはその頃からすでに農場や動物、植物のほうに興味があり、13歳の誕生日に両親にせがんで買ってもらったバースデープレゼントが「牛」だったと言うから驚きです。
お嬢様のバースデープレゼントに牛。これが「馬」ならまだ聞く話ですが、牛。
そして、その後もまっすぐに自分の愛したものたちのほうへ歩んでゆくターシャ。20代で絵本作家となり、50代で念願の庭を持つことになります。
このとき、ターシャに多大な影響を与えたのが、ヘンリー・デイヴィッド・ソローの著書、「ウォールデン 森の生活」(1854)でした。
これは、アメリカの作家であり思想家であるソローが、二年二ヶ月、森の湖畔で実験的に自給自足の生活をしていたときの記録です。興味を持って一度読んだことがあるのですが、この人、植物や動物が好きとかそういうのではなく、まったくの学術的興味で自分を使って実験するために森に引っ込んだ人なのです。
学者さんはさすがに思いつくことが変わってますね。でも、よく読むと、そんな動機ではじめたスローライフも、案外楽しんでいたみたいです。
ちょっとわたしには高度すぎる本でしたが(難しかったです……)、「150年ほど前にこんな生活を試してみた人がいた」と言う事実には純粋に心を動かされました。ターシャもそうだったのかもしれません。ソローは、自分で家を建て、無駄なものを極力そぎ落とした生活をたったひとりで送ったわけなのですが、それは、その生活を始める前の想像より、はるかに快適だったそうです。
そして、自分が人の集まるところへ行かなくても、静かに暮らすソローのもとに人が訪ねてくるようになるという意外な結果になったようです。
ターシャ・テューダーは、1972年、57歳の時にバーモント州に広大な土地を購入し、19世紀の開拓時代スタイルの生活を営みました。家には少数の家族と動物たち。庭の手入れと野菜つくり、ヤギやコーギーの世話をしつつ、アトリエで絵本を描き、絵本作家という仕事を通じて広い世界とかかわりを持つと言うスタイルでした。
完全に世間と断絶してしまうわけでもなく、かといって、喧騒の中に身をおくでもなく、好きなことを大切にするターシャのライフスタイルは、いまでも多くのファンに愛されています。
レシピには意外とライスを使ったメニューも多く、トマトライスやアップルライス、ニンジンライスなど、どれもターシャの庭で採れた果実や野菜を使った素朴な料理です。(ニンジンライスはうちでもよく作ります!)
けれども、ミートボールやミートパイなど、しっかりと肉を使ったおかずもあります。ターシャは家庭菜園と庭を大切にしてはいますが、菜食主義ではなかったようです。
お菓子のメニューは豊富で、バナナブレッドや、マフィン、ブラウニー、チョコレートケーキなど、どっしりとしたおいしそうなメニューが並びます。作り方はシンプルで素朴ですが、順番に作ってみたいものばかり。
最後はドリンクメニューと作り置き食材のレシピ。
けっして豪華ではないレシピ集ですが、何もかも手づくりの家でこれを作っていたのかと思うと、やはり感動します。
なんでも簡単に手に入る時代なだけに、たまにはこんなふうな、素朴な料理を作ってみたくなるのです。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
古きよきアメリカのお料理やお菓子のレシピ集です。各ページに使用されているイラストはすべてターシャの絵、そしてターシャの家で愛用していた調理器具や器、クロスなどを使用して撮影した写真もたっぷり。あたたかみのある装丁になっています。
眺めるだけでも楽しい本です。
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