【こちらゆかいな窓ふき会社】ロアルド・ダールのゆかいなショートストーリー。珍しくほのぼのだよ!【小学校低学年以上】
ぼくはビリー。近所のおんぼろな三階建ての建物がぼくは大好きだ。この建物は昔、お菓子屋さんだったんだって。ところが、この建物、ある日、ものすごく縦に長いドアがついたかと思うと、壁にあるのは「はしご不用窓ふき会社」の看板。いったい、どんな会社なんだろう。
この本のイメージ ミュージカル☆☆☆☆☆ ユーモア☆☆☆☆☆ ほのぼの☆☆☆☆☆
こちらゆかいな窓ふき会社 ロアルド・ダール/作 クェンティン・ブレイク/絵 清水奈緒子/訳 評論社
<ロアルド・ダール>
イギリスの作家。サウス・ウェールズに生まれ、パブリック・スクール卒業後、シェル石油に。第二次世界大戦で、イギリス空軍の戦闘機パイロットとし生死の境をさまよった経験から作家になる。
ブラックユーモア・ファンタジーで知られる、ロアルド・ダールの!なんと!!ほのぼの動物ファンタジーです。
あまりにも、毒がないのでびっくりしますよ! (わたしも初読だったのでびっくりしました)
あらすじは、
近所の三階建てのおんぼろ建物が大好きなビリー。そこはもとお菓子屋さんで、ビリーはいつかお金持ちになったらその建物を買い取って、お菓子屋をやりたかったのです。
ある日、その建物に「売約じみ」と書かれ、へんてこな縦に長いドアと看板がつけられます。それは「はしご不用窓ふき会社」。そこで働いているのは、キリンとサルとペリカンでした。
ペリカンのくちばしをバケツに、キリンさんによじ登ったサルくんが窓を拭く、窓ふき会社です。
看板をみかけたハンプシャー公爵から、屋敷中の窓をふく注文をうけたキリンちゃんたち。ビリーが屋敷まで案内します。
ハンプシャー公爵のお屋敷の窓を、彼らの特技で次々と拭いてゆくキリンちゃんたち。ところが、ある窓から中を覗いたサル君がびっくりします。なんとピストルを持った泥棒が、お屋敷の宝石を盗んでいる最中だったのです。
さて、「窓ふき会社」チームは、この危機をどう脱するでしょうか。
と、言うのがあらすじ。
とっても短いお話なので、すぐ読めちゃいます。長めの小説を読み始めの年頃のお子さまにおすすめ。
難しい漢字に振りがながふってないので、ちょっと読むのがたいへんかもしれないのですが、内容的には小学校低学年向けです。小学校低学年のかしこいお子様なら、読み聞かせしてあげるといいかもしれません。ダールにしては信じられないほど、ほのぼのしているお話です。
ただし、内容はミュージカル仕立てになっており、キャラクター全員がいきなり歌いだすので、読み聞かせのときにはそれだけがちょっと大変かも。児童文学って、突然歌いだす話が多いですよね。わたしも慣れるまで戸惑いましたよ。
でも、昔の映画も、突然歌いだすのが多かったですよね。ほら、あれですよ、「無責任男」シリーズとか。(古いよ)
ロアルド・ダールの話って、あんな感じです。(どんな感じだよ)
とにかく、窓ふき会社の動物たち全員がかわいい。楽しくゆかいな物語なんですよ。
主人公のビリーもいいやつなのです。
でも、一番キョーレツで個性爆発なのは、ハンプシャー公爵。
ダールは、こういうキャラクター大好きですね。子供たちを幸せにするために、お金と権力をふるいまくるキョーレツな大人。(強引すぎてほんのりパワハラ風味)
ワンカさんもそうですけど。そうそう、この物語の最後には、ワンカ工場の不思議なお菓子も登場します。
と、いう事は、この世界ではハンプシャー公爵とワンカさんが共存しているのか……。よく考えるとおそろしい。
ダールの物語ではおなじみのクェンティン・ブレイクの挿絵が表情豊かで、キリンちゃんが愛らしい。お話自体もかわいらしく、楽しいお話なので、大人のなごみ絵本としても最適です。
ただし、この物語を読んでロアルド・ダールの作風はこうなんだと騙されちゃいけません。他にも読んでみたいなと思ったら「マチルダは小さな大天才」あたりが無難です。いや、本当にこれは善意だから。
重苦しい空気に風穴を開けてくれる、明るくて楽しいファンタジーです。
大人が読んでも充分おもしろく、晴れやかな気持ちになるので、週末のリラックスタイムの和み本としてもおすすめ。もちろん、読み聞かせにも。
天気の悪い日、外出できない日には、ぜひどうぞ。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ダールにしては、驚くほど毒がありません。安心してお読みいただけます。ただし、ダールの作風がこういうものだと信じて他の作品に手を出すのはやめましょう。他の作品はたいへん面白いのですが、繊細な方は要警戒です。
「こちらゆかいな窓ふき会社」は、とにかく楽しいお話で、ラストではおいしそうなお菓子がどっさり登場しますので、チョコレートやロリポップなど、駄菓子っぽいお菓子をたくさん用意しておくことをおすすめします。もちろん、熱々の紅茶も。
子供心にもどれる、カラフルで楽しいファンタジーです。
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