【ロッタちゃんのひっこし】リンドグレーンの名作。小さなきかんぼうのロッタちゃんの物語【小学校低学年以上】
ロッタちゃんは三人きょうだいの末っ子のあまえんぼう。ある朝、いやな夢をみたロッタちゃんはママにやつあたりしたあげく…… (ロッタちゃんのひっこし アストリッド・リンドグレーン/作 イロン・ヴィークランド/絵 山室静/訳 偕成社)
この本のイメージ 幼児あるある☆☆☆☆☆ 子どもの夢☆☆☆☆☆ 名作☆☆☆☆☆
ロッタちゃんのひっこし アストリッド・リンドグレーン/作 イロン・ヴィークランド/絵 山室静/訳 偕成社
<アストリッド・リンドグレーン>
1907~2002。スウェーデン南西部のヴィンメルビューに生まれる。小学校の先生や事務員をしながら、執筆活動をはじめ、「長くつ下のピッピ」で子どもたちの圧倒的な人気を得た。ほかにも、農村の子どもの生活をユーモラスに描いた「やかまし村」シリーズ、「名探偵カッレくん」シリーズ、空想ゆたかなファンタジーなど、世界中の子どもたちから愛される多くの作品がある。1958年に国際アンデルセン賞を受賞
<イロン・ヴィークランド>
マイレ=イロン・ヴィークランドは、エストニア生まれのスウェーデンの芸術家、イラストレーターである 。 ヴィークランドはエストニアのタルトゥで生まれ、エストニアのバルト海沿岸にあるレーネ県ハープサルで育った。
<山室静>
明治39(1906)年、鳥取市生まれ。東北大学美学科卒業。永年にわたり文芸評論、北欧文学の翻訳紹介、児童文学などに多才な活躍をする。著書に「山室静著作集(全六巻)」「北欧文学の世界」「評伝森鴎外」、エッセイ「踊り場にて」、詩集「時間の外で」、翻訳に「ヤコブセン全集」「アンデルセン童話全集」「世界むかし話集」などがある。平成12(2000)年没。
原題は Lotta på Bråkmakargatan.(もんくや通りのロッタ)
スウェーデンでの初版は1961年。日本での初版は1966年です。
五歳になったばかりのロッタがしでかす、幼い子どもらしい、ほほえましい事件の数々を五つのエピソードで描いています。
ざっくりとしたお話は……
ある日、いやな夢を見たロッタ。
おにいちゃんのヨナスとおねえちゃんのマリアが自分の大事なぬいぐるみのバムセをぶったのです。
けれど、ロッタは夢と現実の区別がつかず、ほんとうにヨナスとマリアがバムセをいじめたと思い込んでいました。
おかあさんが何度説明してもロッタは納得せず、結局、かんしゃくをおこして家を飛び出してしまいます。
すると……
……と、いうのがあらすじ。
リンドグレーンを読んでいると、どうしたらこんなに小さな子どもの頃に考えていたことを瑞々しく描けるのだろうかと驚かされます。
ああ、本当に小さなころ、こんなことを本気で考えていたな……
ロッタちゃんはまだ、夢と現実をうまく区別できる年齢ではありません。
そのうえ、少し前に起きた出来事や感情を引きずってしまい、自分では言いたくないことやしたくないことも衝動的にしてしまいます。
あとでちょっぴり後悔するのですが、引っ込みがつきません。
そんなこんなで、ロッタちゃんは家出をしてしまいました。
おとなりのベルイおばさんのところへ。
このベルイおばさんと言う人がいい人で、ロッタちゃんがそれ以上勝手に外をふらふらしないように、家で保護してくれます。もちろん、ロッタちゃんはおばさんの真意には気づいていません。
ベルイおばさんの庭の納屋の二階で、ロッタちゃんはわくわくするような自分だけの「家」を手に入れるのでした。
子どものころ、子どもたちだけの「秘密基地」がどんなに欲しかったか。
ちょっとした狭い空間にお気に入りのものを隠して、ひとりですごせる時間にあこがれたりしたものです。
家出をしたロッタちゃんは、小さな子どもが「そうそう、こういうの欲しかった!」と誰もが思うようなものを手に入れます。
ロッタちゃんがベルイおばさんのことろにいると知ったお父さんやお母さんの行動も素敵です。
冷静に考えれば、何から何までロッタちゃんが一方的に悪いのですが、それを頭ごなしに言っても理解できない年齢。
そんなきかんぼうのロッタちゃんに、ぶったり怒鳴ったりはせず、ちゃんと「ごめんなさい」もさせます。
子ども心のわくわくと、両親の深い愛情の詰まった、心温まる児童書です。字はほとんどひらがなとカタカナ。簡単な漢字には振り仮名が振ってあります。
だいたい、小学校低学年から。
けれど、主人公のロッタちゃんの年齢を考えると、読み聞かせもおすすめです。
元気で、おてんばで、いつもエネルギーがあふれ出しているロッタちゃん。
読んでいるだけで心が躍り、わくわくしてくる名作児童文学です。
絵本を卒業し、そろそろ少し長めの文章をとお考えの頃に。
パワフルかわいい、ロッタちゃんのお話をぜひどうぞ。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はまったくありません。ロッタちゃんがとんでもなくお転婆できかんぼうなのでびっくりしてしまうかも。
さわやかで明るく、子どもらしい感性に満ちた、心躍る物語です。
読後はパンケーキが食べたくなることまちがいなし。
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