【魔女ののろいアメ】魔女から不思議なアメを買っちゃった!ドキドキ日常ファンタジー【小学校低学年以上】
「お姉ちゃんのばか!」。お姉ちゃんのぶんまで図書館で借りた本を返しに行く途中、サキは不思議なアメ屋さんに出会いました。魔女のアメ屋さんです。魔女は、サキに「のろいアメ」を売ってくれたのですが…… (魔女ののろいアメ 草野あきこ/作 ひがしちから/絵 PHP研究所)
この本のイメージ 日常ファンタジー☆☆☆☆☆ 魔女☆☆☆☆☆ ほのぼの☆☆☆☆☆
魔女ののろいアメ 草野あきこ/作 ひがしちから/絵 PHP研究所
<草野あきこ>
福岡女子短期大学音楽科卒業。第32回福島正実記念SF童話賞大賞受賞。「おばけ道、ただいま工事中!?」(岩崎書店)でデビュー。同作品で第49回日本児童文学者協会新人賞を受賞。「魔女ののろいアメ」(PHP研究所)で第65回青少年読書感想文全国コンクール課題図書。主な作品に「三年三組黒板の花太郎さん」(岩崎書店)、「魔女のいじわるラムネ」(PHP研究所)などがある。
<ひがしちから>
大分県生まれ。筑波大学芸術専門学群視覚伝達デザイン科卒業。2004年、第5 回ピンポイント絵本コンペで優秀賞を受賞。受賞作をもとにつくった「えんふねにのって」(BL出版)で、2006年に絵本作家デビュー。「魔女ののろいアメ」(PHP研究所)で第65回青少年読書感想文全国コンクール課題図書。主な作品に「ぼくのかえりみち」「いま、なんさい?」(以上、BL出版)、「ぼくひこうき」(ゴブリン書房)、「おじいちゃんのふね」(ブロンズ新社)、「おむかえ」(佼成出版社)などがある。
ハロウィンシーズンは毎年「魔女」ものや「魔法」ものを重点的にご紹介しています。
このブログは独断と偏見の趣味ブログで、もともとわたしはファンタジー好きなので、魔法ものジャンルに偏っています。ファンタジー以外にも児童文学には名作が多いのでそちらもご紹介すべきなのですが……この偏りが個人ブログの個性と思ってご容赦ください。
さてさて、本日ご紹介するのは子供向けのかわいいほのぼのファンタジー「魔女ののろいアメ」。初版は2018年です。
お話は……
「おねえちゃんなんか、だいきらい」。
サキはお姉ちゃんが借りた十冊の本と自分の借りた五冊の本をまとめて図書館に返しに行くはめになり、ぷんぷん怒っていました。
お姉ちゃんは友達のところへ遊びに行ってしまい、お母さんは図書館と反対方向へ買い物に行ってしまったからです。
サキが怒りながら歩いていると、不思議なアメ屋さんの屋台を見つけます。
それは、魔女のアメ屋さんでした。
魔女はサキに悪いお姉ちゃんを懲らしめる「魔女ののろいアメ」を売ってくれます。それは悪口を十回言うことで完成するのろいアメなのですが……
……と、言うのがあらすじ。
人間の感情とは不思議なもので、「好き」と「嫌い」、「善い」と「悪い」はいつも混ざり合っています。
好きの反対は「無関心」とよく言いますが、本当に本気で嫌いになると「嫌い」と言う感情も沸かなくなります。どうでもよくなるのです。
「嫌い」と言う感情があるうちは、相手に何かを期待しているのでしょうね。
あまり怒ったりしない人は優しい人であると同時に、もしかしたら日常で関心をむけることが少ない人なのかもしれません。
怒りっぽい人はそこだけ注目すると迷惑ですが、もしかしたら愛情深い人なのかもしれません。
神経質な人は繊細で感受性が鋭い、怒りっぽい人は情が深い、ドライな人は沈着冷静、頑固な人はブレない信念がある……
長所と短所はたいてい同じところにあるからです。
わたしはこれを「モノは言いよう」とは思いません。
詭弁やごまかしではなく人間とは、ものごととはそういうものだと思っています。善悪、好き嫌い、陰陽は裏表で、自分の都合のいいところだけを抜き取って付き合ったり利用したりはできないものなんじゃないかと思うのです。
サキちゃんは、いばりんぼうで怒りんぼうなお姉ちゃんが大嫌いでしたが、その一方でお姉ちゃんは自分のために怒ってくれたり心配してくれたりする愛情深いお姉ちゃんだと気がつきました。
さて、「魔女ののろいアメ」は完成したのでしょうか? サキちゃんとお姉ちゃんはどうなってしまうのでしょうか?
ラストはなんだかかわいいハッピーエンドです。
文章は平易で読みやすく、すべての漢字に振り仮名が振ってありますので、五十音が読めればひとり読みで読みきることができます。もちろん、読み聞かせにも。
だいたい「モンスター・ホテル」や「まじょのナニーさん」「チュウチュウ通り」「なんでも魔女商会」などと同じくらい、絵本を卒業してそろそろ長めの小説に挑戦し始めた頃におすすめの物語です。
すべての見開きにひがしちから先生の挿絵が入っており、所々フルカラーの絵も。
魔女のおばあさんは不気味なのに愛嬌があり、サキちゃんとお姉ちゃんはほのぼのとした温かみのある筆致で描かれており、不器用だけど深い姉妹愛が心に沁みます。
ゆかいで楽しくて、ちょっぴりノスタルジックで人情深い。
気軽に読めるお話でありながら、姉妹が抱く複雑な感情や小学生の年頃のありがちな悩みに寄り添う物語でもあり、小さなお子さまの感受性に響く心あたたまるファンタジーです。
ハロウィンシーズンの親子読書にぜひどうぞ!
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
「のろい」なんて怖いタイトルですが、怖いところはありません。
小さな子どもの複雑で繊細な気持ちを掘り下げ、ほのぼのとした絵と文章で筆致で描いています。家族の存在を再確認できる物語です。
サキちゃんの悩みは男の子にもあるものなので、性別関係なく楽しむことができるでしょう。
読後は紅茶とキャンディーでティータイムを。
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