【せんそうがやってきた日】それは突然やってきた。ひとりぼっちで避難してきた少女がたどりついたあたたかい場所【4歳 5歳 6歳】

2024年3月25日

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せんそうがやってきた日 ニコラ・デイビス/作 レベッカ・コッブ/絵 長友恵子/訳

せんそうがやってきた日、まどべには花がさき、おとうさんはおとうとに子守唄をうたってた。おかあさんは朝ごはんをつくり、わたしの鼻にキスをして、学校までおくってくれた……

この本のイメージ 難民の少女☆☆☆☆☆ 子どもたちの想い☆☆☆☆☆ 平和への希望☆☆☆☆☆

せんそうがやってきた日 ニコラ・デイビス/作 レベッカ・コッブ/絵 長友恵子/訳 鈴木出版

<ニコラ・デイビス>
作家。イギリスのウェールズ在住。邦訳されている作品に「ちいさな ちいさな:めに みえない びせいぶつの せかい」(ゴブリン書房)、「やくそく」(BL出版)がある。イギリスで冷遇されている子どもの難民たちの現状に触発され、この絵本のもとになった詩を書いた。#3000chairs(3000のいす)プロジェクトの立ち上げを支援した。

<レベッカ・コッブ>
イラストレーター。2004年イギリスのファルマス芸術大学を卒業。邦訳されている作品に「あなのなかには…」(フレーベル館)などがある。「ごはんのじかん」(ポプラ社)は、ウォーターストーンズ児童文学賞(絵本部門)を受賞し、ケイト・グリーナウェイ賞の最終候補に残る。本作品も、2019年ケイト・グリーナウェイ賞最終候補に選ばれた。

<長友恵子>
翻訳家。神奈川県在住。訳書に「オオカミさん、いまなんじ?」(鈴木出版)、「グレース・ホッパー プログラミングの女王」(岩崎書店)、「中世の城日誌ー少年トビアス、小姓になる」(岩波書店、産経児童文化出版賞JR賞)、「ドラゴンだいかんげい」(徳間書店)、「おうちにいれちゃだめ!」「あなのなかには…」(共にフレーベル館)、「レイミー・ナイチンゲール」(岩波書店)など多数。紙芝居文化の会運営委員。JBBY、やまねこ翻訳クラブ会員。

 昨夜の地震にはびっくりしましたね。かなり大きくて長かったので、「このままどんどん大きくなったらどうしよう」と不安になりました。東北の方は大丈夫でしょうか。
 このあとに本震が来る場合もあるので、油断はできません。こればかりは、大地が決めることですから、本当に収まって欲しい。1日でも早く、みんなが安心して暮らせるようになりますように。

 さて、本日ご紹介するのは、ニコラ・デイビスの「せんそうがやってきた日」。原題はThe Day War Came.イギリスでの初版は2018年。日本での初版は2020年です。

 平凡な少女の平和な生活が突然の戦火によりすべてを失い、難民となって居場所を求めるお話です。ラストでは多くの子どもたちに受け入れられ、彼女は自分の「居場所」を見つけます。

 わたしの両親は戦前、戦中世代でしたので、祖母、両親、そして近所の人たちから戦時中の話は何度も何度も聞きました。

 この絵本に書かれている戦争の様子も、わたしが上の世代から聞かされていた話とほとんど同じです。
 ぴんと来ない方も、日本では天変地異が多いので、なんとなく理解ができるのではないでしょうか。戦争は、津波や大地震と似てもいます。

 ある日突然、自分の力ではどうしようもないものに生活が破壊されて、逃げて逃げて、安らげる場所へとひたすら走る。

 小さな子どもにはなんの罪も責任もありません。

 でも、そんな子どもたちが世界中にいるのです。

 この絵本では、戦火から逃げてくる小さな女の子の様子が詳細に描かれています。自分を取り巻く幸せな世界が突然崩壊するショック、一人ぼっちで逃げるつらさ、苦しみ、みじめさ、そして、暖かい場所へとたどりつく安心感などが、小さな読者にもわかるよう、丁寧に描かれています。

 「戦争」と言うのは、この世で最もネガティブな言葉ですが、この絵本のラストはあたたかく、希望に満ちた形で締めくくられています。

 我々の国では、最近は長らく戦争はありませんでしたが、度重なる天変地異に見舞われました。

 自分の責任でもなんでもないことで、生活のすべてが破壊されてしまうのは、あまりにも理不尽で受け入れがたいことです。そんななかで、小さな子どもたちも懸命に生きています。

 とはいえ、「今の生活がせいいっぱいで、それらの大きな出来事に対して特別なことはできないし、安易に結論を出すことも出来ない。」と言う、ごくふつうの人が圧倒的多数ではないでしょうか。

 そんな状況でも、家の中で本を読むことはできます。
 絵本を親子で読み聞かせする、一緒に読んで、その内容についてお茶を飲みながら、夕食を食べながら語り合うことが出来たら、それだけで少しは何かを前に進めることができるかもしれません。

 最近は、戦争について親子で語り合う機会は少ないと思います。もちろん、そういったことが話題にならないほど平和な世界こそがすばらしい世界なのは確かです。
 しかし、激動の時代に差し掛かりつつある今、このような絵本も必要なのかもしれないと思いました。

 この世のどこかに悪いやつがいて、そしてこの世のどこかに正義の味方がいて、悪いやつをやっつければすべてが解決するならば、どんなに簡単でしょうか。しかし、現実はそんなに安易には解決しないものです。
 そして、裏には、この少女のような子どもたちの人生が、無数にあります。そして、わたしたちのちょっと上の世代は、幼いころ、そんな子どもたちでした。

 簡単には解決できない問題です。

 しかし、簡単には解決できない問題でも、考えることはできます。
 親子で、週末の午後などに、ゆっくり読みたい絵本です。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 小さな女の子の幸せな日常が、突然の戦争によって破壊されるところから物語が始まります。「私はこう思いました」のような記述はほとんどないのに、女の子のどうしようない哀しみや苦しみがひしひしと伝わります。

 非常に重い、インパクトのあるテーマですので、精神的に弱っていときにはおすすめできません。しかし、HSP,HSCの方のほうがより多くのメッセージを受け取れると思いますので、少しでもご興味を持たれるようでしたら、万全のときにお読みください。

 できれば、読み聞かせがおすすめです。
 読後は、あたたかいお茶と、お気に入りのお菓子をお供に話し合ってみてくださいね。

 

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