【モンスター・ホテル】不思議でゆかいな、怪奇ホテルでのバースデーパーティ【モンスター・ホテルでおめでとう】【小学校低学年以上】
タイチは、今日が自分の誕生日なのに、すっかり忘れてしまっているお父さんとお母さんに腹を立てて、郵便局で働いているおじいちゃんのところへ訪ねて行くことにしました。ところが、この郵便局の隣には、不思議なビルがあったのです……
この本のイメージ 楽しい☆☆☆☆☆ 愉快☆☆☆☆☆ 怖くないオカルト☆☆☆☆☆
モンスター・ホテルでおめでとう 柏葉幸子/作 高畠純/絵 小峰書店
<柏葉幸子>
日本の児童文学作家。岩手県宮古市生まれ、花巻市出身、盛岡市在住。東北薬科大学(現:東北医科薬科大学)卒業。本業は薬剤師。
大学在学中の1974年、『気ちがい通りのリナ』が第15回講談社児童文学新人賞に入選しデビューする。翌年『霧のむこうのふしぎな町』と改題し刊行。
「霧の向こうのふしぎな町」の柏葉幸子先生のこども用絵本です。低年齢向けですが、それなりに文章のボリュームはあります。字は大きくて、対象としてはだいたい小学生低学年から。読み聞かせなら幼稚園からでも大丈夫です。挿絵は白黒ですが、ふんだんに入っていて、とぼけた感じがかわいい。
郵便局の隣には空きビルがあります。郵便局で働いているおじいちゃんに会いに来たタイチは、その空きビルに奇妙な人たちが出入りしているのを見つけます。こっそり入っていったタイチ。そこで見たものは……
そこは、妖怪たちが集まる「モンスター・ホテル」だったのです!
今日は、悪魔一族の最長老、デモンさんの1993歳の誕生日。みんながデモンさんの誕生日を祝うために集まってきます。
いったい、どんなバースデーパーティーになるのでしょう?
と、言うのがあらすじ。
もうね、モンスターたちが、いい奴ばっかりなんですよ。
紛れ込んできたタイチくんに、みんなやさしいのです。近所にこんなゆかいなホテルがあったら、絶対行ってみたいよね!という楽しいオカルトファンタジー。
小さい子供向けのこうしたファンタジーには意味があって、小さい子供が本能的に怖がる暗闇や、悪魔、おばけ、妖怪たちがみんなユーモラスでゆかいなキャラクターとして登場しますので、夜やおばけを怖がらないようになるかもしれません。
柏葉先生の描く、現実と非現実が隣り合わせになった独特の雰囲気が大好きです。あの角を曲がったら異世界に行くのかな、と言うくらいのご近所感覚。でも、木でも花でも、空き地でも空きビルでも、そこに不思議な世界とのつながりがあると感じられたら、日常がどんどん楽しくなるに違いありません。
この想像の世界との「地続き感」が柏葉作品の魅力なのです。
こっちの世界に日常生活があるのは当然だけど、あっちの世界にももちろん、日常生活があるんだよ、と言う感じ。そして、「向こう側」の「日常」が、ときどき「こちら側」の「日常」と交じり合う。でも、どちらもとことん「日常」なんですよ。
そして、そのふたつが出会い、交じり合っても、どこまでもやさしい。ただ「不思議な」だけで。
知らないことと不思議なこと、違うこと、それらが全部「怖い」ことではなく、「楽しい」事になってゆく。
そんな、たくさんの「心の予防接種」の力が、本にはあります。
このゆかいなバースデーパーティーにどうぞご参加ください。ハッピーバースデー!
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はありません。子どもにとって「怖い」存在が、みんなかわいくて愉快な友達として登場します。小さなお子様へのお誕生日プレゼントに最適です。もちろん、読み聞かせしてあげてください。
大人が読んでもなごむ物語です。
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