【虫ガール】自分の「好き」を大切にして。虫が大好きな女の子のほんとうのお話。【ほんとうにあったおはなし】【絵本】【4歳 5歳 6歳 7歳】
わたしがはじめて虫と仲良くなったのは2歳半のころ。ママがチョウの温室に連れて行ってくれたの。中に入ったとたん、1匹のチョウがわたしの肩に止まって、そしてわたしから離れなかった。(虫ガール ほんとうにあったおはなし ソフィア・スペンサー(虫ガール) マーガレット・マクナマラ/文 ケラスコエット/絵 福本友美子/訳 岩崎書店)
この本のイメージ 実話☆☆☆☆☆ 好きを大切に☆☆☆☆☆ 仲間は見つかる☆☆☆☆☆
虫ガール ほんとうにあったおはなし ソフィア・スペンサー(虫ガール) マーガレット・マクナマラ/文 ケラスコエット/絵 福本友美子/訳 岩崎書店
<ソフィア・スペンサー>
虫が大すきな8歳の女の子として、アメリカABCテレビの朝のニュース番組やラジオ番組に出演して話題になる。母親とカナダのオンタリオ州に在住。11歳でこの本を書く。
<マーガレット・マクナマラ>
アメリカの作家。絵本、伝記、低学年向きの読みものなどを数多く書く。科学雑誌に掲載されたソフィアの記事を読んで、ソフィアに自分の体験を書くようにすすめ、協力する。ニューヨーク在住。
<ケラスコエット>
イラストレーターのセバスティアン・コセとマリー・ポムピュイの夫婦によるユニット。マリーが幼少時代をすごしたフランスのブルターニュの地名をユニット名とし、2002年から漫画や絵本の絵を手がける。パリ在住。
<福本友美子>
公共図書館勤務を経て、現在は児童書の研究、翻訳をしている。訳書に、「としょかんライオン」(岩崎書店)、「ないしょのおともだち」(ほるぷ出版)、「いっしょにおつかい」(岩波書店)、「いもうとガイドブック」(少年写真新聞社)、「ちいさなエリオット」シリーズ(マイクロマガジン社)など、多数。
原題はTHE BUG GIRL.
アメリカでの初版は2020年。日本語版の初版も2020年です。
これはほんとうにあったお話。
ソフィア・スペンサーは虫が大好き。
2歳半の時に入ったチョウの温室で、1匹のチョウがソフィアに舞い降りてそのまま離れなかったのをきっかけに、虫に夢中になりました。
5歳になるころにはすっかり虫に詳しくなり、幼稚園では虫博士として人気者。虫クラブを作って友だちと虫を捕って遊ぶのでした。
ところが、小学1年生になったら何もかもが変わってしまいました。虫が好きな子なんてひとりもいなくて、大好きなバッタを学校に持っていったら踏まれて殺されてしまったのです。
つらくなったソフィアは、いったん「虫好き」を封印してしまいます。
みかねたママは思わぬ行動に出ます。
「どなたか娘の虫ともだちになってくださいませんか」と、昆虫学者のグループにメールを送ったのです!
