【さいごの戦い】物語の完結。すべての謎が解ける、ファンタジーの不朽の名作、第7巻。【ナルニア国ものがたり】【小学校中学年以上】
大猿ヨコシマは愚かなロバ、トマドイにライオンの皮をかぶせてアスランを名乗らせナルニアの民をあざむき、カロールメンを呼び込んでいました。ジルとユースチスはナルニアを救うためにさいごの戦いへ向かいます。(さいごの戦い ナルニア国ものがたり 7 C・S・ルイス/作 瀬田貞二/訳 岩波少年文庫)
この本のイメージ ファンタジー☆☆☆☆☆ 黙示録☆☆☆☆☆ 名作☆☆☆☆
さいごの戦い ナルニア国ものがたり 7 C・S・ルイス/作 瀬田貞二/訳 岩波少年文庫
<C・S・ルイス>
本名クライブ・ステープルス・ルイス(Clive Staples Lewis 1898年11月29日 ~ 1963年11月22日)。アイルランド系のイギリスの学者、小説家、中世文化研究者、キリスト教擁護者、信徒伝道者。全7巻からなるハイファンタジー小説『ナルニア国物語』の著者として有名。
<瀬田貞二>
瀬田 貞二(せた ていじ、1916年4月26日~1979年8月21日)は、日本の児童文学作家・翻訳家・児童文学研究者。
J・R・R・トールキン「指輪物語」の翻訳が有名である。その他、日本の民話の再話もあり、「かさじぞう」「ふるやのもり」などはロングセラーである。1957年、「なんきょくへいったしろ」(こどものとも1956年8月号 福音館書店)で産経児童出版文化賞を受賞、ついで1963年「あふりかのたいこ」で、1966年「ホビットの冒険」の訳で、1967年「ナルニア国ものがたり」の訳で同賞受賞。1975年、「指輪物語」の翻訳等で日本翻訳文化賞、1977年、児童福祉文化賞奨励賞受賞、1979年、「きょうはなんのひ?」で絵本にっぽん賞、1982年、「落穂ひろい」で日本児童文学学会賞、日本児童文学者協会賞特別賞、毎日出版文化賞特別賞受賞。
原題はThe Last Battle . イギリスでの初版は1956年。日本語版初版は1966年、現在の岩波少年文庫版は2000年です。
どの巻も一話完結ですが、おおまかな流れはあるのでアスランとペベンシーきょうだいが出会う第1巻「ライオンと魔女」から順番に読んだほうがわかりやすいでしょう。
「ライオンと魔女」のレビューはこちら↓
今回のお話「さいごの戦い ナルニア国ものがたり 7」のストーリーは……
ある日、川でライオンの皮を見つけた大猿ヨコシマはそれをロバのトマドイにかぶせ、ライオンのアスランのふりをさせることを思いつく。
ヨコシマはカロールメンと裏で手を結び、カロールメンのナルニア侵略を手伝い、罪もないナルニアの民たちは偽アスランに騙され殺されたりカロールメンに奴隷として連れ去られたりしていました。
ナルニアの危機に、ユースチスとジルは呼ばれ、チリアン王を助けてナルニアを救うために力を尽くします。
利用されているトマドイを助け出し、偽アスランの秘密を暴き、騙されているナルニアの民たちの目を覚まさせようとするジルたちでしたが、想像よりもそれは難しく……
……と、いうのがあらすじ。
出版当時から結末について賛否両論に分かれた完結編です。
もともと「ナルニア国ものがたり」はキリスト教の教えを子どもたちにわかりやすく教えるために書かれているため、聖書の内容がベースになっています。
もちろん、それらを知らなくても楽しめる作品になっているのですが、この最終巻「さいごの戦い」についてだけは「どうしてそうなるのか」が聖書を知らないとぴんと来ないかもしれません。
お話は、キリスト教の「最後の審判」がベースになっており、長くアスランが現れないことでのナルニアの民の心の変化、偽予言者の出現や、荒れる世紀末の世、悪の化身の襲来、善悪の戦いなどが描かれています。
この作品は後の多くのファンタジー作家に大きな影響を与え、結果、多くの名作が生まれました。当時から結末に納得がいかない子どもも多かったのです。
わたし自身、「聖書がベースなんだよ」といわれるまでは「どうしてこんなことに」と言う気持ちのほうが強く、受け入れることが難しい作品でした。
若い頃に尊敬する方から「西洋の文学は聖書を理解していないと本当の意味では何が書いてあるのかがわからない」と教えられたことがありますが、ナルニア国はまさにそうで、最終巻はキリスト教徒ではない日本人が何も知らないまっさらの心で読むとショックを受けてしまう場合があります。(そのショックが悪いものとも言い切れないところはあるのですが)
なので、「自分は聖書をまったく読んだことがない」と言う方は、「ナルニア国ものがたり」の最終巻「さいごの戦い」だけは、ざっくりと読んでからお読みになったほうがいいかもしれません。
「ナルニア国ものがたり」には、宗教的側面があるゆえのよさもあり、繰り返し繰り返し人間のおろかさと、過ちから立ち直る姿を描いています。
ナルニアの登場人物たちは、けっして優等生ではないのです。
善悪を知らないで悪事を働くこともあれば、正しいことを教えられていても守れないこともあります。大切な人を裏切ってしまうこともある。
けれども、失敗をした人過ちを犯した人でも、気づいて償って立ち直って、そして立派な人間として成長してゆく。
ひとつの失敗さえ致命傷になる昨今のSNS社会とは正反対の考えではないでしょうか。
古い物語ですが、こういう名作はいまこそ必要なのかもと思いました。
単純な「異世界ファンタジー」としてのおもしろさもありながら、何層にも折り重なった深みもある世界観でもあります。
文章は平易で読みやすく、難しい漢字には振り仮名が振ってあります。瀬田貞二先生の古風な日本語も上品で美しく、ナルニアの世界観にぴったり。小説を読みなれたお子さまなら小学校中学年から。ぜひ挑戦していただきたい名作です。
もちろん大人も楽しめる本格ファンタジー。
この秋、たっぷり時間をとって不朽の名作をぜひどうぞ。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
最後の戦いなだけあって、流血シーンもあります。しかし、気をつけて書かれているのでそれほど残酷ではありません。ラストは少し衝撃的です。
深く理解するためには、ざっくりとでも聖書の「最後の審判」をお読みになったほうがいいでしょう。
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