【魔法の庭ものがたり】寂しさをこえて春を待つ秋のパーティー。ファンタジック・ハーバルストーリー第10巻【わがまま姫と魔法のバラ】【小学校低学年以上】
秋のはじめ、ビーハイブホテルにとてもわがままな女の子がやってきました。彼女のおばさんから「イングリットとお友だちになってほしい」と頼まれたジャレットたちでしたが……
この本のイメージ エディブルフラワー☆☆☆☆☆ 春を待つ想い☆☆☆☆☆ 寂しさをこえて☆☆☆☆☆
わがまま姫と魔法のバラ 魔法の庭ものがたり 10 あんびるやすこ/作 ポプラ社
<あんびるやすこ>
群馬県生まれ。東海大学文学部日本文学科卒業。テレビアニメーションの美術設定を担当。作品に「だっこちゃんどこ?」「まじょのまほうやさん」「こじまのもり」シリーズなど。
あんびるやすこ先生のハーブとアロマのハートフルストーリー「魔法の庭ものがたり」の第10巻です。初版は2011年。
このお話は、魔女トパーズの家を「相続魔法」によって相続した少女ジャレットの成長物語。
一話完結で読みやすいのですが、どうしてそうなったのか、最初の設定をお知りになりたい方は、1巻から順番にお読みになったほうがいいでしょう。
第1巻のレビューはこちら↓
今回のお話は……
スーのビーハイブホテルにとてもわがままな女の子が泊まりにきました。
名前はイングリット。おばさんのエマと一緒に休暇に来ていました。
ある日、エマがジャレットのもとにやってきて「イングリットと友だちになってほしい」と頼まれます。戸惑いながらもイングリットを訪ねたジャレットたちでしたが、あまりのわがままぶりにびっくり。
「わがままを治す薬」をスーに依頼されるジャレットでしたが……
一方、森のお客様からの依頼もありました。
ハイイロリスのアーチーは仲良しの友だちたちがみんな冬眠してしまうのが寂しくて、自分も冬眠したいと言い出します。冬眠できるハーブ薬がほしいアーチー。けれど、そんな難しい薬はジャレットには調合できません。
さて、ジャレットはイングリットのわがままをなおし、アーチーを冬眠させることができるのでしょうか?
……と、いうのがあらすじ。
今回のテーマは「寂しさをこえる心」。
イングリットのわがままも、アーチーの冬眠願望も、原因はさみしさでした。
どんなに我慢していても、大切な人に会えなくなった落胆やさみしさはあふれ出てしまう。無理に我慢しようとするとイライラとなって、他人を傷つけてしまう……それは、楽しみにしていたクリスマスに両親に会うことができなくなった時、ジャレットが気づいたことでした。
ジャレットはイングリットのわがままをなおすことも、アーチーを冬眠させることもできないけれど、大切な人と会えない間を乗り越えるお手伝いができるものを提供します。
イングリットには春の花を封じ込めた氷が入ったサイダー。アーチーには春を思わせるバラの砂糖漬け。どちらも、春を楽しみに待つことができるような素敵なものでした。
イングリットと仲良くなったジャレットたちはエディブルフラワーを使ったお菓子とお茶でお茶会を開催します。華やかでおいしい「食べられるお花」で、春を待つ気持ちを育てたイングリットは元気にビーハイブホテルから旅立ってゆきました。
前半では、オレンジフラワーやローズなどを使った心が落ち着くレシピ、ジャーマンカモミールやリンデンフラワー、ラベンダーをブレンドした安眠ティーのレシピが紹介されています。
後半は食べられる花「エディブルフラワー」の紹介です。お花を食卓に取り入れると、ぐっと華やかになり気分が上がります。
わたしの大のお気に入りはナスタチウム。葉っぱはサンドイッチにするとおいしいし、お花は大きくて華やかなのでサラダに似合います。花の色も赤、黄色、オレンジなど色とりどり。種は大きくて育てやすいのも魅力です。
ナスタチウムは春蒔きの花なのでいまから育てるのには不向きですが、来年の3月あたまくらいに種を蒔いて育てると5月くらいにはサラダを楽しめるようになります。丁寧に育てると大きく育って楽しいお花です。
今からだと、キンセンカがおすすめ。発芽しやすく大きな花が咲きます。
ハーブだと秋蒔きはカモミール。種が細かくて蒔きにくいですが、専用の種まきシートに蒔いて霧吹きで毎日水をかけてあげると発芽します。スミレも食べられる花なのでおすすめです。
夏が終わると短い秋を過ぎてあっという間に冬がやってきます。
日本の冬は、年末進行二月進行と忙しく、しんどいことも多いけれど、クリスマス、お正月、バレンタインと楽しいイベントも待っています。暖かい部屋でココアを飲みながらフィギュアスケートの観戦なども楽しみですね。(冷え性なのとお財布がさみしいので現地にはなかなか……)
でも、春を待ちながら草花を育て、おうちで本を読んだり配信を見たりしてすごすのも楽しいもの。
大切なものに囲まれながらお部屋で冬の時間を楽しみましょう。
「魔法の庭ものがたり」は、魔法は使えない人間の女の子がハーブ魔女のあとを継いでハーブの知識だけでがんばる、成長物語。
文章は平易で読みやすく、漢字は少なめで簡単な漢字以外には振り仮名が振ってありますので、小学校低学年から。絵本を卒業したら挑戦していただきたいシリーズです。
毎回ハーブの知識とレシピが詳しく紹介されていますので、読むと植物を育てたくなるかも。
今はちょうど秋蒔きの季節です。
面白くて、ハーブの知識が得られ、心も成長する━━魅力いっぱいの児童向けファンタジーをぜひどうぞ!
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はまったくありません。テーマはわかりやすく、やさしく、悪者のいない世界での純粋な成長物語です。HSPやHSCにおすすめです。
読後は、バラの花びらが入った紅茶でちょっと気取ったティータイムを。
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