【ミリーのすてきなぼうし】想像力が幸せをつくる! わたしだけの素敵な帽子【3歳 4歳 5歳】

2024年4月11日

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ミリーのすてきなぼうし きたむらさとし/作 BL出版

お気に入りの帽子がほしいミリー。でも、ミリーはお金を持っていません。でも、優しい帽子屋さんがミリーにとっておきの帽子をすすめてくれました。それは、ミリーだけの、特別な帽子。その帽子をかぶって街を歩くと……  

この本のイメージ 想像力の力☆☆☆☆☆ 幸せとは☆☆☆☆☆ 実はみんな持ってる☆☆☆☆☆

ミリーのすてきなぼうし きたむらさとし/作 BL出版

<きたむらさとし>
1956年 東京生まれ。1982年にイギリスで絵本作家としてデビューし、以来、イギリスを拠点に世界的に活躍。2009年に帰国し、現在は神戸市に在住。絵本作家、イラストレーターとして活躍。デビュー作「ぼくはおこった」(評論社)でイギリスの新人絵本画家に与えられるマザーグース賞を受賞。「ぼく ネコになる」、「おんちのイゴール」などの著書の他、「ふつうに学校にいくふつうの日」(小峰書店)では絵本日本賞翻訳絵本賞を受賞。 その他「ぞうのエルマー」シリーズの翻訳者としても知られる。

 2009年初版。どうやら小学二年生の教科書に採用されているようです。

 お話は……

 ミリーは帽子がほしくて帽子屋さんに行きました。
 羽のついた帽子がほしくなり、店長さんに「ください」と言いますが、なんと99999円!

 しかも、ミリーの財布はからっぽです。

 そこで、店長さんはミリーのために彼女だけの特別な帽子をすすめてくれました。

 店長さんがうやうやしく箱から取り出したその帽子は……

 店長さんがミリーにくれたのは「想像上の帽子」でした。
 科学的には何もない、でも想像の世界ではどんな形にもなる素敵な帽子です。

 ミリーはそれをかぶって、思いっきり素敵な帽子を次々と生み出しました。
 ケーキ屋さんの前を通り過ぎるとケーキの帽子、花屋さんの前では花いっぱいの帽子、公園では噴水の帽子……

 そのとき、ミリーは帽子をかぶっているのは自分だけではないと気がついたのです!

 ……と、いうのがあらすじ。

 「想像力が幸せを作る」と言うのは、名作児童文学「小公女」でも扱われたテーマです。どんなにめぐまれなくても、どんなにつらいときでも、想像力があれば乗り越えられるのです。
 想像力は、現実逃避に使うこともできるけれど、現実を切り開くために使うこともできます。

 また、自分より辛い状況にある人に「目に見えない何か」を与えることが何よりの思いやりになることもあります。
 想像力は人間が持つ、最大の財産です。

 むこうからやってきたおばあさんの帽子は暗くて寂しい水溜り。
 でも、ミリーが微笑みかけるとミリーの帽子から鳥や魚が飛び出しておばあさんの帽子に移りました。

 自分の帽子だけでなく、他人の帽子を素敵にする方法があるとミリーはそこで知るのでした。

 この「想像する喜び」を最初にミリーに与えてくれたのは帽子屋の店長さんでした。
 「金がないとは失礼な!出て行きなさい」と怒鳴ることもできたのに、何も入っていない帽子の箱をうやうやしく捧げ持ち、ミリーに「想像力の帽子」を売ってくれました。お代はミリーの想像上のお金です。

 それからしばらくはミリーは自分の想像力を使って素敵な帽子で遊びます。

 けれど、あるとき気がついたミリーはさみしそうなおばあさんに微笑みかけることで、おばあさんの帽子を素敵にしてあげるのでした。

 このあたり、「しあわせのバケツ」と通じるものがあります。(「しあわせのバケツ」はほんとうに素敵な絵本なのでどうぞ読んでみてくださいね!)

 現代の日本には過剰な努力神話があって、一人さみしくしている内気で内向的な子どもに対して「勇気をもって他人に接する」ことをあまりにも求めすぎているように思います。

 児童文学でも、キラキラとした明るく華やかなクラスメイトに必死に意気込んで話かけようとする内気な子という描写がよくあり、わたしのような年寄りは「そこまでがんばらないといけないのか」と思ってしまうほど。

 わたしたちの世代では、むしろ「寂しそうな人には声をかけてあげましょう」「困っている子は助けてあげましょう」と言う教育のほうが優勢だった気がします。今はどちらかと言うと、内向的な子に気持ちを奮い立たせることを要求することが多いような。(気のせいかもしれないけど)

 しかし、自分とまったく正反対のタイプの子にいきなり話かけるのは、内気な子には難易度が高すぎます。どうしたって自分より内気な子や自分より困っている子に話しかけるほうが楽のはず。それが内気で孤独な人ならなおさら。

 最初は一匹の捨て猫に優しくすることかもしれないし、鉢植えの植物に水をやることかもしれない。
 でも「自分でない何か」に優しくすると、相手の見えない帽子も素敵になって自分の帽子も素敵になる。

 そんなふうにしているうちに、自分の周囲の帽子がだんだん華やかになって、自分の世界も広がってゆきます。

 ミリーの素敵なところは、お金がないことやほしい帽子が買えないことで悲しんでしまわず、想像力で楽しみながら自分の世界を広げていったこと。
 その「楽しさ」は、見知らぬおばあさんも幸せにしたのです。

 「人生は修行」と言う人もいますが、歯を食いしばって苦しみに耐えなくても、「楽しさ」と「思いやり」だけで世界を変えてゆくことはできるかもしれません。想像力の力をうまく使うことができれば。

 文章は読みやすく、すべてひらがなとカタカナで書かれていますので、五十音が読めればひとりでコツコツ読みきることができますが、これはぜひ、読み聞かせで。

 「こんな帽子がほしいな」「こんな帽子はどう?」とおしゃべりしながら読むと楽しそうです。ま読後にはスケッチブックで自分だけの帽子を描いてみたくなるかも。

 かわいくて、癒されて、ちょっぴり哲学的なテーマもあります。
 ミリーは女の子ですが、帽子のデザインがダイナミックであまりにもゆかいなので、男の子女の子関係なく楽しめると思います。大人が読んでも癒される絵本です。

 この夏、あまりの暑さに力が出ないとき、絵本と想像力の力を借りてしまいましょう。
 きっと、心の底から不思議な元気がわきあがってくるはず。

 そして、あなたの心の帽子も素敵に育ててくださいね。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。楽しくてゆかいな絵本です。哲学的なテーマもあり、HSPHSCのほうが多くのメッセージを受け取れるでしょう。
 男の子でも女の子でも楽しめる絵本ですが、大人の和み本としてもおすすめです。元気が出ます。

 小さなお子さまへのプレゼントとしてご購入する場合は、「しあわせのバケツ」とセットにするのがおすすめです。

 

商品紹介ページはこちら

 

 

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