【なのだのノダちゃん】親友は吸血鬼?ふしぎな図書館に迷い込む第6巻【びっくり図書館】【小学校低学年以上】
サキが出会った女の子は吸血鬼ロムニア・クルトゥシュカラーチ・パパナッシュ17世。長くて覚えられないから、「ノダちゃん」って呼んでいます。今回は、ふしぎな図書館へ迷いこみ本の世界で大冒険!
この本のイメージ 怖くないオカルト☆☆☆☆☆ バンパイア☆☆☆☆☆ 本の世界☆☆☆☆☆
なのだのノダちゃん 6 びっくり図書館 如月かずさ/作 はたこうしろう/絵 小峰書店
<如月かずさ>
1983年、群馬県桐生市生まれ。「サナギの見る夢」(講談社)で第49回講談社児童文学新人賞佳作、「ミステリアス・セブンス―封印の七不思議」(岩崎書店)で第7回ジュニア冒険小説大賞、「カエルの歌姫」(講談社)で第45回日本児童文学者協会新人賞を受賞
<はたこうしろう>
1963年、兵庫県西宮市生まれ。絵本作家、イラストレーター。ブックデザインも数多く手がける。
自分のことを「わがはい」と言い、「~なのだ」と言うかわいいしゃべり方をする吸血鬼の女の子「ノダちゃん」と人間の女の子サキちゃんの、オカルトファンタジックコメディ第6巻です。初版は2022年。
一応、毎回一冊で完結の形を取っていますが、サキちゃんとノダちゃんの出会いから順番に読んだほうがわかりやすいため、まずは第1巻「ふしぎなコウモリガサ」からお読みください。
「なのだのノダちゃん ふしぎなコウモリガサ」のレビューはこちら↓
今回のお話は……
どうしても読みたかった本を探して図書館に来たサキちゃんとノダちゃん。本のあいだに挟まっていた、不思議なチラシを見てたどりついたのは、ひみつの司書室。
そこで、ふたりは司書みならいの司書子ちゃんと出会います。
司書子ちゃんは、一人前の司書になるべく修行中。恥ずかしがりやを克服して「おはなし会」ができるよう、練習していたのでした。
ノダちゃんのリクエストで司書子ちゃんは不思議なポケットから、「かいとうクロバット」と言う絵本を取り出し、ノダちゃんたちに読み聞かせしてくれました。
クロバットの大ファンになったノダちゃんとコウモリたち。さいごまで読んでしまうと、続きがないのが不満です。
ついには、クロバットシリーズの続きを自分たちで作ろうと思い立ち……
……と、いうのがあらすじ。
いつもの通り、三つのお話に分かれていますが、全体的に一つのストーリーになっています。
・ひみつの司書室
・Mの本には気をつけて
・まっくろおはなし会
の、三本。
今回の新キャラは、不思議な司書みならいの司書子ちゃん。欲しい本を取り出せる魔法のポケットがついたエプロンをしているかわいい女の子。
お話は、ファンタジックな展開のなかに図書館の使い方や司書のお仕事の詳しい説明が入っていて、お話を追っていると自然に図書館のことがよくわかるようなつくりになっています。
図書館は、その自治体で暮らしていれば、誰でも図書カードがつくれ、本を借りることができるすばらしい場所。小さな子どもから大人まで自由に好きな本を借りることができます。
学校の図書室は気軽に使える利点がありますが、あるのはほぼ子ども向けの本だけ。自治体の図書館は子どもでも大人の本を借りることができるし、大人でも子どもの本が借りられます。どんな本でも自由に読めるのです。これが図書館の魅力。
また、経済的に苦しい状況にある人が気軽に本を読める場所でもあります。
昔の児童文学を読むと頻繁に登場する、貧しい生まれながらお金持ちの子のお下がりの本や図書館で勉強しながら出世してゆくキャラクター。昔はよく聞く話でしたが、最近だってそんなふうに図書館を利用していけないわけがありません。
子どもだけでなく大人も、なんらかの事情で収入の道が閉ざされた時、図書館を利用して資格を取ったりスキルをつけたりすることで、困難な状況を脱出するチャンスをつかむことができます。
古書と図書館は、経済格差と教育格差を飛び越えることができる貴重な手段なのです。
それだけでなく、もちろん、図書館はただ純粋に「読書を楽しむ」ための場所でもあります。
図書館で大好きな本に出会ったら、今度は本屋さんに買いに行く。
小さな子どもは、図書館で本と出会い、人と出会い、「本を読む喜び」に出会います。
図書館は、子どもの「読書体験」の原点を育てる貴重な場所なのです。
最近は図書館の縮小や廃止、民営化などの話をよく聞きますが、図書館こそ社会に必要な場所。減らすどころか増やして欲しい、もっともっと増強して欲しい施設です。
ノダちゃんとコウモリたちは、図書館と司書子ちゃんのおかげで本を読む楽しさを知りました。そのうえ、サキちゃんと一緒に大好きな「かいとうクロバット」の続きの物語を作り「本を一冊作る」と言うかなり高度な楽しみ方ができるようになります。
ようするに、同人誌つくり。おおう、一気にヘビーな趣味に突っ込みました。
読む楽しみ、想像する楽しみ、作る楽しみ、書く楽しみ。
読書の楽しみを存分に味わってもらいたいという願いのこもったファンタジック・ストーリー。
「びっくり図書館」は「なのだのノダちゃん」シリーズの6冊目。いままでの5冊を読んでノダちゃんとサキちゃんの物語を楽しんできたなら、この6冊目できっと読書沼に引きずり込まれてしまうことでしょう。これはいい罠!
読書の秋、親子で図書館に行って面白そうな本をいっぱい借りてきてみましょう。ふだん読んだことがないジャンルの本をジャケ借りしてみても面白そう。
何を借りたらいいのかわからないときは、司書さんに相談してみると教えてくれます。司書子ちゃんのエプロンのような魔法のポケットはないけれど、司書さんの頭には魔法のポケットがあるのです。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はまったくありません。小学校低学年向けの、総ルビの楽しい小説です。字の大きな軽い小説を卒業して、少しボリュームのある小説を読み始めの頃の本です。三つの章に分かれているので読みやすいと思います。今回のお話では、図書館の役割と使い方について詳しく書かれており、読むともっともっと図書館を活用したくなります。
読後はトマトジュースでひと休み。
最近のコメント