【不思議な木の実の料理法】不思議な木の実が届いたら?こそあどの森のほのぼのストーリー【こそあどの森の物語】【小学校中学年以上】

2024年2月27日

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不思議な木の実の料理法 こそあどの森の物語  岡田淳/作 理論社

スキッパー少年のところに、出張中のバーバさんから小包が届きました。いつもはこそあどの森の「ウニマル」と呼ばれている家でスキッパーと暮らしているバーバさんは博物学者。いまは南の島で研究しているのです。小包の中には不思議な木の実がどっさり。さて、これはどうやって食べるのでしょう?

この本のイメージ 扉をあける☆☆☆☆☆ 創意工夫☆☆☆☆☆ 成長☆☆☆☆☆

不思議な木の実の料理法 こそあどの森の物語 岡田淳/作 理論社

<岡田淳>
日本の児童文学作家。著書『雨やどりはすべり台の下で』で産経児童出版文化賞を、『こそあどの森の物語』で野間児童文芸賞を受賞し国際アンデルセン賞の国際児童図書評議会(IBBY) オナーリストに選ばれた。翻訳家、挿絵・イラスト作家、エッセイストでもある。

 岡田先生は美術科卒なので、挿絵や表紙もご自身で手がけるのですが、この本ではその、絵のほうの魅力も爆発しています。

 ストーリーは…

 不思議な森、こそあどの森の「ウニマル」と呼ばれるウニのような形のお屋敷でたったひとりで暮らすスキッパー少年のところに、南の島に出張中のバーバさんから小包が届きます。小包のなかには見たこともない不思議な木の実「ポアポア」がどっさり入っていました。

 バーバさんは博物学者。出張先で鳥や動物、植物の研究をしているのです。それまでずっと「ウニマル」でバーバさんと二人で暮らしていたスキッパーは、バーバさんが出かけてからは1人でお留守番をしていました。無口で無表情なスキッパーは、他人からはあまり感情を推し量れませんが、1人で家事をして読書をしてと、それなりに快適に暮らしています。

 そんなところに届いた小包でしたが、あいにく同封されていた手紙が折からの雪でにじんでしまい、肝心の「木の実の料理法」のところが読み取れなくなっていました。

 つくりかたは  さんにたずねるとわかるでしょう

 と、なんとか読み取れるため、森の誰かが料理法を知っているかもしれない、とスキッパーは思いました。

 重い腰を上げて、スキッパーは「ウニマル」を出て、森のひとりひとりに、木の実をわたし、料理法をたずねて歩きます。

 ……というのがあらすじ。

 スキッパーは無口で、大人しい子どもです。博物学者のバーバさんと一緒に暮らしていましたが、バーバさんが南の島「ナンデモ島」に行ってから、三ヶ月、ずっと1人で生活していたのでした。

 トマトさんが「あの子は10年前にバーバーさんがだいて連れて帰ってきた」と言っているので、もしかしたらバーバさんの実の子供ではないのかもしれません。このあたりはこの時点では謎に包まれています。

 スキッパーはとても声が小さく大人しい子供で、目の前でドーモさんとポットさんがああでもない、こうでもないと話し合っているのを聞いているだけで、頭ががんがんしてしまうような敏感なところもあります。

 しかし、バーバさんが送ってくれたポアポアの実の料理法を知ろうと、スキッパーは森の人々をひとりひとり、根気強くたずねて歩きます。そんなふうにしているうちに、だんだんスキッパーは森の人たちと打ち解けてゆくのです。

 たぶん、バーバさんは深い考えも無く小包を送ってくれたのだろうと思います。
 森の人たちの話を聞くと、そんな人の気がするのです。「森の人と仲良くしないといけませんよ」とか、「みなさんによろしくね」とか、手紙にあえて書かないところが、すごく自然でさわやかなんです。

 手紙の「いつも、あなたのことを 思っています」の「いつも」をわざわざ消して「ときどき」に書き換えているところなんか、率直で正直だけどあたたかい人柄を思わせます。

 そして、森の人たちも、スキッパーのことを「あの子は大人しくて無口だね」と言いながらも、無理に人前に引っ張り出そうともせず、けれども木の実のことを相談されたら、わからなくても試してみたりと、ちょうどいい距離感が素敵です。

 せっかく訪ねてきてくれたんだから、とおもてなししてくれ、よくわからない木の実を自分なりに料理してみてくれる、みんないい人たちばかり。
 結局、料理方法は意外なきっかけでわかるのですが、そのあいだにスキッパーがどんどん成長してゆくのを見るのは、幸せな気持ちになりました。

 硬いポアポアの実は、スキッパーの心とリンクしていたのですね。

 このお話は、「こそあどの森」シリーズの1冊目なので、森の人たちの紹介も兼ねています。それぞれのゆかいな家も、岡田先生自身の細密な挿絵で描かれていて、実際にこんな場所があったら行ってみたいなと思う家ばかり。とくに、「ウニマル」は、本好きの人の夢みたいな家なんじゃないでしょうか。あ、トワイエさんの家も素敵です。

 「さあ、心を開いて」とか「一歩踏み出そう」とか、押し付けがましい言葉はなくて、ただスキッパーがゆっくりと成長してゆく様子を淡々と描いている物語が好きです。

 しっかりとしたお話なので、かしこい子なら小学校低学年から。わくわくする挿絵を一緒に眺めながら、読み聞かせするのもおすすめの本です。

繊細な方へ(HSPのためのブックガイド)

 ネガティブな要素はいっさいありません。ほのぼのとした、なつかしい気持ちにもなる、やさしいファンタジーです。夢あふれる詳細な挿絵も楽しく、読み聞かせにもぴったり。
大人もなごめる本です。

 週末やお風呂上りに、ジャムをいれたあたたかい紅茶をお供にぜひどうぞ。

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