【ランサム・サーガ】イギリス児童文学の名作シリーズ。ノーフォーク湖沼地方でセーリング。ドロシアとディックの大冒険【オオバンクラブ物語】【小学校高学年以上】

2024年3月17日

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オオバンクラブ物語 上下  ランサム・サーガ5 アーサー・ランサム/作 神宮輝夫/訳 岩波少年文庫

ドロシアとディックは、ノーフォーク湖沼地方のミセス・バラブルのもとでイースター休みをすごすことになりました。ノーフォークは、住人たちがみな船をあやつれると言ってもいいくらいの土地。ここでセーリングを学べると心躍らせる二人ですが……

この本のイメージ 逃亡☆☆☆☆☆ 追跡☆☆☆☆☆ セーリング☆☆☆☆☆

オオバンクラブ物語 上下  ランサム・サーガ5 アーサー・ランサム/作 神宮輝夫/訳 岩波少年文庫

 イギリスの名作児童文学シリーズ、ランサムサーガの第5作目。
 ドロシア・カラムとディック・カラムのDきょうだいのイースター休暇の物語です。

 昔、岩波書店から「アーサー・ランサム全集」が刊行されていた当時は、「オオバンクラブの無法者」と言うタイトルでしたが、当時から、「オオバンクラブのメンバーはいい子たちだよね?」「正確には『オオバンクラブ無法者』なのでは?」など、物議をかもしていたタイトルでした。改題されたようです。

 原題はCOOT CLUB.初版は1934年です。

 当時は電話はまだ交換手がいて三分ごとに料金が加算されるシステム。最もポピュラーな伝達手段は、電報と手紙です。船はボートとヨットが主流で、救助用と、お金持ちのためにモーターボートが使われるような時代でした。

 そんな時代の、追いつ追われつの追跡&逃亡戦。「ツバメ号とアマゾン号」のような、さわやかな休暇物語とは違いますが、サスペンス調で盛り上がります。

 お話は……
 姉ドロシアと弟ディックのカラムきょうだいは、イースター休みを、母の恩師ミセス・バラブルの所有する船の上ですごすことになりました。ミセス・バラブルはノーフォーク湖沼地方に住む、川辺育ちのもと教師。弟は海軍で、自身も船上生活に慣れています。
 ここで、ドロシアたちは、セーリングを習うつもりで心躍らせていました。

 ところが、弟が留守なので、勝手に船を動かせないと知らされ、がっかりするふたり。

 そんなとき、同じ電車で知り合った、トム・ダッジョン、その友達のふたごの姉妹ポート(ベス)とスターボード(ネル)たちがセーリング上級者と知ります。ところが、トムはあるトラブルに巻き込まれていました。

 トムたちが活動している、オオバンクラブ━野鳥保護活動━は、周囲の野鳥の巣を保護し観察する会でした。ある日、白い羽のある貴重なオオバンがつくった巣のすぐ傍に、無作法な観光客が大音響で音楽を流すクルーザーが停泊してしまい、小鳥たちが巣に戻れなくなってしまったのです。

 何度頼みに行ってもどんなに丁寧に事情を話しても、聞き入れてもらえなかったトムは、やむを得ず、こっそりクルーザーの碇を外してしまいます。

 船が流されたことに気づき、怒り狂う観光客たち。その時から、トムは、船上暴走族たちに追われる身となったのです。トムの行方を聞いても口を割らないノーフォークっ子に業を煮やし、無法者たちはトムに賞金をかけます。

 トムの事情を知り、彼を保護することにきめたミセス・バラベル。Dきょうだいは、彼にセーリングを教えてもらうかわりに逃避行を手伝います。

 そして、別行動のはずだったポートとスターボードは、お父さんの予定が急遽なくなったことで、船上ヒッチハイクでミセス・バラベルの船を追いますが…… トムたち、ふたご、無法者たちの水上追いかけっこがはじまります。

 と、いうのがあらすじ。

 大音響のラジオで、音楽を鳴り響かせながら、クルーザーを動かす観光客グループは、どこからどう見ても悪者です。野鳥の巣を守ろうとして実力行使に出てしまったのは、いけないことですが、この観光客たちもたいがいおかしい。

 トムは、彼らのバカンス期間が終わるまで、オオバンクラブの情報網に助けられながら、なんとか逃げ切ろうとしますが、敵もさるもの、子どもたちを賞金で買収しようとします。

 ミセス・バラブルはDきょうだいのセーリング修行のためにトムに手伝ってもらいながら、セーリングに出ることを決意します。

 この船から途中で離脱したポートとスターボードが、再び合流を目指して、船から船を乗り継ぐ水上ヒッチハイクが面白い。
 携帯電話どころか、固定電話も珍しい時代ですから、互いの位置関係を知ることが出来ず、天候を見ながら風を予測して、推測だけで合流を目指すところが、最大の見所です。昔の人は優秀だ…… インターネットもスマホもないのに、この洞察力と行動力。

 物語のラストでは、Dきょうだいはちゃんとセーリングが上手くなっていますし、トムと無法者たちの問題も綺麗にかたがつきました。さわやかなハッピーエンドです。  

 船の構造や動かし方などが詳細に書かれていますが、わからないところは雰囲気で読んでしまっていいと思います(わたしはそうです)。けれども、それ以外の描写力もすばらしい。 ノーフォークの自然や食べ物なども、生き生きと描かれており、子どもたちの逃走劇を彩っています。

 難しい漢字にはふりがながふってあるので、小学校高学年から。大人も、子供心にもどって、わくわくしながら読めます。オオバンクラブのネットワークが「エーミールと探偵たち」みたい。

 登場する子どもたちは、全員、自立心と責任感にすぐれ、自分の意思で行動しています。内気なDきょうだいですら、意思は強固。これがランサム・サーガの魅力でもあります。

 イースターの季節はすぎましたが、夏が訪れる前の季節の冒険物語を楽しんでみてください。ピンチのたびに、知恵を絞って乗り越える少年たちに、元気をもらえます。

※今、調べたら、紙の本ではプレミアがついて入手困難になっていますね。電子書籍では手軽に買うことができます。ランサム・サーガが入手困難だなんて……。本当に名作なんですよ。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。無法者たちに追われて絶体絶命のトムが、友達たちに支えられて、数々のピンチを切り抜けます。何があってもあきらめない、そして、何があっても面白がる子どもたちに元気をもらえます。

 読後は、濃く入れた紅茶とミルク、そしてバターたっぷりのパウンドケーキでティータイムを。

 

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