【サーティーナイン・クルーズ】39の手がかりを探すアドベンチャー第2巻。モーツァルトの謎に挑戦【偽りの楽譜】【小学校中学年以上】

2024年2月18日

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サーティーナイン・クルーズ 2 偽りの楽譜  ゴードン・コーマン/著 小浜杳/訳 メディアファクトリー

グレースの遺した謎の遺産を求めてレースを開始したケイヒル一族。第二の手がかりを求めてエイミーとダンは、ウィーンへと向かいます。次なる謎は、モーツァルトなのです……。

サーティーナイン・クルーズ 2 偽りの楽譜  ゴードン・コーマン/著 小浜杳/訳 メディアファクトリー

 サーティーナイン・クルーズは、テレビシリーズの作り方をまねて、全体のストーリー構成と最初の第1巻をリック・リオーダンが手がけ、他の巻は様々な作家が得意分野を駆使して描くつくりになっています。同一キャラクターをチーム体制で書くシリーズは海外ではよくある手法で、アメリカのジュニア向けミステリ「ナンシー・ドルーミステリ」や、ドイツのSF「宇宙英雄ローダン」シリーズなどがこれにあたります。日本では原作者の死後、「グインサーガ」がこの形式を取って継続中です。

 サーティーナイン・クルーズシリーズ第2巻、エイミーとダンは、次の手がかりをもとめてウィーンにやってきました。2つめの謎は、モーツァルトにかかわるもののようです。原題はThe 39Clues: One False Note.初版は2008年。日本語版は2009年です。現在、シリーズが完結しているので、巻によっては入手困難ですが、面白いので中古か図書館でお楽しみください。

 このシリーズはエイミーとダンと言う主人公姉弟と、その一族にかかわる謎の遺産をめぐるアドベンチャーストーリー。歴史ミステリーなどをまじえて話がすすむ、疾走感あふれる物語です。

 歴史上の多くの偉人たちが実は「ケイヒル」という架空の一族として血縁だったという奇想天外な設定で、その一族の秘密の遺産をめぐって、一族同士が戦うレースを繰り広げます。

 子供向けの小説なので、物理的な殺し合いはしませんが、かなり危険を伴う冒険を繰り広げるので、ジャンルとしてはジュニア小説とかヤングアダルトに入るかもしれません。
 文章としては、読みやすく、小学校中学年くらいからはもう読めると思いますので、そのあたりの是非は保護者の方でご判断いただきたいところです。

 ストーリーは、ハリウッド映画のようにスピード感があり、危機に継ぐ危機、困難に継ぐ困難、それを機転や知恵で乗り越えてゆくお話です。
 要所要所に歴史豆知識のような部分があるため、お子様に歴史に興味をもつよう促す効果もあります。

 わたしは、昔の名作児童文学が大好きですが、本を読みなれていないお子さまに読書に興味を持ってもらうなら、この本はおすすめです。少年漫画のような魅力があり、また、毎回必ず1人、歴史上の偉人を取り上げるため、知育的な効果もあります。

 この物語の中で、ケイヒル一族は歴史上の偉人を多数輩出したと言う設定で、第1巻ではベンジャミン・フランクリン、2巻ではアマデウス・モーツァルトが「ケイヒル」だとされています。

 ところが、この一族、まったく仲良くないんですよね。グレース・ケイヒルの死後、レースが開始されてから、彼らはルール無用の熾烈なバトルを繰り広げ、エイミーとダンは何度も生命の危機にさらされます。

 おまけに、一族の他の面々は、それぞれなにかしら天才的な能力があり、なおかつレースのために無尽蔵に資金をつぎ込めるお金持ちばかり。お金もなく、身寄りもなく、レースに参加することしか他に方法がないのは、エイミーとダンだけなのです。

 欲よりも、むしろサバイバルの方法としてレースに参加したふたり。

 そんなふたりですが、彼らのもつ特別な能力で、困難を突破してゆきます。
 ふたりの強い味方は、世話係のネリー・ゴメス。子どもたちだけでは行えない、ホテルの予約や電車の切符の手配などをしてくれるだけでなく、精神的な支えになってもくれる、情の篤い頼りになる姐さんです。

 血でつながったケイヒルたちの殺伐とした関係に比べて、赤の他人のネリーのほうがずっと家族のように親身になってくれるのです。でも、こんな力強い味方を手に入れることができたのも、エイミーとダンの人間的魅力であり、それこそが最大の能力なのかもしれません。軽いお話のように見えますが、ほんとうに大切なもの、ほんものとは何かを、考えさせられます。

 子どものころモーツァルトがマリー・アントワネットにプロポーズしたエピソードは歴史マニアには有名ですが、今回のお話ではマリーとアマデウスはその後も交流があったことになっています(ここらへんは架空)。

 また、モーツァルトには、ナンネルと言う音楽の才能にあふれた姉がいたこと、その姉が女性であるゆえに世に出ることができず才能を封印されたことなど、あまり知られていない歴史豆知識もあり、モーツァルトやその時代のことについて、もっと知りたいと思えてきます。

 読後は、親子でモーツァルトについてもっと調べたり、彼の作曲した曲をダウンロードして聴いてみたりと、歴史や音楽について、興味をもつきっかけにすると楽しそうです。

 従来型の小説というよりも、どちらかというと映像的で、映画のような物語なので、本を読みつけていないお子様にはむしろ読みやすいかも知れません。
 そして、読書の楽しさを知ってもらえたら、その後はぜひ、名作と呼ばれている古典に挑戦してみていただきたいです。

 読書の世界は、ある意味、冒険の世界です。
 短い時間で多くの時代、様々な場所、千差万別の人々の人生を追体験し、数限りない冒険を疑似体験できるのは読書だけです。

 この姉弟の大冒険を通じて、どうぞ読書の楽しさに出会ってみてくださいね。

 第3巻では、ついにふたりは日本へやってきます。いったいどんな冒険になるのでしょうか。楽しみです。

※この本は現在、Amazonでは新品は入手困難です。中古(古書)でお求めになるか、図書館、または書店に置いてある場合があるので、お近くの書店の書店員さんにお尋ねください。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 暴力シーンや危険なシーンがたくさんありますので、そのようなお話が苦手な方にはあまりおすすめしません。シンプルな、ハリウッド映画のような物語です。むしろ非HSPで、ふだん読書になじみのない男の子などに向いている物語です。「少年ジャンプ」を愛読するような女の子にも喜ばれると思います。挿絵は今風のイラストでかわいらしく、受け入れられやすいでしょう。

 「そういう系統のお話なのだな」と最初に身構えていれば楽しく読めるという方にならおすすめです。哲学的要素や、感受性を必要とする要素はほとんどありませんが、パズル的謎解きで頭を使うシーンはふんだんに登場します。論理や知識への興味をかきたてる意味では、知育効果は期待できます。

 読後はウィンナーコーヒーとザッハトルテはいかがでしょう。モーツァルトを聞きながらコーヒータイムをどうぞ。

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