【ミュージカルスパイス】日本のムーミン谷。思わず歌って踊っちゃう、ゆかいなファンタジー。こそあどの森の物語第5巻【こそあどの森の物語】【小学校中学年以上】

2024年3月27日

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ミュージカルスパイス  こそあどの森の物語 岡田淳/作 理論社

バーバさんがスキッパーに手紙で教えてくれた、ふしぎな草、カタカズラ。コーヒーのような実が生るけれど、その実には不思議な力があるようです。いつもは無口なギーコさんと辛口のスミレさんが、突然、歌って踊りはじめて……

この本のイメージ ファンタジー☆☆☆☆☆ 楽しい☆☆☆☆☆ ほのぼの☆☆☆☆☆

ミュージカルスパイス  こそあどの森の物語 岡田淳/作 理論社

<岡田淳>
日本の児童文学作家。著書『雨やどりはすべり台の下で』で産経児童出版文化賞を、『こそあどの森の物語』で野間児童文芸賞を受賞し国際アンデルセン賞の国際児童図書評議会(IBBY) オナーリストに選ばれた。翻訳家、挿絵・イラスト作家、エッセイストでもある。

 「日本のムーミン谷」とも呼ばれる、「こそあどの森」シリーズ、5巻目は「ミュージカルスパイス」。初版は1999年です。

 「こそあどの森」シリーズは一話完結形式で、どの巻から読んでもわかるように書いてありますが、この世界観を理解するためには、まずは世界設定や住人たちを詳しく描いている第1巻を読んだほうがわかりやすいと思います。 

 第1巻のレビューはこちら。

 さて、今回のお話は……

 スキッパーのもとにバーバさんから手紙が届きます。
 そこには、今滞在している島で、伝説の植物カタカズラが見つかったと書かれていました。

 カタカズラは、雪の結晶の形の花で、葉は三日月形、蔓はとても固いのでカタカズラと言われていますが、実を粉にすると、おいくて健康にいいスパイスになるというのです。
 しかも、そのスパイスには、不思議な効果があって……

 ……と、いうのがあらすじ。

 こそあどの森の住人たちが今回も全員登場。毎回気分しだいで名乗る名前の違うふたごは、第1巻はアップルとレモン。第2巻はシナモンとミルク。3巻ではジンジャーとミント、4巻ではミンクとビーバー、この巻ではシュガーとハニーと名乗っています。

 今回のお話は、ミュージカル。
 飲むと歌って踊っちゃう幸せなスパイスの力で、こそあどの森の住人たちが踊り始めます。

 最初に歌い始めるのがいちばん無口なギーコさんと、辛口のスミレさんというのが楽しい。ふたごなんて、普段からミュージカルしてるようなものですからね。

 こそあどの森の住人たちが「ミュージカル空間」に入ると、すべての言葉が歌になってしまうという楽しさ。でも、呪いの草とかではないので、ただただ楽しいだけです。

 このお話は二部構成になっていて、最初の八割が「すてきなミュージカルスパイス」、巻末に、「すてきなミュージカルスパイス」に登場しないトワイエさんと、ホタルギツネと言う謎のきつねのお話「鳥男とホタルギツネ」が収録されています。

 しかし、この二つのお話がうまい具合に融合していて、なんとも言えない、しみじみと幸せなラストになっているのです。

 わたしは、この「鳥男とホタルギツネ」と言う話が好きです。
 これは、偶然普通の人とちがう能力や特徴を持ってしまった人が、どう生きてゆくか、と言う話です。

 ありきたりな「勇気を持って一歩踏み出せばいいんだよ」というような、安易な話ではなく、けれどもそういった人に寄り添う、力強いメッセージが感じられます。

 呼びかける声が 森をぬけていく
 きっとどこかに ききつけるだれかが
 呼びかける声が 時を超えていく
 きっといつの日か ききつけるだれかが
 たとえ闇のなかに 呼び声が
 ふっと消えても おそれずに (引用 p196)

 今、あなたを理解してくれる人がいなくてもいい、今はなんのために誰のために生きているのかわからなくてもいい、未来に出会う理解者のために、未来に出会う仲間たちのために生きていこうよ。

 そんなメッセージなのです。
 そして、わたし自身も若い頃そんなふうに思って生きていた時期もあります。

 今は、ずっとずっと夜の海を泳いでいるような気持ちでも、いつか必ず岸にたどりつくし、そこにはきっと誰かがいるはず。

 字は程よく大きく文章はわかりやすくて読みやすく、簡単な漢字以外にはすべて振り仮名が振ってありますので小学校中学年から読むことができます。賢い子なら低学年からでもチャレンジできるでしょう。

「こそあどの森」は、内向的で内省的なお子さまの心にそっと寄り添ってくれるファンタジーです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。
 今、学校などで息苦しい立場にいたり、普通の子どもたちの人間関係になじめずに悩んでいるお子さまにおすすめです。明るく、楽しく、けれども、気持ちに寄り添ってくれるところもあって、優しい物語です。

 大人が読んでも癒されるので、大人の和み本としてもおすすめ。

 読後は、おいしいコーヒーとスパイスたっぷりのクッキーで一休みしてみましょう。おもわず歌いたくなっちゃうかも。

 

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