3日後に昆虫学者のモーガン・ジャクソン氏からメールが届きました。ママのメールをインターネットで紹介してもいいか、と言う問い合わせです。もちろん、OK。
「虫が好きな女の子にメッセージを送ろう」との呼びかけに世界中の虫好きや昆虫学者から続々とメールが届きました。
そして……
ソフィア・スペンサーは、アメリカでは「バグ・ガール」としてかなり有名な女の子らしく、探してみたら記事も見つかりました。この絵本にも書かれていますが、新聞やテレビなどでもかなり取り上げられたようです。
このソフィアのエピソードは、アメリカの子どもたちの「好き」を大切にする気持ちを大きく後押ししたにちがいありません。
これが創作ではなく実話だというのが励まされます。
わずか2歳のときに情熱を注ぎこめる何かを見つけたソフィアも素敵ですが、なによりソフィアのママがすばらしい。
小さな子どもが何かに夢中になったとき、ごくふつうの大人なら「ひとつのことに夢中になりすぎると友だちがいなくなるから、いろんなことに興味をもちなさい」とか「女の子なのに虫が好きなんておかしい」とか、「そんなことに夢中になって、将来食べていけるの?」とか言ってしまいがちなものです。
令和ではまた違うのかもしれませんが、「そんなことに夢中になっても食べていけないよ」と言うのは小さな子どもが音楽やお絵かき、電車や虫取りなどに夢中になったとき、昭和の大人たちがよく言った言葉のひとつでした。
では、因数分解が秒速でできたら食べてゆけるのかとか、歴史年号を全部暗記できたら食べてゆけるのかとか、そういう話になると結局はそうではないんですが、小さな子どもが夢中になれる何かを見つけたとき「それが儲かるのかどうか」と「交友関係が広くなるかどうか」だけで判断する大人は昔から多く、そのせいでせっかく子どもの心に芽生えた情熱がじゃあじゃあ水を掛けられしぼんでしまうのはままあることです。
ところが、ソフィアのママ、二コールはそんな大人たちとは正反対。
小学校で友だちを作るために虫好きを「封印」しようとしたソフィアを励ますために、行動を起こします。
今のソフィアを理解してくれないのは「小学校」と言う狭い世界の子どもたちだけ。広い世界にはソフィアを理解してくれる人がかならずいるはず。
そりゃそうです。大人の世界には実際に「昆虫学者」と言う人たちがいて、生きてて生活しているんですから。その人たちだって子どもの頃はソフィアみたいに熱狂的な虫好きの子どもだったにちがいありません。
ママの大胆な行動の結果、まずモーガン・ジャクソンさんというひとりの昆虫学者が返事をくれました。そして、ジャクソンさんの呼びかけで、世界中の「虫を愛する人たち」から続々と「虫ガール」ソフィアにメッセージが届き始めたのです。「好き」をあきらめないで、と。
「自分はひとりじゃない」と思えるようになったソフィアは生きることが楽になり、「虫好き」を復活。モーガンさんと一緒に虫の記事を書いたりしながら、虫以外のことにも興味を持ち始めます。
彼女のいちばん根っこのことろ「虫が大好き」を肯定されたから、傷ついて閉ざされていた心が開いて虫以外のことにもどんどん興味が持てるようになったのでしょう。
「そんなことばっかりしていないで、ほかのことを」と言われるより「いいね!素敵だね!」と言われたほうが、ほかの事にも興味が沸いてくる。だって、ひとつのことを追求するためには他の知識が必要になることもあるのだから。
かなり文章量は多く、大判の絵本なので4歳くらいから。
読み聞かせなら3歳から大丈夫でしょう。
文章は平易で読みやすく、漢字交じりですがすべての漢字には振り仮名が振ってある総ルビです。
ひらがな五十音が読めれば、時間をかけてコツコツひとりで読みきることもできそう。
巻末にはソフィアの大好きな虫「ベスト4」の解説が書かれており、虫好きさんには嬉しいプレゼント。ソフィアが好きなのは、「バッタ」「青いモルフォチョウ」「カマキリ」「ハエ」だそうです。そして、アリも好きなんですって。
自分の「好き」を全肯定してくれる絵本「虫ガール」。
好きな何かがあるお子さま、好きな何かを探しているお子さまに。
眠っていた心が動き出す絵本です。
読み聞かせに、お留守番子のひとり読みに、そして大切な日のプレゼントにぜひどうぞ!
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はまったくありません。「らしさ」にとらわれず、自分の「好き」を大切にする絵本です。好きな何かがあるお子さま、好きな何かをさがしているお子さまの背中を押してくれます。
自分の周囲に自分の「好き」に共感してくれる人がいなくても、広い世界にはきっといるんだと信じることができるようになります。
「好き」を後押ししてくれる絵本なら
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