【ドリトル先生】ドリトル先生100周年!ドクター・ドリトルのゆかいなキャラバン【ドリトル先生のキャラバン】【小学校中学年以上】

2024年2月13日

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ドリトル先生のキャラバン

これは「ドリトル先生のサーカス」のすぐあとのお話。サーカスの団長になって旅を続けるドリトル先生は、ある日、カナリアのピピネラと出会います。そして、世界ではじめてのカナリア・オペラを開催するのです。

この本のイメージ 鳥のオペラ☆☆☆☆☆ お金の使いみち☆☆☆☆ 先生やりすぎ☆☆☆☆☆

ドリトル先生のキャラバン  【ドリトル先生シリーズ 6 】  ヒュー・ロフティング/作 井伏鱒二/訳 岩波少年文庫

<ヒュー・ロフティング> 1886〜1947年。イギリス生まれ。土木技師を経て、1912年アメリカで結婚し、文筆活動に入る。著書にドリトル先生シリーズ。 

 ドリトル先生シリーズの六巻目です。現在、映画「ドクター・ドリトル」が公開中です。原作では中年太りのドリトル先生は意外とかっこよくなっており、テナガザルのチーチーがゴリラになっています。トミーと一緒に航海に出るのは原作通り。リスを助けてくれてるのは原作ファンへのサービスでしょう。

 さて、今回のあらすじは…

 ドリトル先生は、宿屋の店先のテーブルでビールを飲んで一休みしているとき、ペットショップから美しい鳥の歌声が聞こえてくるのに気づきます。これが、小鳥の大歌手、ピピネラとの出会いでした。

 ピピネラは、カワラヒワとカナリアの混血のメスのカナリアでした。ピピネラは、ドリトルサーカスのキャラバンに合流し、新しい出し物「カナリア・オペラ」の主役になります。

 前半は、「カナリア・オペラ」の大成功のおはなし。後半は、動物銀行のおはなしです。

 だんだん、ドリトル先生のやることがやばい領域に入ろうとしてきています。今回は、山野から野鳥を捕獲して劣悪な状態で販売しているペットショップに深夜忍び込んで、鳥たちを逃がすのです。

 いや、ドリトル先生、それ、犯罪だから

 小さな子どもの頃、「大金持ちになったらペットショップの鳥を全部買って、逃がしてやりたいなあ」と思ったりもしましたが、今なら、それすらしてはいけないことだとわかります。生態系を壊してしまいますからね。

 でも、よくよく読むと、これはやっぱり比喩なんです。
 ペットショップに乗り込んで、動物たちを解放することが正しいことだと言ってるわけではありません。

 ピピネラは、カワラヒワとカナリアの混血です。そして、メスです。
 作中で、カナリアが歌えるのはオスだけだと思っていたとドリトル先生が言うと、ピピネラは「それはつくり話です」とすまして答えるのです。「メスだって歌っていいはずだ」と、ピピネラは言います。

 つまり、ピピネラは移民や混血、そして、才能のある女性の象徴なのです。

 そうすると、「ペットショップへ押し込み強盗」はどういう意味なのかがなんとなく、わかってきます。乱暴な手段で野鳥をとらえ、劣悪な檻に閉じ込め、店で販売して暴利をむさぼる店や、そこから鳥たちを助け出そうとするドリトル先生のお話は、おそらくは著者が生きていた時代、鳥ではなくじっさいに「そういう出来事」があり、なんとかしてあげたいと考えていた著者がせめても書いた物語だったのでしょう。

 小説を読まない人の中には、まれに、「物語は作者が経験したことを書いている」と思い込んでいる人がいます。もしそうなら、著者のロフティング氏は前科何犯なのかわかりません。
 そうではなく、小説とは、理不尽な現実に出会ったときに、「こうだったらいいな」と言う別の選択肢の提示であり、想像の世界からの問いかけです。

 後半は動物銀行のお話。
 おそらく、これも、動物の話ではなく、著者が「自分自身の銀行口座を持たせてあげたい」と考えていた人々のことなんじゃないかと思えてきました。これは、結局はうまくいかなくて閉鎖してしまいますが、それでも「それをしたことだけでも意味がある」と言う描き方をしています。おそらく、問題提起なのです。

 こんな潔癖で頑固なドリトル先生ですが、今回、そんなドリトル先生に、ろくでなしのマシュー・マグがちょっとだけいいことを言います。大成功した「カナリア・オペラ」に様々な企業が広告出稿を申し出て来るのですが、「くだらない」と一蹴するドリトル先生にマシューが言います。

 「ほんとうにいい商品なら、宣伝してやったらいいじゃないですか」。

 金儲けに振り回されるのではなく、ほんとうに良い物を応援するために、広告してやればよい。企業の作る鳥かごが、ほんとうによいもので、ピピネラの意見が採用され、本当の意味で鳥のためになる鳥かごなら、ピピネラの力で宣伝するのは問題がないはずだ。それは、よい商品が世の中に広まるということなんだから、と説得するわけです。正しい意味でマーケティングの力を使いましょうよと言うのです。

 そんなわけで、今回、ドリトル先生は、無事にお金持ちになれました。(ダブダブはその豊かな経済状態がいつまで続くことやら、まったく当てにならないと言っていますが、まあその通りなんですけどね)

 めずらしくお金持ちになったドリトル先生は、そのお金で、サーカスのゾウやライオンたちを、生まれ故郷に帰してあげることにします。これにも、ずいぶんとページをとって丁寧に描いています。「異国の動物たちを貨物扱いで船で運ぶのはしのびない、彼らを彼らの望むように快適に運んであげたい」と言うドリトル先生の言葉の意味も、「実は動物の話ではない」と仮定するとわかってきます。

 100年前のお話なので、今読むとぴんと来ない描写もありますが、現代に通じる部分もあります。
著者がほんとうに伝えたかったことを想像しながら、親子で休日の午後に古風なファンタジーを読んでみてください。読みやすく、テンポがいい文章なので、小学校中学年くらいから。読み聞かせにもおすすめです。

 ドリトル先生シリーズはこれで折り返し地点。後半は、月に行ったり天地創造の秘密に迫ったりと、さらにダイナミックに展開します。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ペットショップを襲うのは比喩です。お子様にはそれをよく説明してあげてください。100年前の動物ファンタジーですので、当時の時代背景などを知ると、理解が深まります。
表現や描写にネガティブなものはなく、語彙力を高めたいならおすすめの本です。
薫り高い英国紅茶をお供にぜひどうぞ。 電子書籍もあります!

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