【すばらしい季節】季節のうつろいを五感を通じて描く、ターシャ・テューダーの美しい絵本。【子どもから大人まで】

2024年4月13日

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すばらしい季節 ターシャ・テューダー/作 末盛千枝子/訳 現代企画室

サリーは農場に住んでいる女の子です。季節が移り変わるとき、彼女は自分の身体を全部使って、思い切りそれを確かめます。これはそんな小さな女の子とアメリカの四季の物語。

この本のイメージ 古き良きアメリカ☆☆☆☆☆ 美しいイラスト☆☆☆☆☆ アメリカの四季☆☆☆☆☆

すばらしい季節 ターシャ・テューダー/作 末盛千枝子/訳 現代企画室

<ターシャ・テューダー>
(Tasha Tudor / 1915-2008)
1915 年米国ボストン生まれ。23 歳で絵本作家としてデビューして以来、一貫して自然と古き良き時代を描きつづけ、100 冊を越える絵本が出版されている。1946 年に発表した「1 is One」でコールデコット賞を受賞。アメリカでターシャ・テューダーといえば知らない人はいないくらい大きな存在で、彼女の絵は「アメリカ人の心を表現する」絵と言われている。57 歳のとき、思う存分庭造りをするため、バーモント州に移り住み、自給自足の一人暮らしを始める。ターシャが育んだ美しい庭は、究極のナチュラルガーデンとして世界中のガーデナーの憧れとなる。日本でも「ターシャの庭」「ターシャ・テューダーの言葉」三部作(メディアファクトリー)など、そのライフスタイルは数多くの本で紹介され、ターシャの暮らしを1 年にわたって追ったNHK のドキュメンタリーが放映されるなど、広大な庭で季節の花々を育てるタシャのスローライフは大きな注目を集めた。

<末盛千枝子>
1941 年、彫刻家・舟越保武の長女として東京に生まれる。絵本の編集者を経て、1988年すえもりブックスを設立。以後、ターシャ・テューダー、ゴフスタインの絵本、美智子皇后の講演録などを出版。2002 年~06 年までIBBY 国際理事をつとめる。2010年「人生に大切なことはすべて絵本から教わった」を刊行後、岩手県八幡平市に移住し、株式会社すえもりブックスを閉鎖。2011 年3 月「3.11 絵本プロジェクトいわて」を立ち上げる。2012 年より、現代企画室よりシリーズ「末盛千枝子ブックス」がスタート。

 原題はFirst Delight.アメリカでの初版は1966年。日本語版はリブロポート版が1993年、現代企画室版が2014年です。
 このブログでは定期的にアメリカの絵本作家、ターシャ・テューダーの絵本とライフスタイルをご紹介しています。
 ターシャ・テューダーはアメリカの絵本作家、人形作家、ガーデナーです。

 彼女は、バーモント州の山の中に東京ドームくらいの広さの土地を購入し、そこに19世紀ふうの家を建て、庭を作り、ヤギやコーギー犬を飼い、自給自足の生活をしていました。

 山の中で世捨て人のように生活していたターシャですが、大切な友人たちと家族たちとは深い交流を続け、手作りのクリスマスカードやプレゼント、四季折々のイベントや誕生会などを大切にし、庭の花を飾り、庭の果物で作ったパイやジャムなどをふるまい、畑で育てた野菜で料理を楽しみました。

 便利な電化製品を使わず、料理はすべて古いキッチンで行い、プレゼントも手編みのセーターや手作りの小物など……彼女の生き方は徹底していました。

 とはいえ、友達や親戚を宿泊させる客間には電気は通していたようで、必要最低限の設備はあったようです。電話とかないと困りますしね。

 それにしても、思い切ったことをしたものです。
 便利な現代生活を捨てられないわたしには考えられません。しかし、彼女の生き方からは多くの学びが得られます。
 ここまでのことはできないまでも、もしかしたら自分の人生にはもっと大切にするべきものやこと、そして実は必要そうで不要なものがあるのではないかと、足元を確認したくなります。

 ターシャ・テューダーはガーデナーとしても型破りで、彼女の美しい庭には規格化された美と言うものがありません。すべての花々が自由気ままに野生の植物のように咲き誇っている、生命力にあふれた庭なのです。

