【水の森の秘密】きっとあなたの心にもある、こそあどの森のファンタジック・ストーリー最終巻【こそあどの森の物語】【小学校中学年以上】

2024年4月10日

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水の森の秘密 こそあどの森の物語 12  岡田淳/作 理論社

いままで食べられないと思っていたのにスミレさんが食べ方をみつけたプニョプニョタケ。トマトさんがおいしい食べ方をみつけ、こそあどの森の住人たちは夢中になってきのこ狩りをしました。けれど、ひとつの生き物の採りすぎは森の生き物のバランスを大きく崩して……

この本のイメージ 水の精たち☆☆☆☆☆ 大自然のバランス☆☆☆☆☆ 新しいことと古いこと☆☆☆☆☆

水の森の秘密 こそあどの森の物語 12  岡田淳/作 理論社

<岡田淳>
日本の児童文学作家。著書『雨やどりはすべり台の下で』で産経児童出版文化賞を、『こそあどの森の物語』で野間児童文芸賞を受賞し国際アンデルセン賞の国際児童図書評議会(IBBY) オナーリストに選ばれた。翻訳家、挿絵・イラスト作家、エッセイストでもある。

 「日本のムーミン谷」とも呼ばれる、「こそあどの森」シリーズ、12巻目は「水の森の秘密」。初版は2017年です。

 「こそあどの森」シリーズは一話完結形式で、どの巻から読んでもわかるように書いてありますが、この世界観を理解するためには、まずは世界設定や住人たちを詳しく描いている第1巻を読んだほうがわかりやすいと思います。 

 第1巻のレビューはこちら。↓

 また、今回の巻は現状最終巻となっており、いままでのお話が伏線のようになって完結しているので、最初から順番にお読みになって最後にこの巻をお読みになったほうがわかりやすいでしょう。

 今回のお話は……

 スミレさんが偶然、火を通せばおいしく食べられることを発見した「プニョプニョタケ」。
 トマトさんが次々といろんなレシピを考案し、こそあどの森ではちょっとしたプニョプニョタケブームに。

 森のみんながこぞってきのこ狩りにでかける毎日でしたが、そんなある日、湖の水があふれて、こそあどの森が水没してしまいます。

 いったい何がおきているのでしょうか。

 ふたごたちとスキッパーは、湖の出口が何かでふさがっているのかもとヨットで調査に向かいますが……

 ……と、いうのがあらすじ。

 毎回違うふたごの名前は、今回はプルンとキラリです。

 こそあどの森シリーズの第一巻「不思議な木の実の料理法」が未知の実の食べ方を探るお話で、今回の「水の森の秘密」も食べられないと思っていたきのこが食べられるとわかったお話であることから、ちょうど対になっているエピソードです。

 この「水の森の秘密」でも、プニョプニョタケの食べ方を発見するということそのものはすばらしいことだとトワイエさんも語っており、それそのものは否定していません。

 しかし、森のみんなが興奮してたくさん採りすぎてしまった結果、とても困ったことが起きてしまったのでした。

 それは、現実世界の大自然の法則とも同じで、科学の発展や技術の開発はすばらしいけれど、それだけが暴走してしまうと困ったことになる、かといって科学技術そのものを否定することはおかしい、と言うことと通じています。何事もバランスなのだと思います。

 最終的には、いままでのお話でスキッパーたちが出会い、交流してきた人たちが彼らを助けてくれます。そこには新しい出会いもありました。

 第一巻では、こそあどの森のみんなともあまりあうことも話すこともなく、育ててくれたバーバさんとだけしか打ち解けて会話ができなかった一人暮らしのスキッパー。

 十二の物語を経て、彼は森のみんなと仲良くなり、交流し、冒険し、様々な困難を乗り越え、自分の世界を広げることができました。

 森のみんなはスキッパーに何も強要もしなかったし無理やりに外に連れ出すこともしなかったけれど、ただあたたかく見守ってくれ、危険のさいは大人たちが飛び込んでくれました。

 かつてはあり、そして今は失われつつある共同体の理想の形がそこにあります。

 スキッパーとふたごたちは、等身大の子どもらしい子どもです。
 大人が理想とする「子どもらしさ」ではなく、スキッパーの現代っ子の内気で考え深くひきこもりがちなところ、ふたごの遊ぶことが大好きで元気で明るいけれどちょっと自分勝手で小ずるいところなどが生き生きと描かれています。

 正義の心を燃やして悪を成敗したりはしないけれど、あふれる好奇心と優しさでたくさんの困難を乗り越え問題を解決してきました。子どもたち自身の力で。

 文章は平易で読みやすく、字はやや大きめで漢字まじりではありますがひらがな多め。ごく簡単な漢字以外には振り仮名がふってあります。読みやすいので、だいたい小学校中学年くらいから。もちろん、大人が読んでも楽しめます。

 岡田先生がもともと小学校の美術の先生でご自身でも挿絵を描かれていることから、文章も非常に映像的。
読んでいると、こそあどの森のメルヘンで美しい風景が目に浮かんできます。

 子どもが読めばスキッパーたちの冒険にわくわくと心躍らせると思いますし、大人が読むと杓子定規に固まった心がじんわりとほぐれてゆくでしょう。もっと心は自由でいいのです。

 読む人の心をどこまでも自由にしてくれるファンタジー「こそあどの森」シリーズ。
 この夏、一気読みはいかがでしょう。

 一家でまわし読みをしても楽しい、正統派のファンタジーです。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はありません。

 新しいことを発見し、新しい方法を取り入れるすばらしさと、いままでしていなかったことをはじめたときに何かのバランスが崩れてしまうかもしれない危険などがテーマです。

 しかし、最終的に新しい出会いや交流が問題を解決することから、人間が挑戦することや冒険することは否定していません。新しいことと古いことのバランスをとり、前進してゆくことを描いており、子どもだけでなく大人も学ぶことが多い名作児童文学です。

 

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