【地底国の秘密】オーストラリア発ゴシック・ホラー児童小説。ステラの不思議な大冒険【ステラ・モンゴメリーの冒険】【小学校高学年以上】

2024年4月7日

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ステラ・モンゴメリーの冒険 3  地底国の秘密   ジュディス・ロッセル/作 日当陽子/訳 評論社

はねっかえりのステラには厳しいしつけが必要と、三人のおばさんたちは彼女をウェイクストーン女学院に入学させる。おばさんたちもママもここで勉強したという。だけど、女学院にはおそろしい謎がいっぱい。はたしてステラはどうなってしまうの?

この本のイメージ ゴシック・ホラー☆☆☆☆☆ 女子校☆☆☆☆☆ 伏線回収☆☆☆☆☆

ステラ・モンゴメリーの冒険 3  地底国の秘密   ジュディス・ロッセル/作 日当陽子/訳 評論社

<ジュディス・ロッセル>
オーストラリア在住の作家、イラストレーター。現在までに13冊の物語を発表。さし絵、絵本の仕事は80冊を超える。オーストラリアのメルボルンで、猫とともに暮らしている。日本では「ルビーとレナードのひ・み・つ」「名探偵スティルトン ぬすまれた財宝をさがせ!」などの絵本が紹介されている。

<日当陽子>
子どもたちが読みたいと思う本を紹介したくて翻訳家に。おもな訳書に『ハリーとしわくちゃ団』、『6この点―点字を発明したルイ・ブライユのおはなし―』「リトル・プリンセス」シリーズ、「魔女の本棚」シリーズなど。

本日ご紹介する本は、オーストラリアの作家ジュディス・ラッセルの描くビクトリア時代のゴシック・ホラー・ファンタジー、「ステラ・モンゴメリーの冒険」第3巻「地底国の秘密」です。

 原題はWakestone Hall:A Stella Montgomery Intrigue Three. オーストラリアでの初版は2019年。日本語版は2020年です。

 一話完結の形をとってはいますが、お話は完全に第1巻から続いていますので、まずは第1巻「海辺の町の怪事件」からお読みください。
 第1巻のレビューはこちら

 ストーリーは……

 ワームウッド・マイアから帰ったステラはマジェスティック・ホテルへと連れ戻されました。けれど、はねっかえりのステラがお気に召さない三人のおばさんは、彼女をウェイクストーン女学院に入学させます。

 そこは厳しいしつけで有名な全寮制の女学院で、おばさんたちやママもかつてここで学んだのでした。

 ママのことがわかるかも?と期待に胸を膨らませて入学したステラですが、厳しすぎる学園生活に音を上げそうになりながら、同室のアガパンサスやオッティリーと励ましあいます。

 ところが、この学園、厳しいだけでなく何か恐ろしい秘密があるようで……

 ……と、いうのが今回のあらすじ。

 このシリーズは、遠い昔に人間と妖精が交流し結婚していたこともある、という世界観。ステラは「フェイ」と言う、妖精と人間の混血の子孫で、自分の身体を透明にしてしまう(服ごと)能力があります。

 この「フェイ」はステラだけでなく、第1巻で登場したベンなど、この世界には時々存在するようで、それぞれに特殊な能力があるようです。
 今回は、学園で出会った同室のオッティリーがどうやらフェイらしい。

 マジェスティック・ホテルでは孤軍奮闘していたステラですが、今回はウェイクストーン女学院で親友がふたり出来ました。

 同室の天涯孤独な少女オッティリーと良家の令嬢アガパンサスです。三人は、何があっても互いを助け会おうと固い友情の誓いをかわすのでした。

 このふたり、とくにアガパンサスがかなり魅力的。普段は「ごきげんよう」とか「こちらにいらして」とか言葉遣いはとても丁寧なのに、友の危機には大胆に立ち向かう芯の強い女の子です。

 ステラやオッティリーのように特殊能力もない、ふつうの女の子なのに、「友だちを助けなければ」と思ったら一瞬の躊躇もなく立ち上がる行動力。身分の違う男の子にも気さくに話しかけ、泥まみれになっても友だちの行方を追う。

 おっとりしたしゃべり方なのに安定感があって、度重なるピンチにステラたちを奮い立たせてくれる頼もしい仲間なのです。

 今回は、第1巻から続いていた謎の解明もあり、三人のおばさんたちが堅物でしつけに厳しかった理由も明かされ、見事に伏線が回収されます。まさかおばさんたちのあの性格が伏線だったとは……

 ラストは鮮やかなハッピーエンドですが、これで終わってしまうのも少し寂しいと感じてしまうくらいの面白さ。

 「フェイ」の設定が面白く、ステラやオッティリー、アガパンサスの友情物語も胸が熱くなる展開で、これで完結なんてもったいない。いつか、続編シリーズを読んでみたいものです。もちろん、オッティリーとアガパンサスも続投で。
 文章は平易で読みやすいのですが、すべての漢字に振り仮名が振ってあるわけではないので、小学校高学年から。「ルイスと不思議の時計」「ハリー・ポッター」など、クラシックな雰囲気のちょっぴりダークなファンタジーがお好きな方におすすめです。第3巻は女子校が舞台なので、女子校ものが好きな方にも。

 作者のジュディス・ラッセル先生が挿絵も描かれていて、クラシックでかわいい、上品な挿絵が世界観にぴったのです。

 元気なヒロインが大活躍する本格ファンタジーが大好きな方、春休みに「ステラ・モンゴメリーの冒険」を一気読みはいかがでしょう。

 ステラの大冒険にハマること間違いナシです!

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ダークな雰囲気のするファンタジーですが、気をつけて書かれているので、残酷なシーンなどはありません。江戸川乱歩の少年小説を女の子を主人公にして西洋風にしたような、レトロファンタジーです。

 クラシックでレトロな西洋ファンタジーが好きな方にはたまらない魅力があります。第3巻は女子校の友情も描かれていて、仲間と力をあわせて戦うステラの活躍も。

 作品中においしそうな料理がたくさん登場するので、読後は食べてみたくなります。

 読後は、タフィーと紅茶でひとやすみ。

 

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