 バラの木にクレマチスがからみついたり、クロッカスやチューリップが何百と群生していたりと、まったく「きちんとしていない」庭なのに荒々しい美にあふれています。

 ターシャ・テューダーの独特のライフスタイルとこの何にも似ていない「ターシャ風」の庭は、今まで多くの人々の心をとらえてきました。

 「いくつになっても、やりたいことをやっていい」。そんなことを教えてくれるのがターシャの生き方です。
 事実、ターシャがバーモントに土地を買い、この生活を始めたのは56歳のときだと言います。そして、彼女の理想の生き方を貫き、92歳まで生きました。

 何度も強調しているのですが、彼女はベジタリアンではありません。自給自足のスローライフ、と言うとベジタリアンだと誤解されがちですが、彼女は自分が育てたヤギのミルクを常飲していましたし、卵料理、肉料理も楽しんでいました。
 クリスマスには七面鳥やローストビーフもふるまったようです。
 もちろん、ジャムやパイ、ケーキなどの甘いものも楽しんでいました。

 ターシャは、政治や思想などとはまったく関係なく、ただ自分の好きな生き方を貫いた人でした。しかしながら、自分は薪ストーブで生活しても客間には電気を通すなど、自分のやり方を他人に押し付けないバランス感覚もありました。
 そして、完全に外の世界を遮断するのではなく、絵本作家としてつねに社会との接点は持ち続けました。
 そのようなところも、ターシャの魅力です。

 現代の便利なテクノロジーに頼りきっているわたしがターシャ・テューダーのように生きることはできませんが、彼女の生き方からは多くのヒントと励ましがもらえます。

 他人と同じように生きなくてもいいこと、「好き」を貫いてもいいこと、むやみやたらに大勢の人とつきあわなくてもいいこと(ターシャは大勢の人の集まりに疲れたら「ヤギの乳搾りがあるので」と言って中座して帰ったそうです)、他人が素晴らしいと思うことに共感できなくてもいいこと、自分だけの「美」を大切にして生きていいこと……

 今回ご紹介する「すばらしい季節」は、そんなターシャが小さな女の子サリーを通してアメリカの四季を描いた絵本です。

 農場の女の子サリーは、季節のうつろいを五感すべてを使って感じます。
 クロッカスを見つけて春の訪れを知ったサリーは小鳥の歌や小川の音を聞き、水仙の花の香りをかぎます。
 夏には干草つくりを眺め、野ばらの香りを嗅ぎ、子犬と遊び、野いちごを味わいます。
 秋には、赤い葉っぱが飛んでゆくのを眺め、渡り鳥を見送りどんぐりを拾い、りんごを食べます。
 冬には雪を楽しみ、そりの音を聞き、冷たい空気と薪の燃えるにおいを感じ、そしてクリスマスを楽しむ……

 サリーのあどけないしぐさが愛らしく、読んでいるだけで音やにおい、味が感じられるような絵の数々です。
 きっとターシャはこんなふうに生活していたのでしょう。大人になっても、年老いても。

 忙しい現代社会で生きていると、風の温かさや花のにおい、鳥のさえずりなど気がつかないで行過ぎてしまいます。
 けれど、五感をこらしているとそんな忙しい日々のなかにも美しいものや愛らしいものはたくさんあります。

 ターシャの絵本は、擦り切れて逆立っている現代人の神経を穏やかになだめてくれ、癒してくれ、そして和ませてくれます。
 人気のお店に行けなくても、高いお洋服が買えなくても、今日のメイクが決まらなくても……

 道端の花がけなげに咲いていたり、街路樹が風に揺れていたり、青い空に白い雲が浮かんでいるのを見上げたり……お気に入りのフレーバーの飲み物を公園のベンチでゆっくりゆっくり飲んで深呼吸しているだけで、サリーのような喜びを感じられるかもしれません。

 文章はそれほど多くなく、平易な文なのですが、振り仮名が足りないのでこれは大人の和みとしての絵本なのかも。
 けれど、文章はそれほど多くはないのでお子さまに読ませてあげたいとお思いの場合は、ふりがなを書いてあげてくださいね。読み聞かせにもおすすめです。

 「すばらしい季節」は小さなお弁当箱にサンドイッチを詰めて、公園などでひとりピクニックをしながら読みたい絵本です。

 がんばりすぎて疲れているあなたに。
 心の栄養に美しい絵本をぜひどうぞ!

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はまったくありません。HSPHSCの方のほうがより多くのメッセージを受け取れるでしょう。
 ターシャ・テューダーのファンのためのコレクションアイテムとしておすすめです。振り仮名がありませんが、文章の量は少ないので、お子さま用の場合は保護者の方が振り仮名を書いてあげてくださいね。

 身近な生活の中の音やにおい、色彩や味を再確認できる絵本です。

 

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