【野ばらの村のひみつのへや】野ねずみたちの、愛らしい日常をえがく冬のファンタジー。愛されるロングセラー【アドベンチャーシリーズ】【小学校低学年以上】

2024年4月6日

広告

野ばらの村のひみつのへや   ジル・バークレム/作 こみやゆう/訳 出版ワークス

もうすぐ冬至。野ばらの村のねずみたちは、カシの木やかたで行われる冬至まつりの準備で大忙し。お祭りで出し物をする予定のプリムローズとウィルフレッドはカシの木やかたで秘密の階段をみつけます。そのさきにあったものとは……

この本のイメージ 動物ファンタジー☆☆☆☆☆ 美しい絵☆☆☆☆☆ 冬のファンタジー☆☆☆☆☆

野ばらの村のひみつのへや   ジル・バークレム/作 こみやゆう/訳 出版ワークス

<ジル・バークレム>
1951年にロンドン郊外にあるエピングの森の近くで生まれた。ロンドンのセント・マーチンズ美術学院に学んだが、毎日ロンドン市内に通学するうちに、エピングの豊かな自然と生活をあらためて見直すようになり、それが“のばらの村のものがたり”シリーズとして実を結んだ。1981年第16回世界絵本作家原画展(至光社、丸善供催)みみずく賞、1982年度ボローニャ国際児童図書展エルバ賞を受賞

 原題はBrambly Hedge : The Secret Staircase.イギリスでの初版は1989年。日本語版は、かつて 岸田衿子訳「ひみつのかいだん」というタイトルで、講談社から1983年に出版されました。
 一度絶版になり、出版ワークス様から2022年に出版されています。新訳は小宮由先生です。

「野ばらの村」シリーズは、どの順番で読んでも楽しめるのですが、順番通りに読みたい方は、まずは第一巻「野ばらの村のピクニック」からお読みになってください。

 ※「野ばらの村のピクニック」のレビューはこちら

 おはなしは……

 冬至が近づき、森ねずみ男爵のカシの木やかたでは冬至まつりの準備で大忙し。

 そんなとき、冬至まつりの出し物の練習をしていた森ねずみ男爵の娘プリムローズと、トードフラックス家のウィルフレッドはカシの木やかたの物置部屋に秘密の階段を見つけます。

 階段を上ってゆくと、そこには素晴らしいお部屋があって……

 プリムローズとウィルフレッドは、ふたりの秘密にするのでした。

 ……と、いうのがあらすじ。

 自分の思い出話でたいへん恐縮なんですけども、幼い頃に暮らしていた祖母の家というのが少し変わった構造をしていて、二階の押入れの戸を開けるとどういうわけか階段があったのですよ。

 その階段は二階の寝室の押入れから階下の祖母のミシン部屋に続いていました。わたしはその不思議な雰囲気が大好きで時々使っていたのを思い出します。
 今でも、なんであんなところに階段があったのだろうと、謎で仕方がないんですが、ファンタジー心を掻き立てます。
 不思議な世界へ通じる扉や異世界への門などの空想ごっこの原点はここかもしれません。

 今回は、季節的には少し遅くなってしまったのですが、冬至のお祭りのおはなし。
 冬至祭りの準備をしていたプリムローズとウィルフレッドはカシの木やかたに秘密の階段があることを知ります。

 誰も使っていない物置部屋で見つけた不思議な鍵で、物置部屋の隠し扉をあけると秘密の怪談があり、そのらせん階段を登ってゆくと、見たこともない豪華な部屋にたどりついたのでした。

 その部屋にあった服を着て、ふたりは冬至まつりの出し物をするのです。

 もしかしたら、この部屋は森ねずみ男爵がさらに位の高いお客さまをお迎えするときのために作られた部屋なのかもしれませんし、男爵のご先祖様がかつて使っていた上等の部屋なのかもしれません。

 自宅にこんな秘密があったら、大興奮ですね。

 ジル・バークレムの絵は、「ピーター・ラビットの絵本」のビアトリクス・ポターや妖精画家シシリー・バーカーのようなリアリティ路線。
 ディフォルメは少なく、かぎりなくリアルに近い野ねずみたちを二足歩行させて、クラシックなイギリスの衣装を着せて生活させているファンタジーです。

 切り株や大木の中にあるねずみたちの「家」は、木の中をくりぬいた、ドールハウスのようなかわいいおうちで、ねずみたちは、そこで暖炉でパンを焼いたり、ジャムを作ったり、ブラックベリーのお茶を飲んだりして暮らしています。今回のカシの木やかたの描写も詳細で、かわいい動物好きのお子さまも図解好きのお子さまも楽しめるようになっています。

 文章は読みやすく、漢字交じりですがすべての漢字に振り仮名が振ってある総ルビなので、50音さえ読めればお子さまひとりでコツコツ読むことができます。ただ、文章の量が多いので小学校低学年以上。
 愛らしい世界観は読み聞かせにも最適です。小難しいところは一つもなく、ただただかわいらしく、ほのぼのほっこりする物語です。もちろん大人にも。

 このサイトでは、「大人のための児童書・絵本読書」を提案しています。

 忙しい日常生活や人間関係に疲れたとき、ピュアであたたかい児童文学や絵本は、心の芯をあたためてくれます。眠っていた子ども心が目を醒まし、疲れて凝り固まった心をほぐしてくれるのです。

 そんな「大人の和み絵本」にも、この「野ばらの村」のシリーズはぴったり。

 この「野ばらの村のひみつのへや」のヒイラギをあしらった装丁は冬気分を盛り上げてくれる上、上品でおしゃれなので読み終わった後にリビングなどに飾っても様になります。

 週末の夜、お風呂上りなどに大好きな飲み物をマグカップにたっぷりいれて、くつろぎながら読むのにおすすめ。
 疲れて字を追えないときは愛らしい絵を眺めているだけでも幸せ気分になれますし、ストーリーは単純なので小さな子どもに戻ってプリムローズたちの冒険を楽しんでも心が洗われます。

 読み聞かせに、プレゼントに、大人の癒しに。

 ずっとずっと愛されてきた、ロングセラー絵本をぜひどうぞ。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素がいっさいありません。忙しい日常でお疲れの、HSPHSCにおすすめです。どこをとっても美しく、愛らしい絵本です。贈り物にも。
 動物が好き、イギリスのクラシックな雰囲気が好き、ピーター・ラビットが好き、シルバニアファミリーがお好きな方に。

 読後は、ショートブレッドと濃いミルクティーでひとやすみ。

 

商品紹介ページはこちら

 

 

お気に入り登録をしてくださればうれしいです。また遊びに来てくださいね。
応援してくださると励みになります。

にほんブログ村 本ブログへ

広告