【まじょのナニーさん】スーパー家政婦さんは魔女!留守番っ子のハートを癒すミラクルファンタジー第6巻。【なみだの海でであった人魚】【小学校低学年以上】

2024年3月30日

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まじょのナニーさん  なみだの海でであった人魚  藤真知子/作 はっとりななみ/絵 ポプラ社

大好きなおばあちゃんが死んでから、エマは元気が出ません。ママが忙しいときはおばあちゃんが一緒にいてくれたのに……。エマはまだ立ち直っていないのにママは外国に出張。ママがエマのために手配してくれたのは不思議なナニーさんでした……

まじょのナニーさん  なみだの海でであった人魚  藤真知子/作 はっとりななみ/絵 ポプラ社

<藤真知子>
東京女子大学卒業。「まじょ子どんな子ふしぎな子」でデビュー。以後、「まじょ子シリーズ」は、幼年童話のファンタジーシリーズとして人気を博し、ついに60巻で完結。ほかにも「わたしのママは魔女シリーズ」(全50巻)など、作品多数。

<はっとりななみ>
武蔵野音楽大学卒業。その後東京デザイン専門学校でグラフィックデザインを学び、製紙メーカーデザイン部を経て、イラストレーターに。絵本の挿絵やグリーティングカードほか、さまざまな媒体にイラストレーションを提供している

 キュートな魔女ものファンタジーシリーズの生みの親、藤真知子先生の現行シリーズ、「まじょのナニーさん」第6巻。初版は2020年。

 「まじょのナニーさん」は、魔法を使えるスーパー家政婦さんが、なんらかの理由でひとりでお留守番をしなければならない小さな子どものもとへ来て、様々な困りごとや悩みを魔法で解決してくれる一話完結のファンタジーシリーズです。

  ナニーさんは正体不明。どうして家政婦さんをしているのか謎。基本的に一話完結なので、どの巻から読んでも楽しめますが、「最初から順番に読みたい」と言う方は、第一巻「まほうでおせわいたします」からお読みください。「まほうでおせわいたします」のレビューはこちら

 今回のお話は……

 おばあちゃんが亡くなってから、エマはどうしても元気が出ません。
 エマにはお父さんがいないけど、ママが出張のときはおばあちゃんが来てくれて一緒にお留守番していれば楽しかったのです。

 立ち直れないエマを置いて、ママは出張に行かなくてはならなくなりました。
 エマのためにママは、スーパー家政婦さんのナニーさんを手配します。

 最初は打ち解けられなかったエマでしたが、ナニーさんの不思議な魔法で、少しずつ元気を取り戻します。

 なみだの海にいる人魚を見たり、フルーツたちとおしゃべりしたり、夢の海で昔助けたクマノミに出会ったり……

 エマは、ナニーさんの魔法の世界を体験するうちに、きっとおばあちゃんも幸せに生まれ変わっているはずと思えるようになりました。

 ……と、いうのがあらすじ。

 小さな子供はまだまだ「生」と「死」の概念がありません。だいたい10歳くらいで自我が確立するまでは、人が死んだらどうなるのか、どこへゆくのか、「命」「死」「魂」のようなものの概念が漠然としています。

 どちらかと言うと、食べたり寝たりする、「生きる」ことに精一杯な年頃です。それがだんだんと死とは何か、生とは何かを考えるようになるのが10歳前後。

 最初に体験する「死」は、多くの場合、祖父、祖母です。

 主人公のエマちゃんにはお父さんがいません。離婚なのか、死別なのかは描かれていませんが、どちらにせよ、エマちゃんにとってはよく認識できないくらいの年齢でおきたことでしょう。

 「大好きなおばあちゃんの死」は、エマちゃんが生まれてはじめて出会った衝撃的な事件でした。

 今回は、「身近な人の死」を乗り越える、と言うのがテーマです。

 身近な人が死んだとき、小さな子どもはそれぞれの方法で立ち直りますが、この物語のエマちゃんのようにお留守番っ子でひとりの時間が多く、さみしさや哀しみを共有してくれる人が身近にいない場合、哀しみの消化に時間がかかってしまう場合があります。

