【魔女バジル】がんばりやの魔女の第三の試練。人のためになる黒い魔法とは?【小学校低学年以上】

2024年3月7日

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魔女バジルと黒い魔法   茂市久美子/作 よしざわけいこ/絵 講談社

バジルはまだまだ駆け出しの魔女。彼女は、人に「努力」と「根気」の力を送ることができるのです。ある日、バジルの机の上に、不思議な詩の書いた手紙の入った封筒がありました。それは黒い魔法にかかわるもので……

この本のイメージ 魔女☆☆☆☆☆ 友情☆☆☆☆☆ 母の愛☆☆☆☆☆

魔女バジルと黒い魔法   茂市久美子/作 よしざわけいこ/絵 講談社

<茂市久美子> 岩手県生まれ。会社勤務をへて執筆活動に入り、「おちばおちばとんでいけ」で、ひろすけ童話賞受賞。ほかの作品に「ゆうすげ村の小さな旅館」「おいなり山のひみつ」「つるばら村シリーズ」など。

<よしざわけいこ>
東京都生まれ。多摩美術大学染色デザイン科卒業。テキスタイルデザインをへて、絵本・イラスト・童話を中心に活動中。1985年、KFSアートコンテスト特別賞受賞。2001年、初の絵本作品『ライオンは そよかぜの なかで』は、ブラティスラヴァ世界絵本原画展に出品。

 

 魔女バジルシリーズ3巻目は、バジルが黒い魔法を手に入れるお話です。

 この世界の魔女は、人に見えない力を送ることができて一人前とされています。

 たとえば「幸運」とか「希望」「健康」「才能」「勇気」など。

 バジルの力は、「根気」と「努力」と言う、ちょっと地味なもの。だから、あんまり人気がありません。けれど、大魔女たちは、バジルに大きな期待をかけていたのです。

 そんなある日、バジルの家の台所のテーブルの上に不思議な手紙がおいてありました。
 そこには、詩のようなものが書かれており、ブルームーンの日に、ある魔女が黒い魔法を手に入れるとあります。
 さて、黒い魔法とは、どんな魔法なのでしょうか。

 「幸運」「才能」などの、多くの人から愛される白い魔法と違って、黒い魔法は「失敗」や「挫折」と言った、あまり好かれないものでした。だから、そんなものを使うなんて、と魔女たちも黒い魔法は避けていたのです。

ところが、バジルはどういうわけか、この黒い魔法に呼ばれるように導かれてしまい……

 と、言うのが今回のお話。

 おっとりしていて、大人しいバジルですが、努力の魔女にふさわしく、こつこつと物事をやりとげる性格です。そして、それだけに、いざというときには勇気があり、困難からも逃げません。

 今回、バジルは三番目の魔法を手に入れることになります。
 三番目は、黒い魔法。でも、努力や根気があれば乗り越えられるし、ある意味、人間には必要なものなのです。

 ほら「買ってでもしろ」と言うアレ

 しかし、人にとってとても大切で必要なものだとわかっていても、バジルは嫌われたり避けられたりします。
そのつらさを「努力」と「根気」の魔女らしく、ぐっと我慢して受け止めてゆきます。

 わたしは、魔女バジルのシリーズは、この三冊目がいちばん好きです。
 それは、ようやくバジルの力を必要としてくれる人が現れるからなのです。

 いままで、バジルは一人前の立派な魔女になるべく、ただただ、ひたすらに頑張ってきました。支えてくれる友達や、期待をかけてくれる大魔女様はいるけれども、それが本当に正しいことなのか、ちゃんと前にすすんでいるのか、バジル自身ももどかしい、手探りの状態だったと思います。

 けれども、今回のお話ではじめて、バジルの力を必要としてくれ、「魔法をかけてくれ」と言ってくれる、ふつうの人が現れました。

 魔女は、人を助ける存在。助ける人がいてこその魔法だと思います。七魔ヶ山で魔女たちどうし、支えあって学びあって生きている魔女たちですが、魔女たちだけで生きてゆくなら、逆に大層な魔法なんていらないし学ぶ必要もないはず。

 だから、バジルが人から「魔法をかけてほしい」と頼まれるのは、立派な魔女になりたい彼女にとって特別な出来事だったはずです。

 ただの読者ですが、バジルの苦労が報われた気がして、ちょっとじーんとしてしまいました。

 ほのぼのとした、ふんわりした挿絵がぴったりの、心優しい魔女たちのファンタジーです。地味だけど、人生にとって大切なことも書かれています。
 キャラクターの名前が全部ハーブの名前なので、「これはどんな植物かな」とかあとで調べるのも楽しそう。

 全体的には長いお話ですが、短い章にわかれているし、平易な文章で難しい漢字には振り仮名がふってありますので、コツコツ読めば、小学校低学年から読めると思います。

 内向的でファンタジー好きなお子さまにおすすめです。

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 ネガティブなシーンはとくにありません。あたたかくやさしいファンタジーです。今回は、悪者と戦うシーンもなく、バジルが純粋に自分の強さを見つけ出してゆくお話です。はじめてハッキリと他人から認められるお話でもあるので、さわやかな読後感です。

 バジルの作る木苺のケーキがとてもおいしそうなので、読後は、熱々のお茶と、ラズベリージャムとパウンドケーキをご用意ください。ラズベリージャムとプレーンなパウンドケーキは、すごく合うんですよ!

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