【都会のトム&ソーヤ】「究極のゲーム」を目指すふたりが創る自信作?シリーズ14作目【夢幻】【小学校高学年以上】
俺、内藤内人。(たぶん)ごくふつうの中学生。親友の創也と「究極のゲーム」創りにいそしんでいる。ようやく出来た新作「夢幻」。はたして、名作になったのか?(都会のトム&ソーヤ 14 夢幻 上下 はやみねかおる/作 にしけいこ/絵 講談社)
この本のイメージ リアルロールプレイングゲーム☆☆☆☆☆ 夜の学校☆☆☆☆☆ 謎解き☆☆☆☆☆
都会のトム&ソーヤ 14 夢幻 上下 はやみねかおる/作 にしけいこ/絵 講談社
<はやみね かおる>
日本の男性小説家(1964年4月16日~ )。三重県伊勢市出身。代表作は「都会のトム&ソーヤ」「怪盗クイーンシリーズ」「名探偵夢水清志朗シリーズ」など。
本日ご紹介するのは、はやみねかおる先生のヤングアダルト(ライトノベル)小説、「都会(まち)のトム&ソーヤ14 夢幻」です。上巻初版は2016年、11月。下巻初版は2017年2月です。
お話は、一応、どこから読んでも面白く読めるようには書かれているのですが、創也と内人の出会いや、栗井英太チームなどの詳しい設定を知ったほうが読みやすいので、第1巻から順番にお読みになったほうがわかりやすいでしょう。
第1巻のレビューはこちら↓
今回のストーリーは……
内人と創也のユニット「南北磁石」の新作、「夢幻」が完成した。
竜王グループの助けも借りて、竜王グループの都市レーヴィルの夜の学校で行われるリアルロールプレイングゲーム。
参加者は栗井栄太御一行様、真田女史と西本健一くん、堀越ディレクターと愉快な仲間たち、謎の美少女浦沢ユラさん、竜王グループの三津木さんと遠藤さん、そして、謎の「家出人オレ」。
ところがこのゲームに「産業スパイ」が入り込んでいるらしい。
欲しいのは、ゲームをサポートする竜王グループ倉木研究所の技術?それとも?
はたして、ふたりの創ったゲームは名作になるのか?
……と、いうのがあらすじ。
このシリーズのなかでRRPG(リアル・ロールプレイングゲーム)と呼ばれているものは、昔からLRPG(ライブロールプレイングゲーム)と呼ばれてきた伝統あるゲームです。
複数の人間が対面で遊ぶTRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)の規模を大きくした感じで、旅館やホテルなど閉鎖空間を借り切って一日とか二日とかをかけて遊ぶもので、昔からファンタジーやSFのファンの集いやコンベンションで遊ばれ愛されてきたゲームでした。
NPCキャラクターにはスタッフが仮装して演じ、リアルに身体を使うゲームや宝探しなどの要素が入ります。
この、いにしえのファンコンベンションの様子をお知りになりたい方は、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの「バビロンまでは何マイル」をお読みになると雰囲気がつかめますよ。
参加したことがある方はこのリアルさに「うわあ」と感じる名作です。
昔は、ゲーム内で出された課題も仮装したスタッフとじゃんけんしたり腕相撲したりだとか単純なものだったと思いますが、現代のプロジェクションマッピングやVRの技術を使えばどんどん進化してゆきそうなジャンルです。
今は大手企業が「脱出ゲーム」などを企画して、大掛かりにやっていますね。わたしはもう歳なので参加したことはありませんが、夢がありますよねえ。
さて、ついに完成した内人と創也のコンビ「南北磁石」の新作「夢幻」。
竜王グループ倉木研究所の技術を駆使して、夢と現実の境目がわからなくなるような不思議なゲームになりました。
ところが、そこに「ネズミ」が1匹入り込みます。
ゲームの進行と、このネズミ退治が平行して進むというのが今回の仕掛け。他にも謎解きがひとつ潜んでいます。
何かに没入することは楽しさとともに危険があります。
それは、どんなことでも同じ。
昔々は「漫画なんか読んでいたらばかになる」といわれ、「テレビなんか見ていたら知能が落ちる」と言われ、「アニメーションなんて幼稚なもの」と言われ、「ゲームなんてしていたらまともな大人になれない」と言われ……今は「インターネットにはまりすぎると社会不適合者」といわれる時代。
でもね、お酒だって競馬だってマージャンだってなんだってやり過ぎてはいけないんです。
なんだってやり過ぎたら身体を壊すし人間関係だって壊れるのです。漫画を焼却炉で燃やしたって、テレビを金槌で叩き壊したって、ゲーム端末やスマホをへし折ったってどうにかなる問題ではなく。
常々、何かを「悪者」にして解決する発想には疑問があったわたしにとって、「究極のゲームを作ろう!」と目標を掲げ冒険を続ける少年たちのさわやかなストーリーには惹かれるものがありました。
ゲームに対してここまでポジティブに描いてくれると本当にうれしいですね。
最近はめっきりゲームもしなくなったわたしですが別に飽きたとか嫌いになったとかそういうわけではなく、体力がなくなったからなんです。もともと、反射神経が必要なゲームは不得意で「見る専」だったこともあるのですが、もう目が追いつかない。でもそれだけなんです。
だから「卒業」と言う言葉もあんまりぴんときません。
おそらくオタクと言うのは卒業しない人種だからでしょう。
文章は内人の一人称で書いてあるので親しみやすく読みやすく、難しい漢字には振り仮名がふってあります。
テンポいい文章だからかボリュームの割には驚くほど読みやすいので、小学校高学年からおすすめです。何かを創る楽しみ、遊ぶ楽しみ、チャレンジするわくわく感など、冒険心を刺激する要素がたっぷり。
ゲームを遊ぶだけでなく創ってみたいなと思ったことがある子は、ぜひ「都会のトム&ソーヤ」を。
不思議と謎がいっぱいの冒険小説です。
繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)
ネガティブな要素はまったくありません。さわやかで楽しい、都会の冒険小説です。魅力的なキャラクターが続々登場するので、きっとあなたの推しが見つかるはず。
読後はダージリンティーとお気に入りのクッキーでティータイムを。
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