【なかなおりの魔法】中国からやってきた不思議なファンタジー。少女たちの友情物語【トゥートゥルとふしぎな友だち】【小学校低学年以上】

2024年3月25日

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真夜中の妖精 トゥートゥルとふしぎな友だち 湯湯/作 高野素子/訳 平澤朋子/絵 あかね書房

小学生になったトゥートゥル。仲良しの4人の友だちと些細なことで仲たがいしてしまいます。そのとき出会った不思議なおじいさん、プゥじいさん。プゥじいさんの言うとおりに木炭で4人の顔を描くと……

この本のイメージ 中国ファンタジー☆☆☆☆☆ 世にも奇妙な?☆☆☆☆☆ 女の子の友情☆☆☆

なかなおりの魔法 トゥートゥルとふしぎな友だち 湯湯/作 高野素子/訳 平澤朋子/絵 あかね書房

<湯湯>
1977年中国浙江省武義生まれ。自然豊かな故郷で育ち、小学校教師を経て児童文学作家に

<高野素子>
1959年大阪府生まれ。1984~1987年上海の復旦大学に留学。日中児童文学美術交流センター、中国児童文学研究会会員。おもに「虹の図書室」(日中児童文学美術交流センター)に翻訳を発表

<平澤朋子>
1982年東京都生まれ。武蔵野美術大学卒業。

<今日はちょっぴり冒頭でスケートトーク。不要な方はスクロールしてね>

 フィギュアスケートの世界選手権がはじまりました。 とはいえ、ロシアはドーピング事件とその後の動乱で出場できず、中国も選手を派遣していないので、普段に比べると、異質な雰囲気のする大会です。
 しかし、日本選手は健闘していますので、活躍が楽しみですね。

 ペアの「りくりゅう」こと三浦璃来・木原龍一組の躍進が期待されています。しみじみとした情感をこめた美しい演技は、オリンピックでもたくさんのファンを作りました。

 ショートプログラムでは3位。PCSと言う、いわば芸術点のようなものが、今回1位でした。これは、実績点のような側面もあって、あまり新しい選手には高い得点がもらえないので、快挙です。

 これは、ふたりの実力はもちろんですが、先日の北京オリンピックで金メダルを獲得した、スイハンこと隋 文静・韓聰組(ウェンジン・スイ、ツォン・ハン ぐみ)のウェンジン・スイ選手が記者会見のさい、三浦璃来選手のことを「妹」と言ってくれたことも影響している気がします。(個人の感想です)(スイ選手ありがとう。現役続行はうれしいニュース)

 フィギュアスケートの世界では、国境を越えて心の交流があるのが魅力で、いつも試合後のインタビューやエキシビジョンでのほほえましい姿に、幸せをもらっていました。

 そんなこともあって、逆に最近の世界的な動乱には胸が締め付けられる想いです。日本でも、多くの人が胸を痛め、それぞれが悩んだ末、いがみ合うようなこともおきているので、辛い気持ちになることもあります。「戦争反対」のスローガンのもとに破壊的なことが行われることもあり、世の中の難しさを感じてしまいます。

 ノーベル平和賞を受賞した、カトリックの聖人でもあるマザー・テレサの名言に「わたしは反戦集会には行かないけれど、平和集会には行きます」と言うものがあります。

 以前は、ピンと来ない言葉ではあったのですが、こんな事態になると、しみじみとこの言葉の意味を噛み締めるようになりました。そう、反戦運動と平和主義は似ているようでちがいますよね。

 オリンピックのエキシビジョンのときのような美しく平和な時が、ふたたび戻ってくるように祈るばかりです。

 さて、本日ご紹介するのは、中国からやってきた、ほのぼのファンタジー、「トゥートゥルとふしぎな友だち」シリーズの第2巻です。本国初版は2017年。原題は「老蒲」。日本での初版は2019年です。

