【暴力は絶対だめ!】1978年、アストリッド・リンドグレーンの伝説のスピーチ。「平和」を考える小さな本【小学校中学年以上】【子どもから大人まで】

2024年3月25日

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暴力は絶対だめ! アストリッド・リンドグレーン 石井登志子/訳 岩波書店

「子どものしつけに暴力はいらない」━━1978年、ドイツ書店協会平和賞の授賞式で、児童文学作家アストリッド・リンドグレーンは力強く訴えました。この小さな本は、そのスピーチを後世に残すべく出版されたものです。

この本のイメージ リンドグレーンのスピーチ☆☆☆☆☆ NO体罰☆☆☆☆☆ 歴史資料☆☆☆☆☆

暴力は絶対だめ! アストリッド・リンドグレーン 石井登志子/訳 岩波書店

<アストリッド・リンドグレーン> 
スウェーデン生まれ。小学校の先生や事務員をしながら数多くの作品を発表し続けた。国際アンデルセン賞受賞。作品に「長くつ下のピッピ」など。

 これは、物語ではありません。
 1978年、アストリッド・リンドグレーンがドイツ書店協会平和賞の授賞式で行ったスピーチを小さな本にまとめたものです。原題は、Aldrig våld!. スウェーデンでの初版は1978年。日本での初版は2015年です。最近ですね。

 ハードカバーの小さい、薄い本で、スピーチ部分は18ページ、あとは解説で成り立っています。

 令和の今、学校であれ、家庭であれ、子どもの教育に体罰を用いることは少なくなっていると思います。しかし、かつては、それは日常的に行われていました。

 海外では、子どものしつけに「鞭」を使う文化がありました。発破をかけたり、気合を入れたりするときの表現として「鞭をいれる」とか言いますが、本当にそういう時代があったのです。

 日本でも、かつては「鉄拳制裁」が日常的に行われていた時代がありました。

 リンドグレーンは、その時代に「体罰反対」を訴えた児童文学作家です。

 いまでこそ、「体罰はよくない」と言う認識が一般的ですが、かつては、それは斬新な意見でした。その時代に、確固たる信念をもって体罰に反対したリンドグレーン。

 リンドグレーンのスピーチは、かなり衝撃的な出だしです。

 「平和について話をするということは、存在しない何かについて話すということです。」(引用p11)

 このスピーチはドイツ書店協会平和賞の授賞式のスピーチです。そこでは、いままで多くの人々が平和について語ってきたはずでした。その場所で、リンドグレーンはこういう切り出しで話し始めました。

 「結局、人類が何千年にもわたって戦争をしてきたということは、絶えず暴力に訴えてきたということですから、わたくしたち人間の本質に何か設計ミスがあるのではないかと、自分自身に問うべきではないでしょうか? わたくしたちは生まれもった攻撃性のために、絶滅することを運命づけられているのでしょうか? わたくしたちはみんな平和を望んでいます。 手遅れになる前に、人間が生まれ変わることはできないのでしょうか? 暴力と縁を切ることを学べないのでしょうか? ごく単純に新しい人間になれるようにがんばってみるのです。そのためには、どのようにすればいいのでしょう? いったいどこから手をつければいいのでしょう?」(引用p13)

 リンドグレーンがたどり着いたのが、「子どもの教育に体罰を用いないこと」でした。

 つまり、体罰で育てられた子どもは、結果的に「問題解決に暴力を用いる」ことが正しいとおぼえてしまうから。「暴力以外の方法で問題を解決することができる」ことを子どもに教えるためにも、体罰のない教育が必要だ、と言うのが、リンドグレーンの主張です。

 もしかしたら、今こそ、この問題について、個人個人がもっと深く向き合わねばならないのかもしれません。

 今、最も平和が望まれている時です。

 とはいえ、「体罰のない教育で、本当に世界平和がもたらされるのか」と言う問いについては、リンドグレーン自身も「こうだから、きっと解決できる」と断言しているわけではないのです。

 しかし、「やってみる価値はある」と言うのが、彼女の主張です。

 つまり「トラブルにさいして暴力以外の解決方法を探す」ことを、まずは家庭から、親子の間からはじめてみようと言う提言です。それによって、今現在すぐに世界に平和をもたらすことができなくても、遠い未来が変わってくるだろう、変わって欲しい、という願いなのです。

 リンドグレーンは、種を蒔こうとしました。それが人の心に芽吹いて、それぞれの家庭で何かが育って、それが最終的になんらかの結果になるまで、長い長い時間が必要でした。

 しかし、令和の今、幸いにして体罰は教育の現場から主流ではなくなっています。少なくとも日本では。
 そして、率直に言って、日本は世界的にも珍しいくらいの平和的で、のどかな国です。激しい天変地異に見舞われたときも、びっくりするほど冷静かつ穏やかに、助け合いながら困難に立ち向かった姿は、海外に衝撃を与えました。

 困難に見舞われたとき、まず暴力以外の解決方法を探すことが、そのために知恵と能力を総動員することが反射的にできるような、そんな社会になれば、急激ではなくても、だんだんと世界は変わってゆくのかもしれません。

 リンドグレーンのスピーチから44年。まだまだ人類は道半ばです。
 わたしたちは、リンドグレーンが夢見た未来へとたどりつけるのでしょうか。

※この本は電子書籍もあります。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 物語の本ではありません。
 人が争うとき、どうして手っ取り早い解決方法として「暴力」と言う手段を使ってしまうのか、それを無くしてゆくためにはどうすればいいのか、児童文学作家アストリッド・リンドグレーンが考え抜いた末に出した結論を訴えた、熱いスピーチです。

 もしかしたら、HSPやHSCのほうが、多くのメッセージを受け取れるかもしれません。ごく短いスピーチですので、ボリュームとしては少なく、薄い本ですが、熱い情熱にあふれています。

 44年経って、人間はどれだけ進歩できたのでしょうか。

 

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