 今回は、それをナニーさんが手伝ってくれるお話です。

 よくあるファンタジーだと、ここでおばあちゃんの魂がやってきて主人公に「悲しまないで」と伝えたりするものですが、この物語には死んだおばあちゃんは登場しません。

 ナニーさんが呼び出すのは、涙の海で泳ぐ人魚だったり、人間たちにおいしく食べてもらうことが楽しみなフルーツたちだったり、不思議な海の生き物たちだったり。

 人間に食べてもらうことが幸せなフルーツたちは「死」をポジティブなものとしてとらえていますし、海の生き物たちは「好きなものに生まれ変わること」を楽しみにしています。

 エマは、おばあちゃんもきっと幸せなのにちがいない、と思うことで、前に進む力を得るのでした。

 最近は天変地異や自然災害が多く、また伝染病の流行もあり、一昔前よりはるかに「死」が身近に感じられるようになりました。しかし現代社会は忙しいので、昔よりはるかに早く、さっさと立ち直ることを要求されます。
 とはいえ、悲しみをどう受け止めるか、どう立ち直るかは人それぞれ。立ち直りが早い人ばかりではありません。

 大切な人が亡くなったとき、たとえ大人でもわんわん泣いてとことん悲しんだ人のほうが立ち直りが早く、哀しみを我慢して気丈にふるまい、笑顔でもろもろの手配をやりきった人のほうがあとでどっと落ち込んでしまう、と言うのは昔からよく聞く話でした。

 哀しいときはとことん哀しんで、誰かと哀しみを共有したほうが良いようです。そのために、「お通夜」「お葬式」「初七日」「四十九日」と細かな段階があり、遺族が忙しく働かなければならないたくさんの段取りがあります。

 しかし、それで気がまぎれ、四十九日が済むころにはだいたい立ち直っている。このめんどくさい段取りは遺された人のためにあるのだ、とわたしは教わりました。

 しかし、現代では昔よりも核家族化がすすんでおり、お葬式の段取りも簡略化されているため、昔ながらのやりかたで法要をする家も減ってきてしまっています。

 また、お母さんが働かざるを得ない状況も珍しくはないので、このお話のエマちゃんのように身近な人の死を家でひとりぼっちで乗り越えなければならない子も増えていることでしょう。

 そんなときは、本を読んでほしいのです。本は、そのような、自力ではどうしようもないようなさみしい心を支えてくれます。

 読書は、自分の心と語り合う行為でもあるから。

 たしかに、深い苦しみに出会ったとき、テレビ番組やビデオゲームのにぎやかさや目まぐるしさが気をまぎらわせてくれることはあります。その楽しさや面白さに助けられる子もいます。わたし自身、大変な時期にアニメやゲームに救われてきました。

 しかし、それでも癒されないとき、心の底の深い深い深いところへ降りていって、心の芯に近いところの傷をゆっくり癒してくれるのは読書でした。

 魔女や魔法をテーマにした楽しいお話を数多く生み出している藤真知子先生ですが、「ナニーさん」のシリーズは「まじょ子」シリーズや「わたしのママは魔女」シリーズと比べるとちょっと雰囲気が違います。
 一作一作、現代のお留守番っ子が抱えている特有の悩みや哀しみをテーマに、小さなお子さまの情緒にアクセスするセラピー要素があるのです。
 どんな子が相手でも、ナニーさんはひとりぼっちで悩みや哀しみに立ち向かっている小さな心に、そっと寄り添って力づけてくれます。

 一見、突き放しているようにも見えるクールなナニーさんですが、誰よりも熱い心を持ったスーパーレディなのです。

 字が大きくて読みやすく、ほとんどがひらがなですが、簡単な漢字にもすべて振り仮名がふってあります。はっとりななみ先生の挿絵が愛らしく、ところどころはフルカラーの挿絵もあって華やか。

 絵本を卒業したばかりの、「物語」を読むことに挑戦をはじめた女の子におすすめのシリーズです。ストーリーが面白いだけでなく、毎回情緒的なテーマがあるので、読み応えがあります。

 この秋、お留守番の多い、おうち時間にぜひどうぞ。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 最愛の祖母を失った主人公が、哀しみから立ち直って元気になるお話です。

 ネガティブな要素はありません。おばあちゃんが死ぬ具体的なシーンはありません。幽霊は登場しません。お話は楽しいシーンの連続で、優しくカラフルなファンタジーです。

 「死」を考え始めたお子さまにおすすめです。

 

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