  じゃがいも、と言う意味の名前、トゥートゥルという女の子が出会う、不思議なお話のシリーズ。
 一話完結の形をとっていますが、トゥートゥルの生い立ちなど、基本設定を知っていたほうが楽しめますので、まずは、第一巻である「真夜中の妖精」からお読みください

 「真夜中の妖精」のレビューはこちら

 このトゥートゥルのシリーズは、中国の田舎の素朴な暮らしや、小さな子どもたちの日常を描きつつ、日本の民話にも似た怪異物語に仕上げています。ちょっぴり怖いところもありますが、基本的にほのぼのとしたハッピーエンド。

 日本人にとっては、中国のファンタジーと言えば、「西遊記」くらいしか知らないので、とても新鮮な気持ちになると思います。

 ストーリーは……

 小学生のトゥートゥルは、あるとき、仲良しの友達四人と仲たがいしてしまいます。ひとりぼっちにされて怒ったトゥートゥルに、不思議な不思議な「プゥじいさん」が声をかけ、奇妙な「仕返し」の方法を授けるのでした。

 それは、プゥじいさんのくれた木炭で三人の似顔絵を描き、その顔にいたずら書きをすること。「描いたとおりになるよ」とおじいさんは言います。

 半信半疑でおじいさんの言うとおりにしたトゥートゥルでしたが、その結果、お友達四人は、ひどい目に遭ってしまいます。

 後悔したトゥートゥルは、四人を助ける方法をプゥじいさんに聞きますが、それは、大きな代償を支払うものでした……

 ……と、いうのがあらすじ。

 わたしは、女の子の友情ものが大好き。

 よく、学校や職場で、女同士のもめごとがあると「女の敵は女」と言われたりします。
 しかし、女性が女性に対して競争意識を持ったり対立したりするのは、「女だから」ではなく裏に別の事情が絡んでいて、それを女同士の争いにされているケースも多いのです。また、昔から女同士がいがみあうテレビドラマなどが多いので、環境からの洗脳もあるのかもしれません。

 だって、昔から漫画やアニメ、ファンタジー小説などが好きな女の子同士の友情は熱かったんですよ。まあ、ただ、BLのカップリングや解釈違いでは血で血を洗う抗争が起きたりはしますがね。 嘘です、抗争はしません。でもたまに、海より深い溝ができたりすることはある。(←そんな事でもめるなよ……)。

 これは、些細なことでいがみあってしまった仲良し五人組の女の子が、プゥじいさんという仙人に出会って不思議な体験をし、友情を深め合う物語です。女の子たちのもめ方は、わりとよくある感じなのですが、トゥートゥルをはじめとして五人の女の子たちの友情が、とても熱く、情が深いのに魅力を感じます。

 わたしは、自分自身が日本人にしてはかなり情が濃いほうだと自覚しています。気をつけてはいるんですが、ちょっと暑苦しいんですよ。
 でも、だからと言いますか、トゥートゥルたち、中国の少女たちの情の濃さ、熱い友情にはとても共感できるところがあります。これは、ちょっとドライになっている現代の日本の女の子には新鮮かもしれません。

 ラストは、現実のような現実ではないような……「胡蝶の夢」を思わせるような結末。ショートショートのようで、ちょっとかっこいい終わり方です。

 字はほどよい大きさで、文章は平易で読みやすいので、小学校低学年からおすすめのファンタジーですが、振り仮名がそんなに手厚くないので、保護者の方が振り仮名を追加してあげるとよいと思います。まずは、読み聞かせから。

 大人が読んでも、癒される物語です。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 王道の友情物語です。女の子の友情ものが好きな方にはおすすめです。
 HSCのお子さまのほうが多くのことを読み取れるでしょう。小学校低学年向けですが、ちょっと振り仮名が足りない気がするので、難しい字の振り仮名は、保護者の方が追加してあげてください。最初は読み聞かせのほうがいいかもしれません。
 オカルト風味のファンタジーですが、ほのぼのとしていて、人情にあふれています。

 読後は、肉まん、あんまんと中国茶でひとやすみしましょう。

 

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