【フェリックスとお金の秘密】児童小説で経済を学ぶ!子どもたちで会社をつくり、株式投資もしちゃう冒険小説【中学生以上】

2024年3月28日

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フェリックスとお金の秘密 ニコラス・ビーバー/著 天沼春樹/訳 徳間書店

12歳のフェリックスのパパは新聞社の経済部の記者だ。でも、パパとママは、いつもお金が無いと言ってけんかをしていた。「こんなのは嫌だ、ぼくはお金持ちになりたい!」。フェリックスは友達のペーターと会社をつくることにした……

この本のイメージ 会計☆☆☆☆☆ 投資☆☆☆☆☆ 大冒険☆☆☆☆☆

フェリックスとお金の秘密 ニコラス・ビーバー/著 天沼春樹/訳 徳間書店

<ニコラス・ビーバー>
1952年、ドイツのハンブルク生まれ。大学入試資格取得後、新聞社で実習生として働くうちに経済に関心を抱くようになり、フライブルク大学で経済学を学ぶ。地方紙や週間新聞で経済記者としてのキャリアを積み、1997年からはミュンヘンの「南ドイツ新聞」に転じ、99年から経済部長、2007年からはニューヨーク特派員。経済学の著作のかたわら、子どもたちのために『フェリックスとお金の秘密』を発表し、ヘルベルト・クヴァント=メディア賞を受賞

<天沼春樹>
1953年埼玉県川越市生まれ。中央大学大学院博士課程修了。中央大学文学部兼任講師。日本児童文芸家協会理事長。著書に『水に棲む猫』(パロル舎・日本児童文芸家協会賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

 ドイツからやってきた、経済をテーマにしたジュブナイル。原題はFELIX UND DAS LIEBE GELD. ドイツでの初版は2008年3月。日本での初版は2008年7月です。

 今年から日本での成人年齢が18歳に引き下げられました。成人というのは、一人の個人として自分の意思で契約をしたり、お金の運用をしたりできると言うことです。

 つまり、逆を言えば、詳しいことがわからずに契約してしまっても、「未成年だから無効」と言うことにならないのです。これは、わりと恐ろしいことです。

 日本では「お金は汚いもの」と言う風潮が強く、若いときからお金にガツガツして欲しくないと言う親心からお金についての教育を行いません。学校の「社会科」でも、あまりお金の仕組みを教えないため、社会に出てから苦労する人が多いのです。

 しかし、あやしげな金融商品やセールスの対象になりやすいのが、老人と成人したての若者なので、高校を卒業してから二十歳になるまでの「二年間の準備期間」のあったわたしたち世代に比べると、過酷な時代になったなあ、と感じます。

 そのようなわけで、成人直後にとんでもない苦労を背負わないためにも、経済のことをわかりやすく書いた児童書を定期的にご紹介しています。

 昔はこのような内容を教える高額のセミナーもあったりしましたから、本を読んで楽しく学べるならば、それがいちばん経済的です。

 今回のお話は……

 フェリックスは12歳。パパは新聞社の経済部の記者。ママは翻訳などのお仕事をしています。でも、おうちにはあまりお金が無く、パパとママは家計のやりくりでいつも喧嘩していました。

 頭にきたフェリックスは、親友のペーター、近所のジアンナとともに、商売をしてお金持ちになろうと決意します。三人で「小人のなんでもや&Co.」という会社を立ち上げ、芝刈りやパンの配達、ニワトリの飼育と卵の販売をはじめます。

 楽器屋のシュミッツさんと言う頼もしい大人の協力者も得て、「小人のなんでもや&Co.」は着実に売り上げを伸ばしてゆきますが、あるときシュミッツさんが仕入れた古いクラリネットから、大事件に巻き込まれてゆくのでした……

 ……と、いうのがあらすじ。

 前半は、フェリックスが友達どうしで「小人のなんでもや&Co.」と言う会社を立ち上げ、芝刈りやパンの配達、卵の販売など、自分たちにできるサービスを提供してお金を儲けるお話。小さなビジネスの立ち上げ、宣伝の仕方、独自性の出し方など、かなり専門的。
 要所要所で、簿記のつけ方など、シュミッツさんの解説が入ります。

 小さな会社の立ち上げ方、運営の仕方、と言う感じ。

 後半は、シュミッツさんの店に持ち込まれた古いクラリネットが発端で起きるサスペンス。子どもたちは、偶然にも大金を手にし、「投資」の世界に足を踏み入れます。そこで、いいことも悪いことも体験し、最後は大冒険の末、事件を解決する、と言うミステリー&サスペンスストーリー。

 かなり読み応えがある内容で、冒険小説としても面白く、そして事業の立ち上げ、運営、投資まで経済の解説もわかりやすく描かれています。

 「うわさのズッコケ株式会社」のより詳しい版と言った感じ。「うわさのズッコケ株式会社」では描かれていなかった、お金の「負の部分」もこちらではしっかり描かれています。

 順番としては「レモンをお金にかえる法」「うわさのズッコケ株式会社」「レモネード戦争」→「フェリックスとお金の秘密」の順番で読むとわかりやすいでしょう。

 この手の海外の物語ですごいな、と思うのは、子どもたちがちゃんと仕事をしてお金を手に入れて、それを活用するところで終わること。たいていの日本のお話は「お金を失う(または手放す)」ところで終わるのですが、そうはならないんですね。
 日本の場合は仏教的価値観なのだと思いますが、海外のジュブナイルでは「お金を儲けること自体」は否定していないので、そこは日本人のわたしには新鮮でした。

 後半では、ひょんなことから子どもたちは投資の世界に飛び込んでしまいますが、これもちゃんとしたいい投資を経験した後で、投資詐欺にもひっかかってしまい、投資の世界でも「何が良くて何がよくないか」をきちんと描いています。
 「投資なんて博打とおんなじだから、汚らわしい行為」と言うのではなく、「いいものと悪いものがある、それを見分ける力をつけることが大切」、と解説します。

 また、経済用語の解説も詳しく、経済用語がイタリア語由来が多いとはじめて知りました。ベニスの商人が起源なのですね。
 そこらへんは、イタリアにルーツを持つ女の子ジアンナが解説してくれると言うのも、わかりやすい。

 かなり分厚いですが、サスペンスストーリーを楽しみながら経済のことが理解できるようにつくられているので、読み物としても面白いのです。

 大人が読んでもわかりやすくて面白いので、親子で読むのにおすすめの本です。かなり詳細でしかも読みやすいので、「レモンをお金にかえる法」とあわせて教材になってもいいくらいです。

 文章量がかなりあり、それほど振り仮名も多くなく、そして後半は投資と投資詐欺の話になるため、中学生以上がおすすめ。けれどもフェリックスが12歳なことから、賢い子なら小学校高学年から読めるかも知れません。お子さまご本人が読めるなら早ければ早いほうがよく、大人でも勉強になることの多い内容です。

 メールが主流でまだまだSNSなどは盛んでなかった頃の物語なので、IT周りは少し古いのですが、しかし、面白い。こんなふうに知らないことを学べたら、楽しいですね。

 ハラハラドキドキの冒険小説を楽しみながら、経済も学べてしまう児童文学。
 お金のことを知りたいと思う、すべての方におすすめです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな描写はありません。安心してお読みいただけます。事業と投資についてわかりやすく解説しながら、冒険小説としても面白い、良質の児童文学です。
 投資詐欺の手口について詳しく書かれているので、注意喚起の意味でもおすすめの本です。

 

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